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同級生と…

作者: 尚文産商堂

プロローグ


公立高校2年生12月。なにもなく、ここまで平凡な人生を描いて来ていた僕だったが、彼女も、当然のように欲しかった。しかし、ここまで平凡な僕を好きになってくれる人が果たしているのだろうか。高校を見回して、片想いの女子いるが、それっきりだった。考えてみれば、僕は、平凡すぎて目立つ所がなかっただけなのかも知れない。そして、その日が訪れた。その日、僕は英語の早朝補習の為に、朝早く学校に出発した。朝と言う事もあり、相当寒く感じていた僕は、コートを制服の上から羽織って、学校に到着した。


第1章 助けた人は…


僕は、その時、階段を登っていた。その数段上を、女子が歩いていた。僕は、何も考えずに、ただ、階段を上がっていた。その時、段を踏み外して、さらに足を滑らして、その女子がこちら側に倒れてきた。

「うぉっ!」

びっくりした僕だったが、彼女の倒れて来る背中を両腕で受け止めた。

「だ、だれ?」

ずっと、一人で階段を上がっていたと思っていたらしい。突然、背中を受け止められて、動揺していた。

「自分だよ」

「ああ、なんだ…案芸憲等(あんげいけんとう)君ね」

彼女は、それから、顔を赤らめながら礼を言って、そのまま走って教室に入った。周りには、僕と彼女だけしかいなかった。


その日の放課後。明日からは、土曜日から月曜日まで、3連休で、さらに、先生達も学校からいなくなると言う事になっていた。その上、この2学期で最後の部活動の日にもなっていたため、僕は、体育館で、バスケットボール部のみんなを束ねる部長をしながら、すぐ横で、バレー部の副部長をしている彼女を見ていた。


そして、部活動が終わって、体育館のステージの袖の所で着替え終わった僕は、家に帰ろうと、体育館から出ようとした時、物音が、体育館の中に作られている倉庫から聞こえてきた。それは、女子の哀願している声だった。

「おねがい…おねがいだから……もうしないで………」

僕は、とりあえず見に行くことにした。すると、先生達から目を付けられている、この高校きっての不良グループが、体育館倉庫の中で、女子を夏服の体操服だけにして、殴ったりけったりしているところだった。女子の顔は、彼らに邪魔されて見えなかった。さらに、不良グループの各々の手には、麻縄や鞭などを持っていた。その上、僕が唖然としている目の前で、僕に気付いていないようで、女子の服を脱がしにかかった。僕は、思わず声をあげていた。

「やめろよ!泣いてるじゃないか!」

「あ〜、だれだよ、おめーは」

「俺らの楽しみ、邪魔しよう、って言う事か?」

「上等や。おめー、ちょっと遊んだろうやんか」

僕は、全力を出して、彼らに立ち向かったが、彼らと鍛え方が違ったらしく、コテンパンにやられた。そして、彼女とともに、前身動けないように縄で縛られて、登下校に使っているカバンを僕達と一緒に体育館倉庫の中に入れて、そのまま鍵を閉めて、どこかに笑いながら去って行った。


とても冷たい、器械体操用のマットの上で彼女は僕と背中合わせになるようにして、転がらされていた。泣いているようだった。僕は、声をかけてみた。

「…大丈夫?」

彼女の体は過剰に反応して、ビクンとなった。そして、震える声で言った。

「もしかして、案芸君?」

「え?なんで僕の名前が分かったの?」

「だって、朝、助けてくれたじゃない。もしかして、忘れたの?」

「えっと……そう言えば、そんなこともしたような、しなかったような…」

「最低ね。だからこれまで彼女が作れなかったのよ」

僕は、彼女と話しているうちに、彼女が誰か確信を持った。そして、名前を呼んでみた。

「…なあ、鱈場神野子(たらばかのこ)

「なに?」

彼女は、声は震えていなかった。

「これから、どうなるんだろうな」

「私達?分からないわ。だって、彼らが帰ってくる事はないと思うし、先生達は、これから3日間は休むし、それに、こんなところに私達が縄で縛られて閉じ込められているなんて誰も想像しないと思うわ」

「縛られている事自体は、問題じゃないんだ」

僕は、忍者にあこがれて会得した縄抜けをした。彼女は、僕が縄を自力でほどくのを背中で感じていたらしい。僕を縛っていた全部の縄をほどき終わると、その縄をどこかに追いやって彼女の縄をほどき出した。

「ありがとう…」

彼女は、手首をこすりながら礼を言った。

「礼を言うのはまだ早いと思うよ。なにせ、ここから出て行かないといけないんだからね」

僕は、カバンを確認した。携帯電話はもって行かれており、さらに、財布もなくなっていた。だが、そのほかはそのまま残っていた。そのおかげで、僕達は1枚のコートを二人で着る事になった。さらに、彼女は僕の冬服の体操服を夏服の体操服の上から着ることによって、そのコートを、彼女だけが着ても問題がないようにした。

「あたたかいね」

「そうだな」

しかし、結局は、コートは二人で着る事にした。その方が暖かいからだった。僕自身は、そんな事をする事自体が始めてだったので、内心、どうすればいいかわからなくて焦っていたが、彼女は、そんな事を思わずに、にこやかにしていた。

「ねえ、案芸君」

「ん?どうした?」

突然、彼女が話しかけてきた。真っ暗な空間に、声だけが響いた。

「…眠くなってきたね」

「そっか…」

僕は、そう言うしかなかった。時間的には、午後の8時半。何もする事がない以上、寝るしかなくなるのだった。僕達は、そのまま、壁にもたれて、眠った。


第2章 助けられてから…


翌日、朝起きると、お腹が空いている事に気付いた。僕は、彼女が起きるまでぼんやりと待った。


「ふぇ……クション!」

彼女は、くしゃみで起きたようだった。

「大丈夫か?」

「うん…大丈夫…」

その時、僕達は同時にお腹が鳴った。二人とも、顔を合わせて笑った。

「そう言えば……」

僕は、コートを脱ぐと、カバンの中を探った。すると、「カロリーメイト」チョコレート味が、そのまま残っていた。さらに、ペットボトルに入ったミネラルウォーターも、1Lの半分ぐらいが残っていた。

「これで、どうにか過ごさないといけないな」

「大丈夫じゃないかな?でも、このカロリーメイトで、今日を含めて2日間がんばらないといけないんだね」

「その前に、きっと助けが来てくれると思うね。母さんとかが心配してそうだから」

「そうだよね…」

彼女は、僕の顔をじっとみていた。

「なんかついてる?」

「ううん、別に」

彼女は、そう言うと、立ち上がって言った。

「別に何も無いよ。外からの光がほとんど入ってこないこの体育館倉庫で、男女が1組。これがある種類のゲームとかになると…」

「やった事でもありそうな口ぶりだな」

彼女は、慌てたように言い返した。

「そ、そんな事やってないわよ!」

そのまま、扉に向かって、ちょっといじっていたようだったが、最終的にあきらめて、再び戻って座りこんだ。

「…私達、助かるのかな…」

「さっきも言ったけど、助かるって。大丈夫。何も心配することないって」

僕は、彼女を励ますことにした。

「そうだよね、助かる…よね?」

彼女は、疑問系で聞いてきた。僕自身、助かる保障などどこにもなかったが、それでも、元気よく助かると言うことを意味する言葉を答えた。


それから、何時間も経った時、不意に、誰かが体育館に入ってくる音が聞こえてきた。それは、彼らではなかった。


こうして、僕達は、39時間ぶりに家に帰ってきた。家に返される前に、ちょっとだけ点滴を受けたが、それだけで済んだ。


エピローグ


それからと言うもの、彼女は、なぜか僕に頻繁に電話をかけはじめた。大体は、なんとなくと答えていたが、なんとなくだったら電話などする意味がないので、何か裏があるに違いないと思っていた。


3年生に無事に進級し、5月に入ろうとしていた時。僕は、彼女に呼ばれた。放課後、体育館裏、彼女と二人きりと来れば、大体察しがついた。


「何の用だ?」

僕は、少しばかり強い風が吹いているさなか、彼女の姿を認めて、言った。

「あのね、あの時のお礼をまだしてなかったなと思って…」

「あの時?ああ、体育館倉庫に閉じ込められた時か。そのあとが大変だったからな。不良グループは、監禁罪でみんな逮捕。それに、お前を殴ったりけったりした罪でも有罪が確定しそうだし」

「それでね…受け取って欲しいの」

「何を?」

僕は、内心分かっていたが、それでも一応聞いてみた。

「私の気持ち…」

それから、1回下を向いて、風が吹きやんでから、言った。

「私、あなたの事が好きになったみたいです」

彼女の目には、僕しか見えていなかったようだ。突然降って来た、桜の雨にも気付かずに、僕をみていたようだった。僕は、そうなる事を予期していたので、言った。

「ああ、いいよ。一生世話をしてやるよ」

彼女は、とても喜んだ顔になり、飛びついてきた。

「ありがと!」

その瞬間、周りからどこともなく、人が出てきた。それは、僕達の友人だった。

「やれやれ、ようやく決着がついたか」

「結構時間がかかったけど、これでよかったんだよな」

「おめでとうね、神野子ちゃん!」

彼らに驚いた僕達だったが、普通に聞いてみた。

「どっからわいて来たんだよ。お前達は」

「あちこちに隠れていたんだよ。気配を消すのが大変だったんだからな。感謝しろよ」

「誰が感謝なんかするか!」

そう言いながらも、僕達は、笑い会っていた。こうして、僕にも彼女が出来た。


それから1週間後、不良グループには、全員有罪判決が言い渡され、即日上告したという話が入ってきた。僕達は、そのあと、高校を卒業し、大学に進学した。進学後も、付き合いは終わらずに、20歳になってから、結婚をした。その後の展開は、読者の皆さんの思い思いに描いて欲しい。ただ、これだけは伝えておきたい。今でも、僕達は幸せだと……

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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読いたしました。 全体的な流れとかは僕の好みで良かったw 細かい話をすると文章作法が、まぁ……何と言うか。 三点リーダは二つ以上にして欲しいなとか句点(これ→、)が多くて話としてはテンポが…
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