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専属侍女ルルとの出会い 01




 ベルスレイア、十二歳。シルフィアとの手合わせ、そして魔物の出現するダンジョンの探索で着実に力を付けていた。

 剣士と上位職の剣豪。そして拳法家という格闘術を使う職業と、その上位職である格闘王。これら四つの職業をレベル二十まで上げることに成功していた。

 現在は闇魔法を極めるため、呪術師という職業に転職している。

 こうしてレベル上げを素早く行えたのは、ダンジョン探索が可能だったお陰である。


 ダンジョンとは、いわば魔素の吹き溜まり。濃い魔素を好んだ魔物が数多く生息する危険地帯を、ダンジョンと呼ぶ。

 典型的なものは、古代に作られた『遺跡』の地下に存在する人工的なダンジョンである。元々は魔素を利用する為に作られたと思われる遺跡が、人の管理を離れた結果、魔物の生息する危険地帯へと変貌したものだ。


 しかし、遺跡型以外にもダンジョンは存在する。自然環境下で、特に魔素の濃い場所であれば、魔物が集まりダンジョンとして認定される場合がある。

 遺跡とは異なり、地上は空間に限りが無い為、集まった魔物は離散する。そのため、極めて魔素が濃い特殊な場所しかダンジョンとして認定されない。故に、数としては少数派である。


 ベルスレイアがレベル上げに利用したのは、そうした天然のダンジョンである。正確には、ダンジョン認定されるほどではない魔素の溜まり場。言わば半ダンジョンとでも言うべき場所。

 ここをシルフィアと繰り返し何度も訪れ、レベル上げを繰り返した。


 当然、魔物は殺せば数を減らす。そのため、毎日のようにレベル上げが出来るわけではない。LTOでは、ダンジョンに限らず魔物は定期的にスポーンしていた。この仕様の違いもあり、ベルスレイアが極めることの出来た職業は四つに留まっていた。


 そうした日々の中、変化したのはレベルだけに留まらない。

 まず、屋敷のメイド達が全員ベルスレイアの信者となった。過半数がベルスレイアの信者となった時点で、信者化が加速。また、非信者のメイドが辞めることも多くなった。空いた穴を埋める人材は、もれなく信者のメイドにより教育を受け、ベルスレイアの信者となる。

 そうした循環が二年続いた結果、屋敷にはベルスレイアの信者しか存在しなくなった。


 執事や料理人等、メイド以外の人材も退職してしまった。が、その穴を結局メイドが埋める。最終的に、屋敷の使用人は全て信者メイドで占められることとなった。

 結果として、屋敷にはベルスレイアとシルフィア、そしてルーデウスの他には信者しか居ないという状況に至った。

 これにより、ルーデウスは日夜ストレスに胃を痛めることとなる。


 そして、信者メイドをベルスレイアは自身の持ち物として認定。これに名前を付ける。エプロンドレスの白いフリルを薔薇の花弁に見立て『白薔薇』と呼ぶこととなった。

 自らの仕事をベルスレイアに認めてもらった。そう喜び、白薔薇の面々はより意欲的に業務に務めることとなった。なお、業務内容にはメイドの範疇を越えるものが数多くある。執事や料理人、厩番などもメイドがこなす。警備兵すらメイドである。


 また、白薔薇の者達の中には戦闘に関わる才能を持つ者も多く居た。ベルスレイアはそうしたメイドを魔眼で見抜き、自身が団長を務める新設の特務騎士団に所属させた。

 王家直属の騎士団とは名ばかり。その内実はベルスレイアに忠実な、ベルスレイアの騎士団となった。この忠実な騎士団を、白薔薇に対して『黒薔薇』と名付け、ベルスレイアは重用することとなる。



 そうして自身の手飼の勢力を増強しつつも、表向きは単なる公爵令嬢を演じていた。

 第一王子サティウスとの婚約をした、次期王妃ベルスレイア・フラウローゼス。その名は既に、多くの貴族の間で知られていた。未だ社交界に顔も出したことのない少女であるにも関わらず。


 その一因に、ベルスレイアの演技がある。サティウスとは度々お茶会を開き会話をした。その都度、ベルスレイアはサティウスに気のあるような素振りを見せた。気配りができ、男を立て、聞き上手で知識も深い令嬢を演じた。

 その成果もあり、サティウスはすっかりベルスレイアを素晴らしい女性だと思いこんでいる。


 そして既に社交界に顔を出しているサティウスが、自らの口でベルスレイアの噂を広めたのだ。話題になるのは必然のこと。評判の良い第一王子が褒め称える少女、ベルスレイア。その資質は如何ほどなものか。多くの貴族が興味を持ち、ベルスレイアの社交界デビューを待ち望んでいた。


 そんな折に訪れた、ベルスレイアの十二歳の誕生日。これは、ようやく社交界へ参加する準備が出来たという意味でもある。多くの子息令嬢は十二歳、遅くとも十四になる頃には社交界に顔を出す。その誕生日を祝う名目で、最初に顔繋ぎの為のパーティーを開催するのが習わしである。

 当然ベルスレイアも誕生日祝いのパーティーは開く。


 しかしここで問題が挙がる。

 というのも、これも慣例に基づくもの。多くの貴族令嬢は、その世話係として専属の侍女を侍らせることが常である。男爵位などでは侍女を連れないことも多くあるが、公爵家ともなれば侍女もまた顔。その品位、技術は極めて高いものが問われる。


 白薔薇の面子も侍女として申し分ない技能を持つが、そこはベルスレイア。自分の専属侍女ともなれば、並大抵の女性では納得できない。

 故に、探すこととなった。世界で唯一、最高にして最強の侍女。ベルスレイアが所有するに相応しい女性。そんな人物を求め、白薔薇と黒薔薇、全ての信者を総動員して専属侍女獲得に当たることとなった。

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