表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

164/180

瓦解する帝国貴族 06




 ――一方的な戦闘が続く。

 ベルスレイアが龍の周囲を飛び回り、闇色の羽根を飛ばして攻撃する。龍もこれに対し、炎の球体を打ち出して対抗。

 だが、速度ではベルスレイアが上回っていた。炎の球体を掻い潜りながら、闇色の羽根で迎撃しながら。自分の攻撃は的確に、一方的に当てていく。


 既に龍の肉体は損傷箇所だらけとなっていた。鱗も無残に禿げ散らかしている。血を流し、苦悶の咆哮を上げながら、しかし対抗する手段すら無い龍。既に、状況は詰みであるかのように思えた。

 だが――突如龍が、方向転換をした。


 これまでベルスレイアとの戦闘行為により、上昇を続けていた。だが、急に方向転換をしたかと思えば、地上に向かって首を向ける。

「――まさかッ!!」

 ベルスレイアは、全速力でその首の向いた方向――帝都へと向かって滑空する。


 龍は、開いた口に炎を蓄えていた。魔法を解き放つことなく、蓄え、エネルギーを圧縮してゆく。比例して、龍の額に埋まっていた小さな宝珠――真竜の緋石が輝きを失っていく。

 龍は……皇帝ライゼンタールは。己の姿を真竜に変えた宝珠の力全てをこの攻撃に乗せて。ベルスレイアではなく、帝都に向かって攻撃を放とうとしていた。


 その威力は絶大であり、帝都を破壊し尽くしてもなお有り余る程のエネルギーとなる。これだけのエネルギー量を持つ攻撃なら、地上の人々は当然生き残ることなど不可能。

 つまり皇帝ライゼンタールは、ベルスレイアへの直接の攻撃を諦めた。その配下を傷つけ、殺し、奪うことで心を砕こうと試みたのである。


 当然、そのようなことをベルスレイアが許すはずが無い。龍と帝都の間に滑り込むと、帝都を背にするように、仰向けになるような姿勢で滑空。

「……巫山戯るなよ、屑が」

 龍を見上げながら、憎々しげに呟くベルスレイア。


 直後――龍は、眩く燃える黄金色の火球を吐き出した。


 その魔法攻撃は、真っ直ぐ帝都に向かって降りてゆく。つまり――間に立ち塞がるベルスレイアにも向かってゆく。

 この火球を、ベルスレイアは避けない。迎撃もしない。ただその身を大の字に広げ、帝都を庇うような姿勢で、受け入れる。

 そして火球がベルスレイアを飲み込み――爆ぜる。


 高熱の炎が、帝都の上空で弾けるように爆発。その爆風と、火の粉と呼ぶには巨大すぎる金色の炎が地上へと降り注ぐ。

 爆風に煽られ、木造の露天や屋台等は次々と砕け、壊れてゆく。降り注ぐ火の粉が、帝都のあらゆる場所で燃え上がり、火事を起こす。

 ベルスレイアにより最悪の事態は免れたものの。帝都の惨状は、決して無事とは言い難いものであった。


「――グオオォォォオッ!!」


 龍が、得意げに吠える。ベルスレイアには自殺をされてしまったが、それは仕方ない、と考えていた。敵となる者はもう居ない。あとは力で全てを支配すれば、また皇帝として支配者になれる。ライゼンタールは、真剣にそう考えていた。

 だが――そう上手くいくはずもなく。


「……許さない」


 黄金色の爆風が晴れた、その中心地から。小さく呟く声がする。


「あの街も、住まう人々も。全てこの私のもの。お前に傷つけられる理由など無い。お前が傷つけていい道理など、何一つ無いッ!!」

 ガシュッ! と、打槍『パンクトネイル』が稼働する音が響く。

「貴様は――塵一つ残さず消し飛ばして差し上げるわッ!!」

 言って――ベルスレイアが、龍へと向かって飛翔する。


 高い破壊力を持った黄金色の火球。そして龍のスキルによる高すぎるクリティカルヒット率。これにより、ベルスレイアの受けたダメージは三倍となった。

 結果、ベルスレイアの生命力はほぼ全てを削り取られて――スキル『根性』の効果により、僅か1を残すのみとなっていた。

 だが、この状態だからこそ、ベルスレイアの攻撃能力は最大化する。


 打槍を幾度となく稼働させつつ、龍へと向かうベルスレイア。一回につき一割の威力上昇。パンクトネイルの強度は高く、最大で二十回の圧縮が可能。最終攻撃力は三倍に到達する。

 さらにスキル『剛闘気』による攻撃力の三割上昇バフ。『新月』により、生命力の低下分だけ攻撃の威力を増加。『赤い月』により、受けたダメージの分だけ攻撃力と魔法力を増加。『覚醒』による攻撃力と魔法力の倍化。さらには防御力と抵抗力の無視効果もある。


 適応順序は『剛闘気』『赤い月』『覚醒』『新月』そして打槍による倍化という順である。

 ベルスレイアの攻撃力230が『剛闘気』により299に。『赤い月』により785に。これを『覚醒』が二倍して1570。『新月』の効果が乗って1813。


 魔法力も同様に上昇してゆき、『新月』の効果が乗った時点で1653。打槍の場合はこれを足し合わせたものが攻撃の威力となるので3466。打槍『パンクトネイル』は物理攻撃の威力をプラス40、魔法攻撃の威力をプラス20する効果を持つ装備なので、合わせると3526。

 これを蒸魔素機関の二十回の圧縮が三倍にするので、10578。さらに『新月』及び『赤い月』の効果により、相手の防御力と抵抗力は無視される。


 数値にして、龍を六回殺してまだ余りあるほどの莫大な攻撃力。この上で更にベルスレイアは『分闘気』を発動。これは闘気による分身を生み出し、一度に二回の攻撃を繰り出すスキルである。ただし、分身の攻撃の威力は本体の半分となる。

 数値にすれば5289。この攻撃もまた、相手の防御力と抵抗力を無視する為、龍を三回殺せるだけの破壊力を持っていることになる。


 そうして――合計すれば龍を十回も殺せる程の破壊力をもって、分身と共にベルスレイアは飛翔する。

 標的は龍。狙いは、その額。元凶たる真竜の緋石ごと粉砕する為である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やはり、ベルさん主観と違って、客観的には格好いい事が時々有りますね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ