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婚約破棄と計画的逃亡及び強奪 23




 石材の巨人が、拳を振り下ろす。

 それに合わせ、ベルスレイアも打槍を突き出す。


 巨人の拳とベルスレイアの打槍は正面から打ち合い、相殺し合う。ベルスレイアの立つ大地は衝撃に押しつぶされ、巨人は拳を打ち返される。


 ――このまま打ち合えば、ベルスレイアは不利である。

 ベルスレイアのステータスの高さにより、巨人の拳でも即死には至らない。だが、十発ほど喰らえばベルスレイアと言えども倒れてしまう。

 一方で、巨人の生命力は桁違いに高い。倍化したベルスレイアの攻撃力でも、巨人を殺すには数十回は攻撃を当てる必要がある。

 その差故に、ベルスレイアが先に倒れる。


 そしてベルスレイアは、攻撃を回避するわけにもいかない。後方には大切な人が――リーゼロッテ、シルフィア、ルルの三人が居る。攻撃の余波であっても、桁違いのステータスによるものであれば負傷、最悪の場合は死亡しかねない。

 故に、ベルスレイアは巨人の攻撃を正面から受け止め、その肉体、つまりステータスで相殺する必要がある。

 よって、攻撃の回避は不可能。ベルスレイアは巨人の攻撃を全て受け止める必要があり、逆転は不可能である。


 だが――ベルスレイアはニヤリと笑う。


「――ふふ、楽しいわね。思いっきり身体を動かすのって」

 呟くベルスレイアは、巨人から受けたダメージにより腕から血を流していた。


 そのまま、巨人の第二撃が始まる。拳を振り上げ、ベルスレイアに振り下ろす。当然、ベルスレイアはこれに対抗して打槍で打ち返す。

 二度目も結果は同じ。互いの攻撃で、互いにダメージを負う。ベルスレイアは、打槍を持つ右腕を中心に、擦過傷のような傷を負っていた。――生命力の減少とは別の負傷。巨人の攻撃による肉体的損傷。LTOで言うならば、出血の異常状態とでも表現すべき状態。


 だが、それでも。ベルスレイアの笑みは消えない。勝利を確信した様子で、三度目の巨人の拳にも応える。


 何度も――何度も繰り返す。着実にベルスレイアの生命力が削られていく。負傷も増え、ベルスレイアは己の血で汚れていく。

 だが、やはり不敵な表情が変わることは無い。


 そして、いよいよベルスレイアの生命力が尽きようとしていた。致死量相当のダメージを受けるが、スキル『根性』の効果により耐える。残る生命力はわずか一。

いよいよ命運尽きるか、という時。ベルスレイアは――不敵な笑みを深め、野蛮にも見えるほど口元を歪める。


「――さて、条件が揃ったわね」


 そう。正にこの状況こそ。ベルスレイアが望んだ展開であった。


 まず、ベルスレイアは生命力が低下することで恩恵を得られるスキルを複数所持している。讐闘気、新月、赤い月の三つ。

 このうち、讐闘気は受けたダメージを相手に返すスキル。つまり、ベルスレイアはここまでの間、ゴーレムにダメージを与え続けていた。


 そして新月は、生命力の低下に応じて与えるダメージを増加させる。ベルスレイアの場合は、百四十ものダメージを生み出す。

 ただし、発動確率はベルスレイアでも三分の一程度。


 最後に赤い月。こちらは攻撃力と魔法力を上昇させる。こちらは累積ダメージの分だけ任意の攻撃時に上昇させる。発動後、累積ダメージはリセットされる。

 そしてベルスレイアはこの戦闘中、赤い月を発動させてはいない。つまり――ベルスレイアの上昇値は二百八十にも達することになる。


 これに加え、単純に攻撃力を上昇させるスキルもベルスレイアは所持している。

 一つは剛闘気。攻撃力を、数値にして三割も上昇させるスキル。この上昇値は基礎攻撃力に影響する為、ベルスレイアの場合は三十九。莫大ではないが十分に意味のある数値。


 そしてもう一つが覚醒。このスキルは、最終的な攻撃力と魔法力を倍増させる。つまり、赤い月による上昇値、剛闘気による上昇値も倍増する。

 単純に言えば、ベルスレイアの最終的な攻撃力は八百九十八。そして魔法力は八百十四に到達する。


 さらに――ベルスレイアの場合は、武器は打槍である。その攻撃によるダメージ計算には、攻撃力と魔法力の合計値が使用される。その代わりに、被弾する側も防御力と抵抗力の合計値だけダメージを軽減するのだが。

 何にせよ。これらの計算値から導き出される単純な最終ダメージは、ゴーレムの防御性能も加味したところで千三百を超える。新月が発動した場合、千四百も超える。


 ゴーレムの生命力は最大でも千と少し。讐闘気やこれまでの殴り合いによる削りが影響し、現在は六百程度しか残っていない。

 つまり――ゴーレムを一撃で粉砕可能な破壊力をベルスレイアは発揮可能なのだ。


 この為に、ゴーレムと打ち合った。生命力を削り、自らの攻撃力を高めた。


「――次で、終わりにしてあげるわッ!」

 ベルスレイアは、吠えた。

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