ジョイントスプラッター
設定が雑な上に、途中から蛇足です。
春。
それは別れの季節。と見せかけて出合いの季節。
僕こと雪花 那郎は、親元を離れてこの富士林市に越してきた次第であった。
「わーあれがふじばやししかー。」
学校と、その併設の寮と、あと何でも揃うショッピングモールしかない小さな都市だが、一度市に入れば充実すぎる設備ゆえ、出るには色々と手続きが必要らしい。
「まあしばらく実家に戻る気はないからいいけどね…っていうか遠いなあ」
読み返せば分かるが、まだ富士林市が見えるだけで着いてなどいなかった。
「なんでバスが山の中までしかないんだよ…」
そんな感じで山道を歩くこと1時間。
「つ…着いた…」
「雪花那郎さんですね。手続きは以上です。ではよい学生生活を。」
ということで晴れて今日から、ここでの生活が始まる…。
僕はひとまず荷物を置くため、寮に来ていた。
「私がここの主的存在の、仲居です」
「えっと、旅館とかの…?」
「そっちの仲居ではないですが、とにかく疲れたでしょう。部屋を案内しますね」
ザッザッザッ…
「ああ疲労困憊…。苦労とはこうして積み重ねるものなんだなあ」
しみじみと柄にもなく感傷に浸っていたが、学校は明日からである。とくにすることもないので、学校の下見とかすることにした。
「あれが女子寮か」
なんだか目的が変わっているように見えるが、あくまで学校の下見の途中なので、全然問題ないだろう。
そして歩くこと5分。
「うわちかっ」
イギリス人もびっくりの近さの所にあったのは、これから高校2年間を共にする学び舎である「公立紀宝ヶ嶺学園」だった。
「今日はまだ前日だから、やっぱ誰もいないか。」
時刻は夕方。教室はもちろん、廊下にはひとっこひとりいなかった。
「えーっと、2年2組は…あれ?」
入学案内とともにもらった校内の地図によると、音楽室やパソコン室は当然として、弓道部、吹奏楽部、軽音楽部、ごらく部など、さまざまな部室もあるらしかった。
「2年2組…2年2組…隣の2号館か」
自分の教室を探すこと10分。
「まよった」
噂には聞いていたが、この学園広すぎ!と心の中で言ったつもりだったのだが、背後から来た人には見透かされていたようだった。
「あなた転入生ね?」
「!?」
急に気配をあらわにされ、ついたじろいでしまった。
「そんなに構えることないじゃない」
「あ、すみません…あなたは?」
「私は生徒会長の白雪よ」
(生徒会長?なぜこんなところに…あっ学校だからか。いや今日はまだ春休みのはず…あ、生徒会業務かな?ということは…)と僕は思考時間0.3秒で結論と返答を巡らせた。
「おひとりなんですね」
「まあそうね。雑務が終わったから帰るところよ」
「あっそうなんですねじゃまた」
「待ちなさい」
足早に去る作戦は失敗だった。
「あなた…」
ドキドキドキドキドキドキドキドキ
「明日からここで学ぶのよね?何か分からないことがあったら何でも聞いて。よろしくお願いね?」
「え?…あ、はい」
握手を求められた。なんだ勝手に学校入ったことを咎めた訳じゃないのか…。良かった良かった。
「えっと、そのときはよろしくお願いします」
無難に返答し、握手したそのときだった。思えばこの時、緊張して力が入っていたのかもしれない。
ベキッ
「え…?」
手に違和感を感じて視線を下げると、彼女の右手はありえない方向に折れていた。
「ひっ…!?う、うわあああああああヴぇjgぐおmd」
叫びつつ2、3歩後ろに下がると、折れた右手は鋭利な刃物へと変化し、僕は喉をかっ切られていた。
「…?!!」
さらに彼女の首は時速44kmの速度で右に78度曲がり、左目をビー玉のごとく飛ばしてきたかと思うと、不気味に笑いながら後ろに足を一歩も動かすことなくスライド移動していった。
僕の意識は、そこで切れた。
春。
それは出合いの季節。
僕こと雪花 那郎は、親元を離れてこの富士林市に越してきた次第であった。
「わーあれがふじばやししかー…?」
なんだかデジャヴな気もするが、構わず続けた。
学校と併設の寮と何でも揃うショッピングモールしかない小さな都市だが、一度市に入れば充実すぎる設備ゆえ、出るには色々と手続きが必要らしい。
「まあしばらく実家に戻る気はないからいいけどね…っていうか遠いなあ」
そんな感じで山道を歩くこと1時間。
「つ…着いた…」
「雪花那郎さんですね。手続きは以上です。ではよい学生生活を。」
ということで晴れて今日から、ここでの生活が始まる…。
僕はひとまず荷物を寮に置き、そして歩くこと5分。
「うわちかっ」
パメリヤ人もびっくりの近さの所にあったのは、これから高校2年間を共にする学び舎である「公立紀宝ヶ嶺学園」だった。
「今日はまだ前日だから、やっぱ誰もいないか。」
時刻は夕方。教室はもちろん、廊下にはひとっこひとりいなかった。
そんで自分の教室を探すこと10分。
「迷った」
噂には聞いていたが、この学園広すぎ!と思っていたら、気配がした。
「あなた転入生ね?」
「!?」
ついたじろいでしまった。表情がこわばる。態度が顔に出たようだ。
「そんなに構えることないじゃない」
「あ、すみません…あなたは?」
「私は生徒会長の白雪よ」
なぜだろう…聞き覚えがある。
「えっと、おひとりなんですね」
「まあそうね。雑務が終わったから帰るところよ」
僕は、直感で逃げようと思った。
「あっそうなんですねじゃまた」
「待ちなさい」
足早に去る作戦は失敗だった。
「あなた…」
ドキドキドキドキドキ
「明日からここで学ぶのよね?何か分からないことがあったら何でも聞いて。」
「え?…あ、はい」
握手を求められた。なんだ勝手に学校入ったことを咎めた訳じゃないのか…。良かった良かった。
「えっと、そのときはよr」
「下がれ!」
フワッ
遠くから声が聞こえたかと思うと、首根っこをつかまれ体は後方に投げ出されていた。
「あら…みるねさん。あなたは毎度生徒会の邪魔をするのね」
「それはこちらのセリフだ。…行くぞ、少年」
「え?…あ、ちょっと!」
ズルズルズル。また首根っこをつかまれたと思うと、いきなり現れた人に座ったまま引っ張られていた。
生徒会長はずっと、こちらを見ていた。
「で、誰ですかいきなり!」
「手荒な真似をした無礼は詫びよう。私は小牧みるね。そしてこいつは相棒の花月百式だ」
「え、はあ」
刀持ってるよこの人。ヤバイよマジヤバイ。こんな人が同じ学校にいるのか。
「端的に言うと、彼女は危険なんだ。語彙力が貧弱ですまないが、それ以外に彼女…白雪を表現する言葉を持たない」
つまり危ないのか。なるほど。まだ理解が追い付いていない僕だった。
「彼女は骨粗鬆症というか、関節の耐荷重が文字通り豆腐でな」
果汁が豆腐?ああ絹ごし…いや木綿かな。
「おい聞いているのかっ」
「やだなあ聞いてますよ、関節的に豆腐が木綿なんですよね」
「…少し落ち着こうか」
「すみません」
落ち着いて茶でもしばき、話を再開した。
「…つまり関節がポ○キー並みに弱いと」
「そういうことだ。足に関してはこれに限らないが」
「そんなんでよく会長が務まりますね…」
「それについては…副会長さんのサポートが大きいだろう」
「へえ」
「私とて何度辛酸苦汁入り煮え湯を飲まされたか分からない。去年、彼女が生徒会長になる前…彼女と私は同じクラスだったんだ。握手から始まり体育の組体操、学食のトレー運び、起立しての音読や突然の転倒に至るまで落ち着ける時はなかった」
「折れてからはどうしたんですか?」
「最初は戸惑っていたが、指摘しても自分では治せないらしく、私が治すしかなかった。誰かに助けを求めても叫ぶか困惑するだけで、役に立たない。まるで傍観者だ」
「…」
「彼女は近くで大きな音を出されるのを嫌った。遠くならまだいい。近くで出された日にはもれなく皆殺しだった。誰かがいたずらで非常ベルを鳴らした時には、学外にまで殺戮が広がり、鎮圧までに要した時間は実に17時間に及んだ」
「大変だったんですね」
同情するつもりはないが、ついそんな事を言ってしまった。
「ああ。そこでだ、きみには協力してもらいたいんだ」
「へ?」
「ところで君の名前はなんと言うんだ?」
「せつかなろうです」
「漢字がわからないな。ちょっとここに書いてくれ」
「えーっと、雪花那郎…ハッ!?」
「ようこそ、保身部へ」
次の日。会長の挨拶と共に始業式は無事に終わり、僕は2年2組へとやってきた。
「あら、昨日ぶりね」
「あ、どうも。…えっと、生徒会長さん」
同じクラスのようだ。
「白雪でいいわよ」
「お前ら席につけー」
何だかんだで自己紹介になった。
「…というわけで、雪花那郎です。一年間よろしくお願いいたします」
僕の席は窓側最後方だった。
「おっ隣さん!新入生同士よろしくな」
「あ、うん、よろしく」
「よろしくね雪花くん」
「よろしく」
パチパチパチパチ。なんだ、みんないい人じゃないか。…とホッとしたのもつかの間だった。
パチパチパチパチパチパチ
「…?」
「おーい誰だー、拍手長いぞ」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
花火?いや違う。
右前方を見ると、まるでシンバルを持った猿のオモチャのように拍手を続ける会長がいた。
「…先生」
その会長の右隣の席の男が、先生を一瞥する。
「わかった、行ってこい副会長」
副会長?じゃあ彼が…
「…はい」
彼は会長を軽々とお姫様だっこすると、保健室へと連れていった。その間、彼女の拍手が鳴り止むことはなかった。
「キャーッ!格好いいよね副会長さん!」
「わかるわかる、いいよねー」
「静かに。ほいだら一時間目を始める」
僕は放課後、保身部へ来ていた。
「む、来たか」
「あ、小牧さん…だけですか?」
「他の部員の存在は肉体と共に消滅したよ」
なんとも意味深な言い方だ。
「そうですか…よく廃部にならないですね」
「顧問がいい人でな。1年のときから良くしてくれているんだ」
「へえー。」
「さて…では対策会議を始める。まず会長の病だが、関節をジョイントと呼び、たびたび血飛沫が上がることからスプラッタを加えて…どうした」
選択肢だ。Bを選ぶ。
「いや、会長は悪い人ではないと思うんですよね…」
「君も見ただろ?彼女は危険なんだ。あ、どこへ行く!」
「僕、生徒会行ってきます」
ガチャ
「こんにちは」
生徒会室には会長だけいなかった。
「あの、会長は」
「姫なら学食問題を解決中だ。…なんだてめえは」
副会長がこちらを睨み付ける。怖い顔だ。
「えっと同じクラスの雪花なんですけど…」
「知らねえな。俺は人の名前を覚えらんねえんだ」
「そ、そうですか…失礼しました」
パタン。
「雪花か…女みてえな名前だ。気に食わねえ」
「えっと、学食だっけ」
ガヤガヤガヤガヤ。
一部のスペースに人だかりが出来ていた。
「なんの騒ぎです?会長」
「あ、雪花くん。実は…」
「おい、どういうことだよ!サバサンドなくなるってのはよお!?」
「ですから供給量が減ってる関係でですね」
「関係ねーだろ!うおー死んでやる!」
「この通り、マイナーなメニューが無くなるってもめてるの」
「ははあ」
あとの人達は群集心理に基づき集まったようだ。
「どうするんですかこの騒ぎ」
「もうすぐ着くと思うんだけどね…」
「ただいま戻りました」
「あ、おかえり会計ちゃん」
ビチビチビチ。
「ゴマサバ大漁です」
「馬鹿な…いやホントありがとう!これでまた食えるよ!」
こうして事態は収束したのだった。
なんだかんだで僕は生徒会に入ることになった。保身も大事だが、会長なら仲良くなれるのではないかと思ったからだ。…決して恋とか鯉とかではなく。
「おい庶務、チェック抜けてるぞゴラァ」
「あ、すみ…申し訳ないです」
会長の推薦あってか、無事当選したのでその名の通り雑務をこなしていく。
「今日はそれ終わったらゲーセン行くわよ!」
「えっ」
「ああ、国道近くのとこでうちの生徒がたむろしてるって奴か」
副会長が会長の名誉のため説明した。
「そうそれよ」
というわけでゲーセンにやってきた。
「16歳なので18時以降も居られるから、パーっと弾けちゃってもいいのよ二人とも」
大勢で行ってもしょうがないので、書記くんや会計ちゃんは帰ってもらった。なので三人だけ。
「仕事はどうした」
「待ってれば出るわよ。あ、ゾンビだ!ゾンビやろう!」
「ハァー…」
「はは…」
「バーンバーン!うわーそこ危ない!あヒル来てるヒル!宗くん(副会長)よけてよけてー!w」
楽しそうで何よりだ。ちょっと飲み物買ってこよ。
ドンッ
「あ…すみません」
「どこに目え付けてんだコノヤロー」
うわー出た!社会の不良品だ!
「おいこいつうちのガッコの奴じゃね?」
「お、本当だ。とりあえず背筋揺するか」
「うわー助けてー!」
ガシッ
「やめろ。カタギの人間に手え出すな」
「あ゛?なんだてめえは?」
「大丈夫雪花くん!?遅れてごめんね」
「紀宝ヶ峰学園生徒会だ。おとなしく投降しろ。さもなくばお前たちに未来はない」
「そうよ、ママにチクるわよ」
「うるせえ!女は下がってろ!」
ガッ
「あ」
ボキッ。
不良が会長の襟を強くつかむと、会長の首はいとも簡単に折れた。
「あああああ!?」
ベキッ
ぐしゃ
とても口じゃ言えない状況になっており、膝を擦りむいただけで具合が悪くなる僕は、血を見て卒倒したのだった。
知らない、天井。
「ここは…」
「あ、目が覚めた?」と言ってくれる人はいなかった。何を期待してるんだろう。
どうやら、学生寮にいるようだ。誰が運んだのだろう?
時刻は夜だった。眠れないので外に出る。少しだけ、夜景を見たい気分だ。
「おや…君か」
「小牧さん?なんでここに」
「…ちょっとな」
「…」
「…」
会話が弾まない。スーパーボールにでもすがりたい。
ここで選択肢だ。Bを選ぶ。
「…今日も保身部、行けなくてごめん」
「いいよ、生徒会じゃ仕方ない。安全は保証出来ないが、な」
無理矢理入部させた割には、がっつかない主義のようだ。
「ごもっとも…」
夜風に吹かれ、風邪を引かないうちに解散となった。
「おはようございまーす…はあねむい」
「だらしないわよ雪花くん!ところで昨日は大丈夫だった?」
「まったくだな。仮にも生徒会所属なのだから不良のひとりやふたりくらい牽制してもらわねば困る」
「はあ、大丈夫でs「ちょっと、雪花くんに当たらなくてもいいじゃない!」
「当たっているわけではない。注意しているだけだ」「同じよ!」
ギャーギャーワーワー。今日は一段と賑やかだなあ。
「えっと、誰だか知らないですけど、昨日は運んでもらってありがとうございます」
「ん?私たちは運んでないわよ」
「えっ」
「お前は気絶しただけだからな。おおかた救急隊員が大事をとらずに寮に返したのだろう。現実なら大事をとりまくるだろうがな」
そんな栄養じゃないんだから。
「(じゃあ誰だったんだろう…?まあ救急隊員ってことにしとくか)」
「さて、授業も二秒で終わったし、体育祭の打ち合わせをするわ」
あ、もうそんな季節か。夏休みも気づいたら終わってたし、早いなあ。
「ムカデ競争はなんか名前がキモいから廃止…あ、あとパン喰い競争も衛生面から考えて廃止ね」
うわあ是正の限りを尽くしてるなあ…。
「30人31脚をやるなら、早めに練習しないとですね」
「いえ、男女別だから15人16脚になると思うわ。…あれ?プログラムリストにない。書き加えましょう」
あ、そうなのか。こいつはいけねえ。
「お互いがんばりましょう、白雪会長」
「そうね!」
「…」
そしてしばらくは練習のため、部活もなく、放課後はひたすら練習する日々が続いたのだが。
「あ、ノート返さなきゃ…」
休み時間。小牧さんからノートを借りていたことを思い出した僕は、彼女のいる2年1組に行くことにした。
「同じクラスの人に借りるわけにいかないし、他のクラスに小牧さん以外の友達いないからなあ…」
などと誰かに言い訳を述べながら、2-1へ。
「小牧さn...」
彼女は窓際の二番目だった。窓の外に目を向けながら、考え事をしているようだ。
「あの」
「ん…ああ、ノートか。ありがとう」
「いえ、じゃ」
「待て」
「なんでしょう」
「嫌な予感がする。これを持っていけ」
「はあ…ん!?」
それはベレッタm84だった。
「ちょ、重い…!」
「しかるべき時まで隠せ」
「ええー…」
ひとまず持ち帰ることにした。
そして放課後。15人16脚の練習は大詰めを迎える。
「いちにー、いっちに」
「会長いいよなあ。好きな人とかいんのかな」
「佐庫…お前同じクラスに彼女いるだろ」
「ははっ、こいつぁいけねえ。さて練習練習…危ない!」
「え?何…」
女子の方を見ると、派手に転んだようだった。
「ということは、会長も…!?」
スタッ
「どうやら恐るべき事態が起きてしまったようだな」
「え、小牧さんどっから降りてきてんのっ」
「些細なことだ」
とか言ってるうちに、騒ぎは大きくなっていた。
「いたいよーつらいよー…」
「う゛う゛う゛う゛」
「本日も晴天也本日も晴天也」
「ゴマグラゾワニハアマコヒネコニ」
会長を中心に、ブリッジする者、イナ○◯アーする者、四足歩行する者、貞◯する者などが、こちらの様子を窺っていた。
「言語中枢がやられたか!どうやら20年前の惨劇が繰り返されようとしている…」
「ちょっとっ、こんなときに設定を追加しないで下さい!」
「当時の資料によると、ジョイントスプラッタは関節キスを通じて感染するらしい。感染力が弱いので余程のことがないと…と思ったが、なぜ封じられたはずの15人16脚が復活したんだろうな」
ダラダラ。あっこれは黙っといた方が良い奴だ…。
「小夜子!どうしてしまったんだ…!小夜子ー!!」
「あっ佐庫、バカ行くな!」
ギャアアアアアアアア
「なんてことだ…」
「君を救うためならヤサ◯人にだってなるぜー!!」
グワアアアアアアア
「…雪花、もう今しかない。ベレッタを使え。白雪を撃てば統制がとれなくなって沈静する」
「そんな!無理ですよ撃ったこともないのに」
「私だってない。箸より重いものは持てなくてな」
「刀持ってるでしょ!」
「これは肉弾戦に持ち込まれたときの最終手段なんだ!頼むもう君しかいない!世界を救ってくれ!!」
ドクンドクンドクンドクンドクン
選 択 肢 B 。
「…できない」
「おいっ!?血迷うな!」
武器を捨てて会長のもとへ走り寄る。
「会長ー!!」
ブリッジとイナ○◯アーの攻撃を避けつつ、会長の首と手首を正しい位置に治した。
「…やりやがった…雪花がやったぞー!」
ワアアアアアアアア。男子中から称賛を浴びた。
「お前はやってくれると信じてたぞ!女子みたいな名前だけど!」
「馬鹿野郎俺だって信じてたぜ!女子みたいな名前だけどな!」
僕は、やったのか…。
こうして体育祭本番も、そんな感じで無事に終わり一息ついたころ。外ではキャンプファイヤーが行われていた。(普通これは文化祭で行われるものだが、我が校では体育祭で行う)
リレーだけ出たので大して疲れていないが、保健室の前を通ったので一応寄っていく。
「…で、なんで15人16脚出なかったんだよ、宗」
保健室で横になっていた副会長に言及する。彼は練習のときからいなかった。
「その名で呼ぶな。…お前には関係のないことだ」
ちなみにカーテンの仕切りは当然あったが、そんなものは無意味だ。
「…だが、練習のときの騒動鎮圧の際の活躍は見事だったようだな。これまで優位に立っていたと思っていたが…お前ならライバルと認めてやってもいい」
「ライバル?なんのことだ」
「とぼけるのもいい加減にしろよ」
ピロリロリン。
「…お前のツラ見るのも飽きた。もう行け」
「あっそ…」
ガラガラ パタン
「あ、メールだ。会長から?」
「生徒会室で待ってます」
「会長ー」
会長は外でキャンプファイヤーが行われているのを、窓際で眺めていた。
「電気つけないんですか?」
「たまにはいいと思って、ね」
パチパチパチパチ。転入したての時の自己紹介の記憶がよみがえる。
「ダメですよ、目悪くなりますから」
カチッ。電気をつける。
「うん…」
「会長?」
「あ、あのね」
「はい」
「あ、お、お菓子食べる?」
「え、あはい」
ポテチを差し出される。
「あーん」
「えちょ…え?」
一瞬浮かれていたが、僕は見逃さなかった。彼女の手には、人間的な所作がなかったのだ。
思わず彼女の手首をつかむ。
「せ、雪花くん?」
「やっぱり…」
彼女の手は、人間なら誰しも起こる微かなふるえがなかった。
「(人間じゃない…?)」
脈も、なかった。
逆になぜ人間だと思っていたのだろう。
血が付いた壁や床が翌日には元通りになっていたことに、なぜ疑問を抱かなかったのだろう。
殺人を犯したものが、学生でいられる理由は?
ゲーセンで起きた事件が、ニュースにすらなっていない訳は?
「(副会長や小牧さんは、何か知っているのだろうか…?)」
しばし考え込んでいた僕に、声をかけようか悩んでいた会長であったが、ようやく決心したようだ。
「あ、あの…キャンプファイヤーって、男女で踊るじゃない?だからその、お…踊らないかなって…あ」
ピーッピーッ
「…ん、なんだ?」
突如会長から異音がしたかと思うと、立ったまま俯いてしまった。
「ラジエータに異常が見られました。自動で基地に戻ります」
ガシッ
彼女の進行方向にいる僕に突然抱きつき、そのまま運ばれてしまった。なんて怪力だ。
ういーん。あーれー…
学校の地下だろうか。基地とおぼしきそこは、暗くてじめじめしていた。
ゴポゴポゴポ
そこには副会長と、あと液体カプセルに本物の会長が居た。ただし全裸ではない。旧スク水を着ていた。
「なんで宗がいるんだ」
「それはこっちのセリフだ」
「…データが消えたから打ち込み直すの面倒なんで細かい設定は割愛するが、まあ早い話、この富士林市はうちの親父が作り上げた都市だ。娘のため、父は莫大な資産でこの都市を作り上げた」
本当の箱入り娘ってことか…親バカだなあ。
「私は技術者だったから、父の部下の力を借りつつ、姫に似たロボットを作った。見た目に凝りすぎて誤動作が多かったがな」
だからたまにおかしかったのか。
「そして姫のためこの学校の管理者を任された私は、彼女が寂しくないよう生徒も作り上げた。しかし唯一の手違いはお前とあの刀女という異分子が混入したことだ」
凄い勢いで回収してる…ていうか割愛してない。
ゴゴゴゴゴゴゴ
「なんぞっ!?」
「この計画は極秘だった。知られたからには、この都市は終わりだな…」
いや自分でくっちゃべってましたが。
「こうなれば、お前は生きて帰さん」
「横暴だ!」
「黙れ。もずくにしてやる」
その瞬間。
「オニイチャン」
ロボットの方の会長…姫が、副会長の宗に呼び掛けた。
「姫よ。すぐに済みます」
「オニイチャン」
「すべては貴方のお気に召すままに」
「オニイチャンオニイチャン…オニイチャンオニイ…チャン,オニイチャンオニイチャンオニイチャンオニイチャンオニイチャンオニイチャンオニイチャンオニイチャンオニイチャン」
バグはちめいてきだった。
「縺翫↓繝シ縺。縲√c繧薙?√≠繧翫′縺ィ縲√≧縲ゅ★縺」縺ィ隕句ョ医▲縺ヲ縺上l縺ヲ縲らァ∝暑驕斐>縺」縺ア縲√>縲√〒縺阪◆繧医?」(sjis→utf-8)
「あ…あ、、」
崩れていく。
「いや…だ…」
壊れていく…。
助けるべきか。否か。
選択肢、A。
「は、早く!液カプごと運ぶんだ!」
ガラガラ…
夏。
それは懐古の季節。
僕こと雪花 那郎は、親元を離れてこの富士林市に越してきた次第であった。
いや、正確には違う。都市の名称は変わってしまったが、学校と、その併設の寮と、あと何でも揃うショッピングモールしかない小さな都市だ。
「つ…着いた…」
「雪花那郎さんですね。手続きは以上です。ではよい学生生活を。にこっ」
晴れて今日から、ここでの生活が、始まる。
寮に荷物を置き、激近な学校の校舎を見て回る。
「おや?生徒会室だ」
妙に見覚えがある気がした。
「懐かしい…昔、庶務をしていたなあ。でもいつだったか思い出せない」
ガチャ
「あら?」
「あ…」
「初めまして。雪花くん」
「え?」
「あ…」
この人となら、恋をしたいと思った。
Bad End "B"
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