表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

156/180

禁忌と亡国 05




 騎竜。それは、主に竜騎士やその上級職に該当する者が騎乗する魔物の事を指す。

 職業にはそれぞれ、様々な適性がある。武器適性に魔法適性。そして、防具適性。武器適性は、該当する武器を扱う場合のダメージ計算を優遇し、魔法適性も同様の処理が成される。それぞれ武器練度、魔法練度の高さによって補正も大きくなる。この点は、LTOでもこの世界でも共通であると、ベルスレイアは確認済みであった。


 そして、LTOとこの世界の両方に存在するシステムの一つに、防具適性というものがある。該当する属性の装備を身に着けた場合、ダメージ計算に補正がかかり優遇される。

 基本的には職業毎に固有であり、転職した場合は引き継がれない。


 そして防具適性の中には、厳密には防具には該当しないものも存在する。乗馬、魔物騎乗がそれである。

 この二つは例外であり、転職した場合に引き継がれる。乗馬属性のある職業を経験すれば、以後どの職業に転職しても、乗馬属性を持つことになる。

 そして――乗馬属性を持つ場合、文字通り乗馬した状態で、ダメージ計算に優位な補正がかかる。


 これと同じ現象が魔物騎乗属性でも起こる。この属性を持つ者は、魔物に騎乗した場合に補正がかかる。職業で言えば、竜騎士や天馬騎士が該当する。名前こそ竜や天馬を指定しているが、実は魔物であれば何でも同じ補正を得られる、というのがLTO、そしてこの世界のシステムであった。


 ベルスレイアは、このシステムが純粋な魔物や馬だけでなく、他の生物にも適用されることを知っていた。

 実例として、ベルスレイアは乗馬属性を既に保持している。その状態で、妖狐姿になったルルに騎乗すると、ダメージ計算に補正がかかった。

 つまり、乗馬スキルは馬でなくとも獣であれば発動する。さらには、獣の状態であれば獣人であっても発動するのだ。


 そこから推測し、魔物騎乗も同じだろう、とベルスレイアは考えていた。竜騎士が竜に乗れば、補正がかかるのだ。ならば、竜人族が竜の姿になり、それに騎乗しても魔物騎乗の補正はかかるはず。


 ――という、前提があるからこそ。ベルスレイアはフランルージュ達に向かって『騎竜となって欲しい』と発言したのであった。

 彼女達には、竜の姿になってもらう。そして黒薔薇や白薔薇の、魔物騎乗属性持ちに騎乗してもらう。そうすれば、レベル上げ以外の方面から戦力を強化できる。と、いう考えであった。


 だが。そうした前提を知らない以上、フランルージュ達には到底受け入れがたい提案であった。

 つい先程まで、皇族として誰もに敬われる生活を送っていた。にも関わらず、突如騎竜になれ等と命じられたのだ。それは畜生の真似事をしろという、嫌がらせ以外の何の意味も無いように感じられた。


 当然――反発する。

「ふざけないでッ!! 知能の低い魔物と同じ扱いなど、受け入れられるはずが無いでしょうが!!」

 フランルージュは怒声を上げた。他の皇女、皇后達も同様に頷く。

「ふざけているのはそっちよ。私を馬鹿にしているのかしら?」

 しかし、ベルスレイアも負けじとばかりにキレ返す。


「この私が、私の所有物を、その辺のしょうもない魔物、羽の生えた蜥蜴と同じ扱いをするとでも?」

「……いや、それはそちらが自分から言ったことでしょう」

「そんなわけ無いでしょう? この私の所有物ですもの、衣食住最高のものを揃えるわ。当然、皇宮に居た頃と遜色ないか、それ以上の生活を約束するわよ!!」

「そ、そう……ならなぜ騎竜に、などと」

 なぜかキレ返され、しかも訳の分からない高待遇を約束され。フランルージュは困惑する。


「強くなるために必要なのよ。私ではなく、私の所有する戦力の為にね」

 そう言って、ベルスレイアは説明する。職業毎に存在する魔獣騎乗属性のこと。ダメージ計算の補正のこと。そして、竜人族が変身した姿でも補正がかかるはずだということまで。

 一通り説明して、ようやくベルスレイアの意図が伝わる。

 が、しかし。


「……事情は分かりました。しかし、受け入れるわけにはいきません」

「あら、どうして?」

「騎竜という形が、そもそも侮辱的です。それに、貴女に協力する理由が一切ないですから。私達は、ただ誘拐されただけですもの。いずれアインヘリウス様が助け出してくださるまで、待っていれば良いのです」

 至極当然の理由で、断った。


「まだ勘違いをしているようね」

 ベルスレイアは、フランルージュの胸元を掴み、ぐいっと自分の方へと引き寄せる。

「お前達に拒否権は無い。私の所有物のことは私が決める。そして、あの王様気取りの蜥蜴がお前達をもう一度手に入れることも無い。既に私のものになったのだから」

「……私は、アインヘリウス様を信じますので」

「そんなこと、許した覚えはないわ」


 次の瞬間。ベルスレイアはフランルージュの胸元を掴んだまま持ち上げ、投げる。床に向けて投げ落とした為、フランルージュは衝撃により咽る。

 そこへ、ベルスレイアの手が伸びる。

「憶えておきなさい。これが、お前の所有者の味よ」

 言って――ベルスレイアは手をフランルージュの額に付け、魔素を流し込む。


「――っ!!」

 突如、脳へと流れ込んできた奇妙な感覚に、フランルージュは驚愕する。そして、続いて全身へと走る快楽に目を見開く。身体を震えさせ、どうにか耐えようとする。だが、ベルスレイアの手から流れ込む『何か』には逆らえなかった。

一挙連続投稿五日目です。


宜しければページ下部の方から、他著者の一挙連続投稿作品までお読み頂けると有り難く思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] えっ、あの皇帝を信じるですか。。。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ