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国境防衛戦 04




 作戦開始直後。聖王国軍本陣のある一角。

 中枢部を破壊する為活動するリーゼロッテ――そして、フランルージュ。

 フランルージュの背に乗るのは、リーゼロッテ。ベルスレイアでは無い。


 フランルージュは蒼い鱗を持つ火竜の姿をしている。その為、雑兵に対する殲滅能力が高い。

 ライゼンタールの血を引くアレスローザとも姿は若干異なり、多少小柄故の機動力もある。

 故に、ベルスレイアに命じられたのだ。機動力でリーゼロッテの補助に回れ、と。


 本心を言えば。ベルスレイアをその背に乗せ、飛びたかった。敵本陣を瞬く間に蹂躙するベルスレイア。そして火を吹き飛び舞う自分の姿を夢見た。

 だが――現実には。ベルスレイアは単独での空中戦も可能。機動力もフランルージュを単独で超えている。

 防具属性の『魔物騎乗』による補正を狙う。その意味以外でベルスレイアがフランルージュに騎乗する理由は無いのだ。


 結果、リーゼロッテと共闘することを求められたフランルージュ。

 だが。不満を顕にするわけにもいかず。故に大人しく、リーゼロッテを背中に載せていた。

 ――なのだが。

「はぁ。……ベルと一緒が良かったなぁ」

 等と。さっからブツブツ呟き続けているリーゼロッテ。


 敵となる聖王国の騎士に向けて。まるで八つ当たりするかのように魔法を放つ。役割はきっちりと果たしている。だが……精力的に活動しているとは言い難い。

「リーゼロッテ様」

 故に。フランルージュは声を掛けた。


「はい? なんですか?」

「あまり、そういった不満ばかり口にするのは宜しくないかと」

 アレスローザという娘を持つ、母親としての性分も手伝って。フランルージュは、子供じみたリーゼロッテに諫言を呈する。


 だが。当然そのような言葉を受けるとは思っておらず。

「……むう。どうしてですか?」

 不満げな声を漏らすリーゼロッテ。

 呆れに近い感情を抱きながらも。相手は精神的に幼い人間なのだから仕方ない。と、自らを律し諭し続けるフランルージュ。

「一緒に居られない。それが作戦上の必然ですから。言葉にして、嘆いても仕方ないのですよ」


 フランルージュの忠告を受けて。しかし尚不満の収まらないリーゼロッテ。

「だったら、どうすればいいんですか?」

 どこか不機嫌な口調で聞き返す。

 これにも、フランルージュは冷静に努めて答える。

「そうですね……。まずは、我慢の理由を作るのが良いでしょう」


 フランルージュは――幼い頃のアレスローザにも教育した時と同じことを思い返し語る。

「例えば、ですが。寂しさや不満を、全ては次に会う時の幸せの糧にするのです。我慢して、努力して。ベルスレイア様の力になることが出来れば。リーゼロッテ様も嬉しいとは思いませんか?」

「えっと……」

 リーゼロッテは、フランルージュに言われて想像する。


 自分が頑張った分だけ。ベルスレイアが喜んでくれる。ベルスレイアが、幸せそうに微笑む。

 そんな姿を想像するだけで、胸が暖かくなる。

「確かに。私も嬉しいです」

「でしょう? それが我慢する理由になるのです」

 フランルージュは続けて語る。


「我慢した分だけ、ベルスレイア様も、リーゼロッテ様も幸せになる。逆に、不満ばっかり口にして、仕事に力が入らなくなると。期待未満の仕事しか出来ずに、ベルスレイア様が悲しまれるかもしれない。仕事が長引いて、ベルスレイア様と一緒にいられる時間が減ってしまうかもしれない。――そんなのは、嫌ですよね?」

「はいっ! 絶対に嫌ですっ!!」

 フランルージュ自身も、同様の理由から我慢をしているから。説得力のある理屈を説くことが出来た。

 リーゼロッテも、容易に想像出来たため、はっきりと反応を示す。


「であれば、不満を口にするのはお止めになった方が良いでしょうね」

「はいっ! そうですね。分かりました! ありがとうございます、フランさん」

 フランルージュに感謝を伝えて。リーゼロッテはやる気を出し、破壊活動に精を出すようになる。

 そんな様子を見て。フランルージュも安心し、火を吹きつつ飛ぶことに集中する。


 こうして――些細な切っ掛けから生まれた、偶然の出会いが。

 リーゼロッテの成長に。運命の歯車に。僅かな変化を齎した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おおお!案外まともな良い助言と成長ですね〜
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