表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/180

魔導器パンクトネイル 06

スマブラの新DLCキャラ、スティーブが楽しすぎたので更新が止まっておりました、申し訳ありません。

思う存分楽しんだので、更新再開致します。


今週は私のもう一つの作品、蒼炎の英雄と同時更新になりますが、来週からはこれまでどおり隔週更新となります。




 ベルスレイアが本来求めていたものは、単なる頑丈な物質であった。己の全力全開の攻撃に耐えうる、武器として成立しうる物質が欲しい。ただそれだけに過ぎなかった。

 しかし――遺跡の最深部で得た水晶の破片を、魔神器を見て。魔法金属を、ローゼスタイトを生み出す過程で試行錯誤し、書物を読み漁り得た知識を土台にして。

 ベルスレイアの脳内には、究極の物質を生み出す道筋が明確に見えていた。


 その究極物質の名を、前世の創作物の知識に擬えて『賢者の石』と名付けたのは、ちょっとした遊び心でもあった。

「――賢者の石! なんだか、とってもかっこいいですっ!」

 しかし、リーゼロッテは本気で喜び、目を輝かせていた。これを見て、やっぱり名前は重要よね。雰囲気が無ければ武器にした時に台無しだもの。とベルスレイアも考えた。


「以上が、魔法金属とそれに関わる知識のお話の全てよ。ついでに、これから私がやろうとしていることも話してしまったのだけれど」

「私、応援してます。ベルならきっと、賢者の石を完成させられると思います!」

「ふふ、ありがとうリズ」

 ベルスレイアはリーゼロッテを抱きしめ、そしてすぐに開放する。


「――じゃあ、話も終わったから私は作業に入りたいのだけれど。リズは部屋に戻るのかしら。それとも、ここでこのまま見学?」

「私はベルと一緒がいいですっ!」

「なら、少し離れた所で見ていて頂戴。魔法金属の加工はともかく、セラミックスはほとんど扱ったことが無いの。どんなことが起こるか分からないから、安全な場所にいて頂戴」

「はい!」

 返事をすると、リーゼロッテは部屋の隅にあった低めの机にちょこんと腰を掛けた。


 そうしてようやく、ベルスレイアの作業、実験が開始された。

 最初に行ったのは、人工宝石の作成である。真空中で物質を高温になるまで熱する機材を使い、手持ちの水晶――石英を加熱する。そして、この空間内に収納魔法を経由して蒸気化した金を封入。

 その後、温度を下げて水晶を取り出すと――無色の石英だったものは、水色に着色されていた。

 アクアオーラと呼ばれる人工宝石の一種である。


 出来上がったアクアオーラに、ベルスレイアは早速魔素を流し込む。金属と違い、流す過程で抵抗のようなものを感じ取る。しかし、無理矢理に力を込め、強制的に魔素を流し込む。

「――あら」

 すると、アクアオーラはパラパラと砂のようになって砕け、崩れていった。


 その過程を、ベルスレイアは血の魔眼を使って注視していた。その甲斐もあり、崩れ落ちた原因は明確に理解出来た。

「……魔法金属になる早さが違うから、蒸着した金が先に変化し、結晶構造を変えようとするから内側から構造が破壊されて、脆くなったのね」

 実際、崩れたアクアオーラの殆どの部分が白く、石英本来の色に戻っている。満遍なく蒸着したはずの金に斑が生まれており、結晶構造を変えようと内側で金の微粒子が動いたことが見て取れた。


 失敗から学ぶベルスレイア。次は先に石英に魔素を流し、構造を変化させる。また、蒸着するものも金ではなく、魔法金属化を済ませた粘金にする。

 魔素を流した石英は、今度は崩れること無く変化した。より硬質に、より透明度の高い水晶へと。そして、魔素の通りも良くなった。性質としては、ダイヤモンドに近い。


 先に、魔法石英の性質からベルスレイアは検査を始めた。

 正確な硬度としてはダイヤモンドよりは柔らかく、コランダム――ルビーやサファイヤよりも硬い。また衝撃や圧力、熱にも強いため、総合的な頑強さはダイヤモンドを遥かに凌ぐと言えた。

 一方で光の屈折率はむしろ石英よりも低く、宝飾品としては輝きに欠ける。数値としては水に近く、濃い砂糖水や食塩水と同等。

 魔素の伝導率は一般的な魔法触媒を遥かに凌ぎ、ミスリル等の魔法金属と同等か、それ以上。


 既に魔法の触媒としては極めて優秀な物質であると言える、魔法石英。これに、さらに粘金を蒸着させる。

 最終的に仕上がったものは、深い藍色の水晶。蒸着の過程で行った加熱、そして添加した蒸気の量は同じであるため、色合いの変化は魔素を流して結晶構造が変化したことによる影響と見られた。


 早速、ベルスレイアはこの藍色の魔法水晶の性質を調べた。

 硬度や耐衝撃、耐熱、耐圧性に関しては元の魔法石英とほぼ変わらない性質を示した。一方で、魔素伝導率は低下。魔法触媒としての性能は低下した。

 代わりに、圧力に対して硬度変化を起こす性質が見られるようになった。高い圧力を受けた面は、まるで餅のように柔らかく、粘りが出る。傷も付くし、摘んで引き千切ることも可能。だが、時間とともに硬度は元に戻り、再び完全な固形へと戻る。

 弱い圧力を受けただけであれば、粘りが出ることは無く、傷が付きやすくなる程度であった。


 利用方法についてはともかく。二つの物質を掛け合わせることで、全く新しい性質を持つ魔法セラミックスが製造可能であることは、これで明白となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ