第6話 告白
結局馬車を操作してくれてた御者に先にガルム土国に報告に行って貰い、その間盗賊を見張ることになった。
「なぁ、お前さん何者なんだ?」
エルバートがなんか聞いてきた。
「僕は勇者のおまけで召喚された少しばかり土魔法が得意な普通の男子学生ですが...」
「普通じゃないだろ!?さっきの魔力ドレインとか、あのゴーレムとか!」
「と、言われましても...」
「よし、じゃあスキルオーブを見せてくれ」
「え、まぁいいですけど...」
そういってスキルオーブに魔力を込めてからエルバートに渡す。
すると...
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土属性適正(絶)、自動再生小、魔力自動回復+、魔力ドレイン+、????
基本値1100
火:2
水:2
土:6
光&闇:0
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なぜか基本値上がってるし...
あとスキルも1個増えてる...
「基本値1100!?」
「「1100!?」」
「いやー、あはは...」
「土屋、お前...こんな規格外なステータスを持ってるやつを普通の人とは言わねぇよ...」
「ま、まぁ多分ですがこれ以上成長は見込めないんじゃないですかね。こんなステータスですし...」
いやいやまてまて、なんでスキルが増えてんだ。それに基本値って上がるものじゃないだろ。相変わらず????は見えないし、歴代の土の魔道士の普通がわかんないんだよな。
勇者の召喚は200年に一度くらいのペースらしいから前回の勇者召喚のことを知ってる人はいないし。
そんなことを考えていたら迎えの馬車と盗賊連行用の馬車が来た。
「土屋様と護衛の方達はこちらへどうぞ。」
「どうも。」
「「「...」」」
なんか空気が重い。俺のせいか?いや、でも俺何もしてない気が...ただ魔法つかってスキルオーブ見せただけ...だよね?
仕方ないからB級魔道書を読む。この世界に来てから本読んでばっかりだな...
なんかスラスラ頭に入ってくるんだよなぁ。これも魔法適性の力なのかな?
結局、ガルム土国に着くまで、全員一言も言葉を話さず、ページをめくる音だけが虚しく響いていた。
ーーーー
「うぉおおおお!土の勇者様だ!」
「悪い盗賊を倒してくれた土の勇者様!」
「土の勇者様!土の勇者様!」
...どうしてこうなった。俺はただ普通に馬車に乗ってガルム土国の門をくぐり、城下町で馬車から降りただけなのに。
なんだこの出迎えは!それ勇者勇者連呼してんじゃねーよ!俺は勇者でも何でもない唯のモブなの!!!
「あの盗賊のマークを見た時になんとなく嫌な予感がしたんだ...」
エルバートが馬車から降りてきてなんか言ってる。
「エルバートさん、何か知ってるんですか?」
「あぁ、多分だがあれはガルム土国を最近脅かしていた盗賊団"アースドラゴンズ"だ。」
ネーミングセンス...いや、なんでもない。異世界だもんな。
「それも、バルニアとの国境近くでしか商隊を狩らない上にアジトがなかなか見つからないからって大きく問題になってたらしい。」
「それを僕達がこの国に来るついでに倒してきたから...」
「お祭りムードってことだな。」
もしかして、三人が静かだったのって...
「あの、メイティさん?リネさん?」
「わ、私には無理、私には無理...」
「倒したのは土屋様、土屋様...土屋様...」
こうなることを予想してたからあんなに静かだったのね...やばいな、ガルム土国では行動を自重するつもりだったんだけど。
そう考えていいると、一人の兵士が走り寄ってくる。
「失礼します、土屋様でよろしいですか?」
「あ、はい。そうですけど。」
「王から、是非とも謁見して欲しいとのことで土屋様とその護衛の皆様方をお迎えに上がりました。ご同行をお願い致します。」
なんか言い回しが連行されるみたいだな。
そう思いながら皆の様子を見てみると、皆青ざめてる。それもそのはず、元々王族とコネを作りたいがために送り込まれたので、土の魔道士の護衛として活躍して、優秀だと知らしめた後に謁見をしようとしていた。なのに何も活躍出来ないまま、いきなり王に会え、と。
盗賊との戦いも俺が雑魚処理を任せなければ、というより魔力ドレインで全員の魔力を吸い取れば済んだ話なのだ。盗賊のアジトを見つけたのも俺だしね。
おっと自重、自重
多分行きたくないだろうけど、ここで俺だけを送り出したら印象が悪くなるとかで言い出せないんだろうなぁ。まぁ、彼女等の考えはだいたい見抜いてるからなんとも言えないんだけど...
ま、謁見するのは確定だよな。
「わかりました。今すぐ王様に謁見すればよろしいのですか?」
「出来るだけ早めが良いとのことです。」
「じゃあ、今すぐにでも行きましょうかね。ね、皆さん!」
「「「あ、はい...」」」
(((行きたくない!!!)))
大通りに馬車が止めてあった。それはもう立派な。
馬車の中に乗ってこれからどうしようかと考えているとメイティが話しかけてきた。
「あ、あの、土屋様!」
「...ど、どうかしましたか?」
馬車の中でいきなり大きな声で名前を呼ばれたのでびっくりした。
...とうとう何か言ってくるか?
「私は親から『隙があれば勇者様を狙え!』と言われて、この旅の護衛として加わりました。ですが、今回のように手柄を横取りしたいから来たという訳では無いのです!それに...えー...と」
うーん...知ってた事だしなぁ...あんまりきつく言うのも良くないし、それにどのみち俺1人じゃきついだろうからねぇ...
「えと...その......わ、わたくしは...」
「あ、あの...メイティさん?」
「つ、土屋様が好きなんです!一目見た時から!」
「えっ!?」
な、ナンダッテー...いや、いきなりすぎるだろ!どうしようか、いままで告白されたことなんてないからこういう時どうすれば...はっ!てかそこにさっきの兵士さんいるんですけど!?必死に目をそらしてるし...
どこだ!どこでフラグが建った!?いや、そうじゃない!えーっと...こういう時どうすれば...
「えっと...そういうのは...まだ僕はよくわかんなくて...」
よくわかんないじゃねーよ、俺!動揺しすぎだろ!いや、待て、こんな美女に告白されるなんて、滅多にないぞ...いやいやいやいや、そんなことしたら元の世界に帰れなくなるだろうがぁぁあ...
...どうしよう......
「そ、そうですか...すいません、私...」
メイティの顔が赤くなる...目には涙が...
だが、ここで泣き落としにかかる俺ではない!
「メイティさんの事は嫌いじゃありませんよ。でも、俺には軽々しくそういうことはいえないんです。仮にも勇者パーティの1人ですから...」
「そうですね...そうですよね!私、諦めませんから!土屋様が魔王を倒した後にもう一度告白させてください!その時までに土屋様に釣り合う女性になりますね!」
「えー...と、あ、はい。」
「チッ、先を越された...」
「こんな所でも告白できるその勇気に拍手だな...」
そこ2人、聞こえてるぞ
ーーーー
私の名前はメイティ・ド・リビンズ
リビンズ公爵家の長女で土の魔道士である土屋様の護衛。
リビンズ家が公爵の地位を貰ったのは最初の土の魔道士である"マコト様"の護衛として仕えていた冒険者が"マコト様"に大層気に入られていたから、国を建てた時に公爵としての地位を貰った、というものらしい。
その冒険者は出来たばかりの冒険者ギルドに所属する数少ないSランク冒険者の内の1人で"プロミネンス"なんて大層な二つ名も貰っていたらしい。
私はこの話を小さい頃から何回も聞かされてきた。そして、小さい頃から魔法の鍛錬をしてきた。リビンズ公爵家の血を引く者は皆火属性の適性が高く、長男、長女以外は冒険者になるのがお約束であった。
でも、私は火属性の適性がとても高かった。スキルオーブで確認したところ、親や、兄弟の適正は中なのに私の適性は大。
それに近年魔王が復活する周期が来るとのことで特例として長女の私が土の魔道士様に使えるべく、魔法の鍛錬に励むことになった。
父からは『土の魔道士様と親しくなればガルム土国とのパイプもできる。婚約者となればそれはもう我が公爵家はさらに豊かになるだろう!何としてでも、土の魔道士を墜とすのだ!』と言われた。
最初は私もそんな気分でいた。自分の顔とスタイルには自信があったし、召喚されたのが17歳の少年ということなら少し年上の魅力を魅せてあげれば簡単だ、と。
でも、その考えは一瞬で打ち砕かれた。土屋様を初めて見た時に一目惚れしてしまったのだ。
整った顔立ち、穏やかそうな目、どこか安心させるような雰囲気を纏っていてその上とても紳士なのだ。
貴族の誕生パーティ等ではほとんどの男性に下卑た目線で見られるのに、そういった目線は全く感じず、ただ真っ直ぐ目を見て話を聞き、会話してくれる。
あぁ、なんて素敵な男性なのだろうか、と思った。
いつの間にか公爵家の為、だとかガルム土国とのパイプを作るなどどうでもよくなっていた。
この人に女性として見られたい。その一心で頑張ろうとした。
なのに土屋様は全て自分でこなしてしまう...
王城に向かう馬車の中で私は恥ずかしい思いで一杯だった。
そしてつい...言い訳を言おうとして...
...告白してしまった。
土屋様は驚いていた。たぶん告白されるのは初めてなのだろう。
でも、断られてしまった。やんわりと...
悔しかったけど、仕方ないとも思った。
でも、約束した。魔王を倒したらもう一度告白させてください、と
私は心に決めた。この恋を叶えてみせる。
読んで頂きありがとうございました。
もし良かったら感想をお願い致します。
早くもメイティ回です。本当は王と謁見するシーンまで行く予定だった...
以下関係をもう少しわかりやすくした感じ
最初の勇者
↓
勇者パーティ
↑
最初の土の魔道士"マコト"=ガルム土国最初の国王
↑
↑土の魔道士の護衛として仕える
↑
"プロミネンス"の二つ名を持つ護衛・公爵としての地位をマコトに貰う
↓
↓子孫
↓
メイティ
↓
↓土屋に仕える
↓
現在土の魔道士・土屋 俊太
まぁ、わかると思いますがマコトは日本人です。多分いつか出てくると思います。(回想で)




