第6話:死闘
6話目です。
いよいよ第1章も終盤戦です!!
「それで、具体的にはどうするの?」
リリンはジンに問いかける。
「ギルは、いや、アランは手強い相手だ。それに、詳しくは分からないが独自の魔法を持っている。1人でかかるわけにはいかない。協力して奴を撃退する。」
呼び名を変えたのは気持ちの変化からだろうか。
ジンは剣を構えたまま、まっすぐアランを見据える。
「単独プレーがお好きな剣士様に協力なんてできるの?」
「基本的にはおれが奴と斬り合う。お前は俺が離れた瞬間に魔法を打ち込め。基本的にはスピードのある魔法がいい。さっき撃ってた光の矢のやつだ。」
リリンの皮肉には耳を貸さずに淡々と話を進めるジン。
「仕方ないわね。簡単にやられないでよ。」
「…問題はあいつか。」
そう言ってエルザの方へ視線を移す。
攻撃魔法といい、魔法の障壁といい、かなり魔法が使えるようだ。アラン1人でも手一杯だと言うのにあれが戦いに参加すれば、こちらの分が悪くなる。そう思っていた矢先、
「エルザ、ここは俺1人でやる。お前は手を出すな。」
「大丈夫なのですか?」
「俺の強さは知っているだろう?」
そう言ってアランは一歩前へと進む。
「こちらとしては願っても無い展開だな。」
「相手は1人だけなのにこっちは2人ってなんか私達が悪役みたいじゃない?」
「そんなことを言っている暇があるなら、どうすれば足を引っ張らずに済むか考えておけ。」
「なっ…ちょっとさっきから人のことを足手まといみたいに言うのやめてくれる。こっちにだって秘策があるんだから!!」
「期待はしていないが、一応聞いてやる言ってみろ。」
リリンはジンの耳元で秘策を口にする。
ジンは少し考え込んだ後、口を開く。
「前言撤回だ。その策に乗ろう。」
「期待はしていないんじゃなかったの?」
リリンはここぞとばかりにジンの揚げ足を取ろうとする。
「基本的な立ち回りはさっき言った通りだ。隙を見てその作戦を奴に打ち込む。奴もそろそろ動き出す。俺が飛び込んだ後は上手くやれ。」
「上手くやれって。もっと具体的にーー」
リリンの言葉を聞かず、ジンはアランへと向かっていく。
「あーもう!!どうなっても知らないわよ!!」
ジンとアラン2人の刃が何度も交わる。剣術の腕はほぼ互角。リリンのサポートがある分、ジンの方が有利だろう。
「作戦会議は終わったか?名無し。」
「あぁ、お前はここで俺が倒す。そしてお前の目を覚まさしてやる。」
「生憎、俺はもとから正気だ。」
アランがジンへと強烈な蹴りを入れる。
ジンはそれをかわして、三歩ほど後ずさる。
「俺は近距離よりも中距離の方が得意でな。」
そう言ってアランは魔法の詠唱を始める。
「I am the shadow《我は影なり》…」
「させないわよ!!閃光魔導!!」
リリンの放った光の矢がアランへと襲いかかる。
「チッ…」
防ぐ事は出来るが、魔法の発動を止められてしまう。
「また邪魔をしてくれたな。ならばお前から始末する。」
そう言ってそのままリリンの方へと向かっていくが、その道をジンが阻む。
「邪魔をするな!!名無し!!」
アランは三本ほどの刃物のような暗器をジンへと投げつける。
それをジンが防いでいる間にアランはその横をすり抜ける。
「くっ…。そっちへ行ったぞ!!」
「わかってるわよ!!私を甘く見ないで!!」
そう言ってリリンは魔法の詠唱を始める。
「無駄だ。間に合わん。」
アランがリリンへと迫る。
「どうかしらね?まだわからないわよ。」
突如、アランの足元に魔法陣が出現する。
「閃光魔導罠!!」
「!!」
現れた魔法陣から無数の光の矢が放たれる。
だが、アランは冷静にこの罠を避ける。
天井へと放たれた光の矢が洞窟を穿つ。
そのままリリンへ攻撃を続けるアラン。
「万策尽きたな。おとなしく寝ていろ。」
リリンをアランの剣が襲う。
しかし、魔法の詠唱が間に合ったようだ。魔法が瞬時に発動する。
「移動魔導!!」
リリンの身体が瞬間的にアランの後ろへと移動する。
アランの剣は空を切る。
そのままアランから距離を置くリリン。
「転移魔法ですか…。かなりやりますねあの少女。」
エルザは1人、リリンの動きを称賛する。
「でも、あれだけ立て続けに魔法を使えば…しばらくは息切れですね。」
「はぁはぁ…」
エルザの予想通り、リリンは魔法の連続使用の反動で息を切らす。
「大丈夫か?」
「全然大丈夫よ…。これっぽっちも疲れてないんだから。」
リリンは強気な言葉を返すが、その表情には疲労が見える。
「一旦俺が奴を足止めする。何分止められるかはわからんが、その間、お前は魔力と体力の回復に専念しろ。」
「私のサポートがなかったら、あいつは絶対に魔法を使ってくるわよ。それでもいいの?」
「覚悟の上だ。だが、一つだけ、俺が叫んだら魔法を発動しろ。」
「わかった。死なないでよ。」
ジンの意図を察したリリンは小さく頷く。
そしてジンは再度、アランへと向かっていく。
「どうやら女の方は動けんらしいな。ならば見せてやろう。我が魔法を。」
「こい!!アラン!!」
「I am the shadow《我は影なり》…」
魔力の高まりによって、アランの周りの空気が震える。
「その身にしかと味わえ…。影魔法、黒影剣。」
アランがジンへと剣を振るう。すると、
「何!?」
アランの影が刃へと変わる。そしてそのままジンへと向かって無数の影の刃が伸びる。
「くそっ…」
何本もの刃がジンに襲いかかり、その身体を切り裂こうとする。
ジンはその刃を己の剣一本で防いでいく。
「何本まで防ぐことができるかな?」
一本、二本、三本、四本、五本…ジンは次々と迫る影を防ぐ。
防戦一方。こうなってはどうすることもできない。
防いだ刃が七本目に入った時、八本目の刃がジンの左の肩に突き刺さる。
「ぐっ…!?」
痛みで構えが崩れたところにもう一本、今度は右足へ。
「うがぁ!?」
「それ、次が来るぞ。特大のがな。」
アランは無数の刃を束ね一本の巨大な劔を作る。
「これで終わりにしてやる。死ね!!名無し!!」
劔がジンへと伸びる。これにやられれば、また万事休すだ。
「今だ!!」
ジンはリリンへ叫ぶ。
「移動魔導!!」
リリンが合図を受けて魔法を発動させる。
ジンの足元に魔法陣が出現する。そしてジンの身体は一気にアランのもとへ移動する。
だかそれでもアランまではまだ距離がある。
「無駄だ。お前の剣は俺には届かない。」
これだけ距離があれば、影を防御に回すことは可能だ。奴の攻撃を受け止め、その後とどめをさす。そう考えるアラン。
だが、
「私が届かせてみせる!!」
リリンはローズの立てた作戦を実行する。
本当は動きを封じてから使うんだけど、魔法を発動して動かない状態なら避けられないなず!!
ここでアランは気づく、自分の足元に水が満ちていることを。
「水構築魔導、そして…!!」
リリンは最後の力で魔法を発動させる。
「まさか!?」
作戦の意図に気づいたアラン。しかし、もう遅い。
ありがとう。ローズ。
そしてアランの足元に広がる魔法陣。
「雷電魔導!!!」
リリンの作った水場に電流が流れる。
「ぐぁぁぁぁ!?」
感電によってアランの動きが少し止まる。
そこへ、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ジンが残された力をすべてその一撃に込める。自分の友への想いとともに。
「うぉぉぉ!!名無し!!!!」
感電から抜け出した。アランはジンの渾身の一撃を剣で受け止める。
激しい金属の衝突音が起き、アランの剣が砕かれる。
そしてそのままジンの剣の刃がアランの身体を少し斬る。
「うぐっ…まっ、まだだ!!」
アランはジンの背後の影を操作して、攻撃をしようと試みる。
ジンの満身創痍の身体では避けることも叶わないだろう。
お前は俺が殺す。俺の勝ちだ。
もう少しでジンに影が届く。
そして、
ザシュッ
影が一つの身体を貫く。
だが、それはジンの体ではない。
影が貫いたのは少女の身体だった。
如何でしたか?
投稿を始めてした時からこれが書きたくてたまりませんでした。
自分的には結構お気に入りの話です。
今回もアドバイスなどなど募集してます。
それでは。