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女神フォルトゥナ 04




「最後に、転生時のオマケとして清美さんがラブ・トゥルーシア・オンラインで使っていたキャラクターと同じような力を授けましょう」

 フォルトゥナの説明が、訝しむ清美を無視して続く。


「たしか、清美さんのキャラクターの職業は『打槍闘士』でしたね? すでに関連スキルに該当する能力と、ステータスに該当する身体能力を引き継ぐ準備が済んでいますが……これも、問題ありませんか?」

「まあ、問題ないよ」


 清美は頷く。打槍闘士とは、LTOにおける不人気武器『打槍』――いわゆるパイルバンカーの使い手を指す。


 打槍という武器は、金属製の杭を打ち出すために『烝魔素機関』というものを搭載している。大気中に存在する魔素――LTOに於ける魔法の源となる物質を取り込み、圧縮して爆発的なエネルギーを生み出す。それが烝魔素機関である。

 この烝魔素機関のエネルギーを利用し、杭を打ち出す構造を持った武器が打槍というものである。魔素の圧縮による打ち出しは魔法力依存。手足を使った殴り込みが攻撃力依存。この二つのエネルギーを重ねて敵を殴ることから、LTOの武器では最大火力を誇る。


 それでも不人気なのは、打槍の耐久性の低さである。上位の武器すらすぐに壊れる。また、攻撃に隙が多く、技のリキャストタイムも他の武器の倍以上長い。時間当たりにはじき出せるダメージ量は、むしろ少ない方となってしまう。


 それでも清美は打槍を愛用していた。打槍の専門職になるほどである。

 理由の一つは、清美が基本ソロプレイヤーであったからである。打槍闘士は打槍の特性に合わせ、攻撃力と魔法力の成長性が高い。育てれば、万能アタッカーとして機能する。LTOの万能アタッカーには魔法剣士や暗黒騎士などが存在したが、攻撃力だけで言えば打槍闘士の方が上である。


 ただ敏捷性や防御力が低く、多くのプレイヤーがこれを嫌って敬遠していた。清美はこの点をプレイスキルでカバーしていた為、さほど問題とはしていなかった。


 そもそも、清美はパイルバンカーが好きであった。浪漫のある武器である。装備するのが当然と考えていた。これが打槍闘士を選んだもう一つの理由。

 だからこそ、欠点を補うようにプレイスキルを磨いたわけでもある。


 つまり清美は、打槍が好きなのだ。故に、打槍闘士となって実物のパイルバンカーを振り回せるというのは喜ばしい。拒否する理由がない。

 ステータスを引き継ぐ件にしても、増える分には何の問題も無い。


「では――転生に関する諸々の事情に関しては、これで全て承諾していただいた、ということでよいでしょうか?」

 フォルトゥナが、最終確認とばかりに問う。

「いいよ。本当にそんな条件で転生できるならね」

 未だに信じていない清美が、煽るように肯定する。


「それでは……鈴本清美改め、ベルスレイア・フラウローゼス。第二の人生を、つつがなく過ごせることを祈っております。どうぞ、お幸せに」

 そしてフォルトゥナが微笑む。同時に清美に向けて手をかざし、微笑みを潜めて真剣な表情で目を瞑る。


 すると、フォルトゥナの手から光が溢れる。光は次第に清美を、周囲の全てを飲み込む。

 何も見えなくなったところで、清美は思った。


 まさか――本当に、転生するの?


 最後まで疑いながら、清美は意識を失った。

いつもお読みいただきありがとうございます。


いよいよ、ようやく次の話から主人公がベルスレイアとなります。

どうかベルスレイアの活躍にご期待下さい。


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