悪役令嬢の嗜み 02
(――うわ、ホントに見えちゃったよ)
ベルスレイアは、自分の視界に重なるように映った情報に驚く。
それはつまり、ここが地球ではない異世界――LTOのような場所であることの証明に他ならない。
しかし、それ以上にベルスレイアは驚いていた。
自分のステータス情報が、どこかおかしいのである。
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名前:ベルスレイア・フラウローゼス(Bellsreia Flaurozes)
種族:吸血鬼
職業:打槍闘士
レベル:20
生命力:80
攻撃力:34
魔法力:32
技術力:34
敏捷性:30
防御力:28
抵抗力:26
運命力:40
武器練度:剣A 打槍S 拳A
魔法練度:闇A
スキル:血統 カリスマ 先手必勝 武器節約
根性 自然治癒 孤高 人類特攻
血の呪い 血の解錠 血の翼
覇者の魂 赤い月 収納魔法 血の魔眼
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これが、ベルスレイアのステータスであった。
まず何よりも目を引いたのは、種族の欄である。
ベルスレイアの知る限り、LTOにおけるベルスレイアは人間だった。それは種族特性を見れば明らかだった。
LTOにおいて、吸血鬼は特徴的な種族である。まず、ステータスの成長上限を大幅に引き上げる。だが、ゲーム内で敵として戦う場面でも、ベルスレイアのステータス最大値は通常の数値。つまり、吸血鬼のものではなかったのだ。
何よりも、LTOでは種族ごとに弱点が存在する。吸血鬼は光の魔法や水の魔法、そして魔族特攻の効果がある武器やスキルに弱い。弱点が多い種族なのだ。
しかしゲーム内のベルスレイアが、そのような弱点を持っていたという事実は無い。
つまり、LTOのベルスレイアは人間だったはずだ。
しかし、現在のベルスレイアは吸血鬼となっている。これはおかしい。
鈴本清美がプレイしていたLTOのキャラクターも、種族は人間だった。これは、清美が弱点の多い種族を敬遠した為である。
なのに、なぜか自分は吸血鬼。
ベルスレイアとしては困った話である。
続く職業やレベル、各種ステータスに関しては問題ない。LTOでベルスレイアが使っていたキャラの数値の通りだった。育成上限、最大値まで育てた通りの数値が並んでいる。
武器練度、魔法練度も違和感は無い。扱える武器や魔法の種類は職業依存。打槍闘士の魔法は選択性だった為、攻撃性能に尖った闇の魔法を選んだ。
清美だった頃の記憶の通りの数値である。ここまでは、問題ない。
だが、スキルがおかしい。ゲーム内でも見覚えの無いスキルが散見される。
血統、カリスマ、先手必勝、武器節約、根性、自然治癒、孤高、人類特攻についてはゲーム内に存在したスキルである。
しかし、他のスキルに関してはベルスレイアも知らないものばかりだ。
ただ、性能については類推することが可能だった。血の呪いは、恐らく呪いというスキルと似た性能を持つ。血の解錠は解錠。血の翼は飛翔のスキルと似ているはず。
覇者の魂については、王の魂というスキルと似たようなものだろう。NPC専用のスキルで、極めて強力なスキルだったとベルスレイアは記憶している。
赤い月、というスキルは不明。似た名前のスキルを、ベルスレイアは知らない。だが、月に関する名前のスキルには防御貫通や定数ダメージ等、攻撃的なスキルが多かった。そこから察するに、赤い月も攻撃用のスキルだろう。
収納魔法は、見たことのないスキルだが想像はできた。名前の通り、武器や道具を収納する魔法なのだろう。ゲームにおける持ち物画面と同等のものと思われる。
そして、血の魔眼。全く使いみちが分からない。
ベルスレイアは、ひとまずこのスキルの性能を確認することから始めることとした。