6話 【沼のおじさん】は幼女
モンクの【琥珀】さんが来て数日後豪華絢爛な装備を纏った幼女が来店した。
その幼女は容姿もよく、ひと目でわかるほどの実力の持ち主だろう。
武器は片手剣と盾を持っている。
戦士、魔法戦士あたりだろうか?
幼女は店を見渡し、頷いている。
片手剣と盾のコーナーを見て回り
『いい武器が揃っておるな。』
と一言呟いた。
そのままこちらへ近づいてくる。
『お主がここの店主の【ガク】で間違いないか?』
なんだ?
可愛い声なのにオッサンみたいな話し方は?
!!!
幼女の名前を見てみると
【沼のおじさん】
は?
何だその名前は。
【沼のおじさん】ってどっかで聞いたことあるぞ?
どこだったか?と神妙な面持ちだったようで
『お主どうしたのじゃ?ワシの顔に何かついとるか?』
と聞いてきた。
『いや、なんでもないです。』
『でどうされました?』
『お主になワシの武器をこしらえて欲しいんじゃ。』
『片手剣と盾ですか?ちなみに職業は?』
『サマナーじゃよ。超攻撃的なサマナーじゃろ?』
あー。思い出した。
【琥珀】さんが来店されたあと【インフィニティ】のことを調べていたんだった。
あのクランのクラマスの名前が【沼のおじさん】だ。
この人【琥珀】さんのクランのクラマスだったのか。
『【インフィニティ】のクラマスさんですか?もしかして【琥珀】さんから聞いたのですか?』
『聞いたというよりのー。毎日しつこく聞いて、家に拉致して、半分監禁してのー。』
???
監禁?
犯罪じゃないかそれ?
『あ!大丈夫じゃぞ。幼馴染の女同士だからのー。』
『あんなステータスの高い武器を持ってるなんて羨ましいじゃろ?』
『ワシも欲しかったんじゃ。』
『で素材を渡せば作ってくれると聞いたのだが作ってくれるかの?』
『作りますけどその前に今使っている武器を見せていただけないでしょうか?』
『いいぞ。』
と言って、カウンター越しに片手剣と盾を置いた。
とてもキレイに手入れされていて、耐久度もほほ減っていない。
何度もメンテナンスをしているようだ。
これなら信用も出来る。
『わかりました。』
『作らせていただきますね。』
『良かったのじゃ。』
『で素材だが』
と言って
インベントリから何か選んでいる。
『この素材でどうじゃ?』
テーブルに出した素材がどれも1級品だった。
【輝く松明】
永遠に燃え続ける松明。
消えることはなく、水をかけても消えない。
【宝剣】
宝石が散りばめられた王族に献上する剣。
剣としても能力は高い。
売却すると、高級車1台は余裕で買える。
【ルーンの石版S】
謎の石版。
とてつもない力を秘めているが職人の技量で出る力が変わる。
【ゴッドゴートの革】
高難易度ダンジョンに出るゴッドゴートの革。
なにものも寄せ付けない力を持っており
状態異常が効かなく、魔法攻撃にも強い。
物理でしか倒すことのできないモンスターの高品質の革。
初めて見たものばかりだった。
『この4種類の素材で大丈夫かの?』
『【宝剣】は使いみちなくて困ってるんじゃよ。』
『この際に強くしてもらおうかと思っての。』
『アルケミストにのみ出来る、武器合成の力は素晴らしいからの。』
この人を敵に回さないほうがよさそうなのがひしひしと伝わってきた。
相手の情報知れる限り調べてきている。
ゴスロリの服を着た幼女から出ているとは思えない見えない圧力が空気を張り詰めさせる。
『どれもいい素材ですね。』
『今私が持てる力を使って最高のものを提供できるようにさせていただきますね。』
『少しお待ちいただけますでしょうか?』
『わかったのじゃ。』
私が素材を持ってたたら場へ向かおうとすると店の扉が開いた。
3人の男性が入ってきた。
店に入るなり
店の装備品をみて
ヒソヒソと
『これ全て盗品らしいぜ』
『そうなのか?俺はチートで作った武器って聞いたぜ』
『高額な値段で販売してる店らしい』
とニヤニヤしながら言っている。
最近このような客が増えた。
『私』は素材を一度テーブルに置いて
幼女に少しお待ちくださいねと声をかける。
『すみません。他のお客さんもいますのでご迷惑をおかけするようなことはお辞めください。』
すると
1人の戦士風の男が
『ハハハ』
『丁寧に言って偽善者振りやがって』
『俺らは騙されねぇからな』
『お前なんてこのゲームやめちまえよ』
『目障りなんだよ!』
残りの二人が合わせたかのように
『やめろー、やめろー』とコールをし始める。
『すみませんが営業の妨害になりますのでお帰りください。』
ときっぱり伝えた。
幼女には大変申し訳無い思いをさせてしまった。
幼女に近寄り
『もう少しお待ちくださいね。』
『嫌なところ見せてスミマセンでした。』
『いやいやワシは大丈夫じゃよ』
すると戦士風の男が
『おい、無視してんじゃねーよー。』
『お前がやめないって言うなら俺のクランに言って全員で潰しにかかってやるよ。』
『お前さ【インフィニティ】っていうクラン聞いたことないか?』
『知らねぇぞ。俺は【インフィニティ】のグラハムっていうもんだ。』
【インフィニティ】のグラハム?
【インフィニティ】??
それって?
と困惑していると
幼女が椅子から降りて
グラハムに近づいた。
『おい、お前』
先程の可愛らしい声から一遍
鋭く冷たい氷柱のような図太さも感じる声に変わっていた。
グラハムという男の後ろにいた取り巻き2人の一人の盗賊風の男が
『なんだ?お前きめぇ格好して』
『子どもは口ハチャマないでくださいねーw』
ゲスく下っ端感のような声で笑っている。
グラハムをみると完全に顔が真っ青になり固まっている。
なんで??という顔をしている。
グラハムが先程とは打って変わって弱々しい声で
『クラマスどうしてここへ?』
取り巻きの2人が驚いている。
声も出ないのか口をパクパクさせている。
『グラハムこそなにをしているのじゃ?』
『お前にとってこの店へいやがらせした意図をしっかり聞かせて欲しいの』
『しっかり理由があるんじゃろうな?』
グラハムは焦っているようで
言葉がままにならない。
『えっ!?あ、あ。!!!』
『ガクさんその素材たちは預けるからの』
『次ワシが来るまでに作っていて欲しいわい。』
『とりあえずうちのアホが迷惑かけていたようですまんかったの。』
『クラマスとして謝らせて頂く。』と言って深々と頭を下げる。
幼女はデカイ戦士風の男【グラハム】を引きずりながら店へ出ていく。
取り巻きの男たちは何が起こったかわからず
その場を立ち尽くしていたが
その後何も言わずに出ていった。