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第2章 身バレと契約 その4

 一方、そのころの王宮――

「どういうことだ、ユーグレット」

 黒髪の男――この国で身分的には2番目に偉い王太子であるグスタフ・ハイレンドンは側に控えている片眼鏡(モノクル)の男に尋ねた。

「そのままの意味だよ、グスタフ」

 灰銀色の長髪の男――グスタフの乳兄弟で、国王の従妹の子であり、将来の宰相候補のユーグレット・ミディアはある書類の束をグスタフに渡した。

「これを見てごらん。どうやら、数か月前に噂が流れていた、宰相に関しての横領について、お前は疑ってあの騎士を公爵家に入れたよな」

 ユーグレットはその片眼鏡を少し上げつつ、こめかみを押さえた。

「ああ」

 グスタフは、書類を見つつそう答えた。

ちょっとやばいかもな、と前置きし、続けた。

「宰相と宰相の派閥の貴族、その領地は全て公金横領についてシロだ」

 一枚の書類を見せつつ、赤い線で強調した部分を示した。その文字と数字の列を見た途端、グスタフの表情は渋くなった。

「本当か」

「ああ。本当だ。他の2派閥の貴族の内、それぞれの派閥の御三家と呼ばれる家までについても限りなくシロだ。クロであってもデトン公爵でなければ尻尾を掴ませられないだろうね」

 リンデン王国の地図と貴族年鑑を比べながらユーグレットは言った。

「そうだな。特に、ここ数年で目まぐるしい軍事の増強を行っている『山脈神』には気をつけねばならないな。そういえば、今日はここにいて良かったのか」

「ああ、構わない。家の用事と言っても、いい加減身を固めるための出会いをするために、デトン公爵家で開かれるガーデンパーティーに参加しろって言われていたけど、僕としてはグスタフと話をしている方が有益なんだよね」

 肩をすくめながら、ユーグレットは笑った。

「デトン公爵家か」

 そう言えば、今日だったなと、イェルクからの定期報告を思い出しながら、呟き、手元にあったカップを口に運んだ。

「ああ。そういえば、お前の初恋の女伯爵さんも参加するって言っていたらしいね」

 ユーグレットは書類を整理しながら、思い出したように言った。

「な」

 驚愕を表情に染めながら、じっとユーグレットを見つめた。

「いや、僕、思い出したの今だよ。しかも、グスタフ(王太子)がノコノコ出て行っちゃったら、楽しめないからね。腹の探り合いになるだけだよ」

 冷静にグスタフに突っ込み返したユーグレット。

「まあ、どうせ王宮茶会から始まる社交シーズンに彼女に会えるんだからさ」

 明らかに飼い主に逃げられた犬みたいになっているのが、次代の国王であると誰が信じるのか、と少し哀愁漂う王太子執務室であった。

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