瓦解する帝国貴族 01
ベルスレイアの反撃により結成された新部隊『青薔薇』。元皇族である彼女達は、華やかな生活を送る為、銀華苑にて身柄を預かることとなった。ベルスレイアの屋敷だけでは手狭であるため、銀華苑の名義で新たな屋敷を購入、そこを青薔薇の詰め所とした。
維持管理には白薔薇を派遣し、青薔薇達には約束通り、皇宮での生活に負けず劣らずの華やかな生活をさせた。
当然、このような行動は目立つ。皇族らしき女性が、ベルスレイアの手の内にある。その噂はすぐさま帝国内に広まる。
だというのに、帝国はベルスレイアを罰することも、青薔薇を取り返すことも出来ない。当の本人、青薔薇達が赤の他人を名乗っているからだ。
同姓同名の別人であり、自分達の番はベルスレイア様だ、と。誰もが証言するため、そこには何の事件性も無い。証言が無ければ、ベルスレイアが彼女達を誘拐したという事実も確認できない。
そうした理由で……ベルスレイアと青薔薇は野放しとなった。
当然、この情勢を受け――帝国貴族の多くが皇帝を見限った。
ベルスレイア優勢と見て、即座に派閥替えを行う。帝国貴族の八割を超える数が、ベルスレイアの名の下に忠誠を誓った。
実力主義で皇帝さえ入れ替わる。そんな国であるからこその、当然の動きであった。
こうなると、現在の皇帝であるライゼンタールは実質的な権力を失うことになる。帝国貴族の多くが、ベルスレイアの味方なのだから。
例え皇帝として命令を下したとしても、もう誰も従わない。表面的に従う格好をすることはあれども。結局は、ベルスレイアの為に動いている。
そうした状況に追い込まれ、いよいよ皇帝ライゼンタールは本格的な対処に乗り出した。残る皇帝派の貴族を集め、ベルスレイアへの対抗勢力を結成。
だが、これも無駄に終わる。辛うじてかき集めた戦力も、ベルスレイア自身や配下である銀華苑の手によって無力化。代表となる貴族や、実際に戦力を指揮する人材の暗殺や懐柔。
そして人質を取るかのように、皇帝派貴族の令嬢、夫人が誘拐されていく。誰もが見目麗しい女性であった。中でも獣人族の女性は『青薔薇』へと編成され、乗馬属性の補正を得る為の戦力として組み込まれていく。
それ以外の者達も、多くは銀華苑や野薔薇へと所属し、結局はベルスレイアの戦力となっていった。
やがて皇帝派貴族も瓦解。有能な者はベルスレイアによって引き抜かれるか、殺されるかの二択。有形無実の烏合の衆と化していった。
それでも尚、ベルスレイアの反撃は終わらない。もはや抵抗する力もない皇帝派に追撃。一人残らず殺し尽くす。
この段階になって尚、皇帝派についていた貴族は、ベルスレイアの方針に従えない者ばかりであった。
つまり、銀華苑の発足前、かつての犯罪者ギルドのような方針を持つ者達。ベルスレイアにとって不要、かつ不快な汚物共。殺されて当然――とばかりに次々と暗殺されていく。
そうして空いた椅子にはベルスレイア配下の勢力に属する貴族が座っていく。
――皇宮の誘拐事件から、わずか三ヶ月後。
帝国全土、どこにも最早、皇帝派の貴族など存在しなくなっていた。
一挙連続投稿八日目です。
宜しければページ下部の方から、他著者の一挙連続投稿作品までお読み頂けると有り難く思います。