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専属侍女ルルとの出会い 05




 続いてベルスレイアが案内したのは、執務室。日頃、王家直属の特務騎士団の団長としての仕事をこなす時に使う部屋である。


 特務騎士団はベルスレイアにより正式に『黒薔薇』と名付けられ、騎士団として活動している。主な任務は要人警護。また、外に明かすことの難しい秘密性の高い仕事も多く舞い込む。

 ベルスレイア自身が働いたことは、今の所一度も無い。全て、ベルスレイアが自ら手塩にかけて育てた武装メイド、黒薔薇だけで処理している。

 ベルスレイアが団長として行っているのは、書類仕事ぐらいなものであった。


 そうした理由もあり、黒薔薇は騎士団としての詰め所を持たない。ベルスレイアは自宅の執務室があれば十分。黒薔薇もまた、元は白薔薇から戦闘の才を見出され抜擢された者達。フラウローゼス家の屋敷を詰め所代わりに利用している。

 結果、ベルスレイアの仕事の全ては執務室で完結しているのである。


「仕事のある時は、主にここに居ることになるわ」

「お仕事、ですか?」

 ルルは疑問を口にする。僅か十二歳ほどの少女が仕事をしている、というのは妙な話である。そもそも、この家に来てから妙な話ばかりではあるのだが。


 ベルスレイアは、ルルの疑問に答える。

「私、王家直属の騎士団の団長を務めてるの。黒薔薇っていうのだけれど、ルルはもう見たことがあるわよね?」

「はい」

 言われて、ルルは思い返す。自分をこの屋敷まで連れてきた騎士達が名乗っていたのが黒薔薇。つまり、ベルスレイアの部下であったわけだ。

 なるほど、と合点がいくルル。王家直属の騎士が公爵令嬢の専属侍女を迎える為だけに動いた理由がはっきりした為だ。


「さて、次は黒薔薇の訓練場に案内するわ」

 そう言って、ベルスレイアはまた先導する。その後ろを、ルルは付いていく。屋敷の案内を主人が直々にするのはどうなのだろう? と思いながら。



 そして訓練場。屋敷の裏手に広がる庭を改装しただけの、簡素な広場。そこに、多くの人が集まり、訓練に励んでいた。

「ここには黒薔薇、そして白薔薇の警備部門が集まっているわ」

「警備部門、ですか?」

 ルルはまた、妙な言葉に首を傾げる。


「屋敷の仕事は、全て白薔薇が担っているのよ。屋敷の護衛、警備も白薔薇の仕事。もちろん、訓練を受けるのは才能のある者だけ。白薔薇の中でも、任務に向いた者は黒薔薇に。そうでない者は警備部門に入るのよ」

 その説明を受け、意味は理解するルル。つまり、騎士もまたベルスレイアの認めたメイドの中から選んでいる、ということ。そして王家の部隊であるはずの黒薔薇が、完全に私物化されているということ。


「――ベル様! いらっしゃったのですね!」

 そこで、ベルスレイアの方へと呼び声が掛かる。顔を向けると、手を振ってシルフィアが駆け寄ってくるところだった。

「こちらの方が、専属侍女ですか?」

「ええそうよ、シルフィ。紹介しておくわね。この子が私の専属侍女になる、ルル・アプリコット。そしてルル。この子が私の剣術指南役で、黒薔薇の副団長も務めているシルフィア・ロンドウェイよ」


 ベルスレイアに紹介され、シルフィとルルは互いに礼をする。

「お初にお目にかかります。この度、ベル様の専属侍女に選んでいただきました、ルルと申します。宜しくお願い致します、シルフィア様」

「こちらこそ、宜しくおねがいします。一応、元近衛騎士団の副団長で、今はベル様の付き人のようなことをしています、シルフィアです。どうぞ私のことは様付せず、気楽にシルフィアとお呼び下さい」

「そうですか? ではシルフィアさんも、私のことはルルと気軽にお呼び下さい」

「努力します、ルル殿」


 二人はそのような会話をして、初対面を終えた。

 ルルから見て、シルフィアはまともな人間に見えた。黒薔薇や白薔薇の面々とは違い、ベルスレイアに妙な熱っぽい視線を向けることが無い。それだけで、真人間のように見えるから不思議な話である。そもそも、真人間が少数派に見える状況も不思議ではあるのだが。


 ともかく、ルルから見てシルフィアは好印象であった。しかし、残念ながらその印象はいずれ脆くも崩れ去ることとなる。二年間、ベルスレイアに調教され続けたシルフィア。表面上は平常を保っているが、精神的には既に信者の仲間入りをしている。

 その形が他の信者とは異なる為、分かりづらいだけに過ぎない。


「さて。せっかく訓練場に来たのだし、稽古を付けてあげようかしら?」

 ベルスレイアは気まぐれに、そんなことを主張する。すると、黒薔薇や白薔薇の警備部門の面々から黄色い悲鳴が上がる。

 誰もが是非とも、ベルスレイアに稽古を付けてもらおうと狙っていた。敬愛するベルスレイアから直接指導を受けるのだ。手取り足取り教えられたなら、数日は風呂に入らない覚悟さえある。

 もっとも、ベルスレイアは臭い女は嫌いなので、結局のところ泣く泣く入浴するのだが。

タイトルと本編の内容が異なる、というご指摘を受けました。


タイトル回収という意味であれば、かなり長い話になるかと思います。

それまではタイトルと内容に違和感を覚える形になるかもしれませんが、必ずタイトル通りの内容を描く予定です。

なので、申し訳ありませんがどうか今後とも宜しくお願い致します。

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