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ジンとリリンの世界冒険譚  作者: 星太郎
第1章:出会いそして冒険の始まり
4/24

第3話:少年は剣を握る

3話目です。

今回も短いですが、良ければどうぞ。

「ジン・マクレイン18歳。

 出身地は喧騒の国《メギド》。

 好きなもの不明。

 嫌いなもの不明。

 好きな女性のタイプも不明。

 身長176cm 体重60kg

 ノーグレスに来たのは1年前で、家族はいない。

 どうやら国の戦争で亡くなったらしいわ。

 剣術や体術は自分の身を守るために鍛えみたいね。

 集会所ギルドの仕事では主に討伐依頼をこなしているわ。

 他にはーーーー」


 ローズは運ばれて来たコーヒーを口にしながらジンについての情報を次々にリリンに伝える。


「家の主にコーヒー入れさせるってどう言うことなの?とんだお客様ね。」

「私のことを忘れてた罰よ。」

「確かにそうだけど。」


 そう言われては言い返せすことができない。

 リリンは話題を変える。


「ジンの出身地がメギドだっていうのには驚いたわ。そしてこんなに情報を持ってるあんたにもね。」

「このくらい情報屋としては当然よ。」


 ローズは当たり前という顔でコーヒーを啜る。


 喧騒の国《メギド》

 もう20年以上も内乱の続く国。当然国内の治安は最悪で、子供1人ではとても生き残ることはできないだろう。


「確かに闘い方は独学だって言ってたし、そんな物騒な国にいれば協調性もそりゃゼロでしょうね。」


 リリンは1人納得したように頷く。


「さてそろそろ本題に入りましょうか。」


 コーヒーを飲み終えたローズは話を進める。


「このままなんの作戦も立てずジンに挑めば、間違いなく負けるわ。あなたもわかってるでしょ?」

「そこは気合でなんとかなるかな〜って。」

「あなたが1人で旅に出た日には1日と経たずに死ぬでしょうね。」

「いや〜照れるな〜」

「褒めてないわよ。」


 ローズは呆れ顔でリリンを見つめる。


「本気でジンに勝ちたいなら作戦は必須よ。けどどうせあなたのことだから、開始と同時に魔法を打ち込むってことぐらいしか考えてないんでしょ。」

「うっ…」

「あら?図星?」

「だって、私そういうの考えるの苦手だし。」

「…そうだと思ってとりあえず今までの情報からある程度作戦は立ててきたわ。これなら絶対とは言えないけど勝ち目はまだあるわ。」

「えぇ!?本当!?」


 リリンは驚いて椅子から立ち上がる。

 そして満面の笑みでローズの手を握る。


「さすがよローズ!!もうあなたなしでは生きていけない!!」

「お役に立てて嬉しいわ。」


 ローズはリリンに優しく微笑む。

 だがそれを見たリリンの笑顔が固まる。

 リリンとローズは出会ってもう10年の付き合いになる。ゆえに、リリンは知っているのである、ローズが微笑んだ時には必ず何かがあると。


「あのねリリン…私の立てた作戦ね、あなたが習得してない魔法を使うの。ざっと3種類ほど。」


 その言葉にリリンは青ざめる。


「へぇ…じゃあその部分は変更しないとね。」

「ああその必要はないわよ。」


 そう言ってローズはリリンの前に1冊の分厚い辞書を置いた。


「大魔法大全集持ってきたから。」


 《大魔法大全集》

 古今東西のあらゆる魔法の説明や、その使用方法が書かれている。

 そのページは1000や2000などというものではない。

 つまりローズが言いたいのはここで覚えろということだ。


「でも今から1時間で覚えるのは無理な気がするな〜」

「大丈夫よ。あなたにはあれがあるでしょ。完全記憶能力が。」


 魔法とは詠唱文や体内の魔力を魔法へと還元する方法が各魔法によって違う。ゆえに一つの魔法を習得するのにも時間がかかるうえ、多くの魔法を習得するには膨大な記憶力がいる。普通の魔法使い達は幾多の反復練習を体に染み付くまで繰り返す。


 しかしリリンには完全記憶能力がある。

 完全記憶能力とは、一度見たこと、聞いたこと、実践したことその全て覚えることができるというものだ。

 この能力によってリリンは一度使用した魔法を瞬時に習得できる。

 だが、この能力にも欠点がある。幾ら瞬時に記憶できると言ってもリリンの魔力以上のものを使う魔法は覚えても使うことができない。さらに、あくまで脳の容量はそのままなので全ての魔法を覚えるなどもできない。なのでリリンは普段はこの能力を使っていない。


「嫌だー!!あれすごい疲れるんだもん。それを一気に3種類なんて無理よ!!時間に間に合っても私の脳のが破裂するって!!」

「安心しなさい。人はそんなに簡単には死なないわ。たぶんね。」

「今たぶんって言ったわね!!あんたも自信ないんでしょ!!」


 そんなリリンの訴えもローズには届かず、リリンは椅子に縛り付けられる。


「さぁ、ここからが勝負よ。頑張ってね。」


 そう言ってローズはまた微笑む。この女かなりのドSだ。

 かくして、リリンにとって地獄のような時間が始まる。

 

 ジンとの決闘まであと40分ーー





 さて、時を遡ること2時間前、1人の剣士がノーグレスから離れた大きな洞窟の中にいた。


 赤髪が特徴のこの剣士ジン・マクレインはリリンとの決闘を前に、集会所ギルドからの討伐依頼をこなしていた。


 この日の討伐対象は毒蜥蜴バジリスク

 強い即効性の毒を持つ魔物で、全長は大きいものなら人間の大人分にもなる。かなり手強い魔物だ。そんな危険な討伐任務に彼は1人で来ていた。

 理由は簡単だ。『足手まといはいらない。』

 ジンはそう言って複数人での討伐を断って来たのだ。


 ジンは1人で洞窟の中を探索していく。洞窟の天井には無数の穴が空いており、太陽の光が洞窟内を照らしているのであかりの心配はない。それでも1人で探索するには心もとない明るさだ。


 だがジンは顔色一つ変えずに奥へと進んでゆく。その表情からは、一片の緊張や恐怖心を感じさせない。


 コツコツコツーー


 ジンの歩く音だけが洞窟内にこだまする。

 ここはもともと採掘用の洞窟だったようだ。灯こそ付いていないが、洞窟の壁にはランプが等間隔に設置されている。採掘した鉱石を運び出すトロッコやレールもそのまま残されている。

 恐らくここに毒蜥蜴バジリスクが住み着いたのが原因で放棄されたのだろう。

 毒蜥蜴バジリスクが討伐されたらここはもう一度採掘場として利用されるのか、それとももうこのまま放置されるのか、

 だがジンとってはそんなことどうでもいい。

 ただ己の為だけにジンはこの依頼を受けたのだ。


 ジンの出身地は喧騒の国《メギド》。

 長らく内乱の続く国だ。子供でも己の身を守る術を持っている。


 ジンには両親の記憶はない。彼が幼いときに2人とも死んでしまったのだ。ジンは少年時代の大半を国の西の辺境にある孤児院で過ごした。辺境ということもあり、国の内乱はそこまでは届かなかった。


 しかし、ジンが8歳のとき、ジンの住む孤児院を野党が襲った。内乱で荒れた国内では衛兵なども機能しておらず、いたとしても辺境の地まで来るような者はいなかっただろう。野党はいわゆるひとさらいであり、孤児院の子供達を狙って孤児院を襲撃したのだ。


 そんな中、屋根裏に隠れていたジンだけが見つかることなく助かったのだ。屋根裏にいたジンが聞いたのは、野党の荒々しい叫び声と、孤児たちの悲鳴、そして自分が育ったこの場所が静かに壊れてゆく音だった。


 屋根裏から降りたジンが見たのは荒れに荒れた孤児院と一つの死体である。院長だ。院長は魔法を使うことができ、そこいらの野党などには負けないはずだ。ジンが見たのは死体の背中にあった無数の傷だった。明らかに致命傷だとわかるほどの。恐らく孤児たちを庇ってできた傷だろう。ジンはただ拳を握ることしかできなかった。


 ジンはそれから無我夢中で自分を鍛えていった。自分の無力さを呪いながら。ここは喧騒の国、強くなる方法などいくらでもある。


「もっと…もっと強く…」


 そうあの時からジンは心に誓ったのだった。







 そして現在、ジンは少し開けた空間に出た。


「これは…」


 そこには草食動物だと思われる死体があった。異臭はするが、まだ腐敗は進んではいない。そしてその横には一つの卵が置いてあった。ジンの膝までの大きさである。

 ここに何かがいるのは間違いないだろう。


毒蜥蜴バジリスクの巣か…近くにいるな。」


 もう少し周りを調べようとしたときだった。


 シュルル


 一つのの影がジンの目の前に現れた。

 爬虫類を連想させる細長い頭部に、鋭い爪のついた4本の手足、そして先端の尖った長い尻尾。そのシルエットはまさに蜥蜴だ。

 影に光が当たり、黄土色の鱗の覆われた体が姿を現わす。


 毒蜥蜴バジリスクだ。


「お出ましか。」


 ジンは腰にさしてあった剣を抜く。

 刀身が洞窟に差し込む光を反射して銀色に輝く。

 ジンは剣を構え、相手との間合いをはかる。

 毒蜥蜴バジリスクの爪は鋭く、人間ぐらいなら容易く骨まで切り裂くだろう。さらに牙と尻尾には即効性の高い神経毒がある。万が一毒が体に回れば、一歩も動けなくなり、お陀仏だ。

 それでもジンは臆することなく立ち向かう。


 そうあの時から少年は誓ったのだ。

 強くなると。

 大切なものを守るために。

 全ては、あの時の恩師の死に報いる為に。


 そして今日も少年は剣を握る。


というわけでリリンの能力とジンの過去についてのお話でした。

まだまだ初心者なので愛のある感想おまちしております。

ではまた。

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