2話 玉鋼の暗器とくのいち
とある日
店のドアが開くベルが鳴る。
来店してきたのは女性の忍者。
いわゆる、くのいちってやつだ。
彼女は真っ先にカウンターに座る私のところへ来たのだ。
『すみません。ここで一番強い武器。特に暗器がほしいのですがなにかありませんか?』
と訪ねてきた。
『暗器はダガーのコーナーにいくつか置かせていただいてます。
どのような能力のものがほしいかわからないので一度ご自身の目で拝見して下さい。
素材持って来て下さったらある程度要望に答えた武器も作ります』と彼女に伝えた。
彼女に伝えた直後明らかに憐れむような視線と愛想笑いをしてきた。
職業を見たようだ。
『私』に
『いいものはなさそうです。』と言って帰ろうとしていた。
『そうですか。またご来店お待ちしております』と彼女に告げる。
彼女は帰る前にダガーコーナーを軽く見て帰ろうとしたが、
一本の暗器を手に取り、能力値を見たようだ。
明らかに驚いた顔をしている。
彼女の目に止まった武器は
【暗器 光の玉鋼】
というアサシンや忍者などの職業の武器。
鋼を高純度で精製するとできる玉鋼と鉱光石という光属性の属性付与を持つ石を混ぜて作った武器。
『すみません。これっていくらですか?』
と彼女は聞いてきた。
欲しいようだ。
『少し値が張るのですが22万円ですね。どちらも高純度の素材ですので。』
と彼女に伝える。
『持ち合わせはある。今の武器を頭金にしよう。』
今の武器を頭金??
今の武器を売る気か?
『すみません。これ買い取ってもらえませんか?』
というと彼女が出してきた武器
【暗器 骨喰】(ほねばみ)
対象者の装備している武具に当てると耐久力を落とす能力を持つ。
モンスターに対しては防御力を下げる効果がある。
すごい業物を彼女は今売ろうとしている。
ただ、この業物手入れがほぼされておらずボロボロだ。
『これ手入れし直したら、元の強さに戻りますよ?この武器売るのは勿体無いと思うのですが?』
『武器なんて消耗品なんで、悪くなったら買い換えればいいじゃないですか?』
『しかもこの武器見た目貧相なのよね。全体的に黒くて。』
『それに比べてこっちの武器はきれいだし。』
『お客さん。いや月猫さん。あなたにそれをお売りすることは出来ません。』
『当然買い取りもいたしません。』
『!!!』
『なんで売ってくれないのですか?利益を上げたいなら売るべきでしょう?』
『あなたみたいな何もできない職業は私達戦闘職のために武具を作ってればいいのですよ。』
『しかもアルケミストなんてクソ職業じゃないですか。あなた変わり者なんですね。』
『こんな店二度と来ません。』
『どうせ、この武器。幻惑かなにかで本当はまがい物なんでしょうね。』
と言って扉をあけて出ていった。
1つ1つのものに対して消耗品として扱っている人に私の作った大切な武器をお渡しすることは出来ないと思っている。
あの【暗器 骨喰】打ち直しして手入れしたら今より強くなるのに。
多分あの人はどこ行っても買えないだろうな。