禁忌と亡国 04
――時は少し遡る。
ベルスレイアはその日の夜、影を伝って皇宮へと侵入していた。そして影の中へと皇后、及び皇女を取り込み拉致。そのまま屋敷へと戻り、無事誘拐を成功させた。
その後。ベルスレイアは影の中で皇后達の前へと姿を見せる。
「はじめまして。私の名前はベルスレイア。今日からお前達の持ち主となる者よ。よく覚えておきなさい」
開口一番、不遜な言い方で状況を説明する。当然、皇族ともあればこの態度を流すはずもなく。
「何様のつもりです、無礼者!」
皇后が代表するように、非難の言葉を発した。
だが、ベルスレイアは憤りはしなかった。むしろ、楽しそうに笑みを浮かべ、皇后の顎に手を添える。
「反抗的なのも私は好きよ。まあ、顔が良い子に限るけれど」
その言葉に皇后は眉を顰める。顔を逸してベルスレイアの手から逃れる。
そんな皇后の様子を観察しながら、ベルスレイアは血の魔眼を発動。ステータスを見抜く。
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名前:フランルージュ・リンドバーグ・ライゼンタール(Flamrouge Lindberg Reisenthel)
種族:妖精族竜人種
職業:聖騎士
レベル:20
生命力:51
攻撃力:32
魔法力:29
技術力:27
敏捷性:25
防御力:32
抵抗力:29
運命力:24
武器練度:剣A
魔法練度:炎A
スキル:血統 カリスマ 守護 同体攻撃 聖域
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皇帝と同じく、妖精族竜人種。竜に変身することが出来るという、獣人族に似た特徴を持つ妖精族のことである。
一般的には強者側に入るのだろう。だが、一度だけの転職しか経験していない以上、ベルスレイアから見た場合は雑魚も同然。そこらの村人とそう変わりない能力であった。
「――さて、フランルージュ。お前も皇帝と同じ竜人族なら、竜に変身出来るのでしょう? どんな姿になるのかしら?」
「っ!? 何故、私の名を……それに種族まで」
「見れば分かるわよ。それより、早く答えて頂戴」
ベルスレイアは皇后、フランルージュを急かす。観念したかのように、フランルージュは語りだす。
「……私は、元は火の竜人族の出身です。故に火竜の類に姿を変えることが可能です」
「類、ということは他にもあるのね?」
「ええ。ただし、宝玉が必要です。火の宝玉は、現在は皇帝……アインヘリウス様がお持ちですから。実際に私が成れるのは火竜だけです」
「お前の娘たちに、他の竜になれる者は?」
「居ません。アインヘリウス様の番は皆火の竜人族でしたから。ここに居るのは、全員が純血の火の竜人族。火竜の他に成れるものは居ません」
「そう。まあ、火竜になれるのなら問題は無いわ」
ベルスレイアは納得したように頷く。
「――と、いうわけで。お前達は私が所有し、利用価値があることも確認できた。これからは、私の言う通りに働いてもらうわ」
「……何をさせるつもりです」
顔を顰めながら、フランルージュは問う。これに、ベルスレイアはにこりと微笑みながら答える。
「難しいことではないわ。――お前達には、私の所有する部隊の騎竜となって欲しいのよ」
そして、発した言葉は――人を人とも思わないような言葉であった。
一挙連続投稿四日目です。
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