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だから君を親友と呼ぶ

 待ち合わせのカフェテリアに行くと、慧はいつかと同じようにアイスコーヒーを飲んでいた。

 軽く手を上げて合図すれば、彼女はすぐに気づいて迎え入れてくれる。


「よぉ、慧」


「お待たせー。ごめんねー、突然」


「いいさ。こっちも暇だったからな。それで、頼みってなんだ?」

 

 二人が正面に腰を下ろすと、テーブルにカップを戻した慧がさっそく切り出してきた。


 ここは主催者である玲奈が話すべきだろうが、その前に海人が口を開いた。慧は周囲とあまり慣れ合わないが、基本的に人がいい。先に逃げ道を用意してあげた方がいいと思ったのだ。


「あのな、先に言っとくけど断ってもいいからな?」


「うん? あたしが断りそうなことなのか?」


 僅かに首を傾げる慧に深く頷きそうになった。そりゃそうだ。乗り気じゃない様子を見せていた彼女を巻き込もうというのだから躊躇いもする。しかし、そんな海人を遮るように、玲奈が話し出す。


「実はねー、今日六時から合コンがあるんだけど、突然キャンセルされちゃって、女の子が一人足りないの。お願いします! 今日だけでいいの。慧、出てくれない?」


 手を合わせて怜奈が頼む。縋るような目を向けられた慧は、考えるようにアイスコーヒーを一口飲んだ。海人は見守る役に徹して、あえて口出ししないことにした。

 

 合コンはしたい。ものすごくしたい。だけど、親友を犠牲にしてまでしようとは思わなかった。海人も優男と評されようとも男なのだ。口を真一文字に結んで黙っていると、慧がこっちをちらりと流し見た。その仕草を不思議に思えば、彼女の顔に小さな笑みが浮かぶ。


「……いいぞ」


「えっ? えぇ!?」


「ほんとっ!? 慧、ほんとに合コンに出てくれるの?」


 予想外の返事に、海人と玲奈は驚きを露にした。まさか、こんなにすんなりと了承してくれるとは、二人も思っていなかったのだ。


 慧は穏やかな表情で頷いてくれる。


「あぁ。玲奈がこういうことであたしを頼ってきたのは始めてだろう? 友達だからな、困ってるなら助けるさ」


「ありがとーっ! もう、慧ったら愛してるわ!! アタシあんたが大好きよー」


 テーブルを乗り越えるように飛びついた玲奈を受け止めて、慧が静かに笑う。綺麗な微笑みを目の当たりにして、海人は無性に心配になってきた。


「なぁ、慧。本当にいいのか? 無理してない?」


「大丈夫だ。それに、あたしが出なければ、あんたも合コンに行けなくなるんだろ? あんなに楽しみにしてたじゃないか」


「慧……ちくしょう! なんて良い奴っ!! オレもお前が大好きだ!」


 思いやり溢れる言葉に胸を打たれて、海人も思わず慧に飛びついた。間に挟まれた玲奈が悲鳴を上げるが、放さない。


 ふざけながらぎゅうぎゅう抱きしめていると、周囲から笑い声が聞こえてくる。海人達も思わず笑いながら、暫く不格好な体勢で抱きしめ合っていた。



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