反撃の狼煙
「寝ちゃダメ。」
透き通るような、高い声で意識が覚醒する。
あれ?俺は確か、ディータにやられた筈じゃ...
「まだ、やること、ある。」
また、声が聞こえる。
俺は今どうなっているんだ?
状況がわからない。
ただ、白い空間に俺がいることだけはわかる。
「本当は手を出しちゃダメだけど、今回は特別。」
手を出しちゃ行けない?
特別?何が起きているんだ?
「貴方は脇役なんかじゃない。むしろ、この"物語"の主人公。」
はっ、俺が主人公?笑わせてくれる。
こんな、呆気なく負けて死ぬような奴が主人公なんて。
誰も守れない。何が守るための力だよ。
結局はただ強いと言われて調子に乗ってただけだ。
「それは、否定しない。でも、貴方にはちゃんと力がある。だから、信じて。」
信じて?何を?
こんな何も出来ない状況でなにを信じるっていうんだ。
「私からは、これ以上言えない。
貴方はここで見たこと、聞いたことを忘れるかもしれない。
でも、大丈夫。」
何が大丈夫なんだよ。
俺は全然大丈夫なんかじゃない。
もう...終わったんだ。
「いい加減にして。さっさと立って戦って。」
「戦えだって?俺はもう...!」
「いや、貴方は戦える。ほら...」
「!」
いつの間にか、俺は立ち上がっていた。
ちゃんと、自分の体がある。
目の前には、俺の背丈の半分くらいの背丈の......少女?
輪郭がぼやけている上に、顔とかもない。
「相手の本質は収束。それさえ見極めれば貴方は負けない。頑張って。」
目の前の少女が消えていく。
おい、待ってくれよ。俺はまだ...
「大丈夫。」
「っ!」
その声は、力を感じさせる声で。
何よりも、勇気を与えてくれる一言だった。
そして...
ー最上位合成魔法大地の咆哮を獲得しました。
ー無詠唱のロックが解除されました。
ー魔力ドレインが魔力超吸収へと変化しました。
ー守護の領域を獲得しました。
ー魔力操作の心得を獲得しました。
ーーーー
目が覚める。
身体中の至るところが悲鳴をあげているのがわかる。
さっきのは夢だったのか?
「ぁぁぁああああ!!?」
「リネ...さん...!」
「がっ!?ぁあ!うっ!」
「エル、バート...!」
「くっ、あぁぁぁ!!」
「メイ...ティ!!」
みんなが、ディータに嬲られている。
クソ!何も状況は変わっていないじゃないか!
「おいおい、勇者様よぉ。そんな悔しいならかかってこいよ?
ま、どうせそんなチンケな魔法じゃ俺にはダメージは通んねぇけどよ?」
「くっそおおおお!!『アースボール』!」
ヤケクソになってアースボールを放つ。
怒りがこもってか、その魔法は少しだけ威力が高かったように見えた。
「その程度の魔法じゃ俺は傷つかないって...っ!?」
アースボールを手で受け止めたディータの腕に血が流れる。
攻撃が通った...?
「なんだ!なんでいきなり!?」
「うおおおおお!『魔力ドレイン』!」
ディータが慌ててワームの動きが鈍った隙にワームに魔力ドレインを発動させる。
あれ?ドレインできる量が多い?
「これなら!
『大地よ。我が力を糧に聖なる槍を作り出せ。その力を持って神敵を貫け!"アースブリューナク!"』」
「クソがッ!『"ダークランス"ッ!』」
闇と土の槍が衝突する。
先に崩壊したのは...闇の槍だ。
「んなっ!?」
「おおおおおお!!!」
槍がディータに突き刺さる。
よし!追い打ちだ!
「『魔力ドレイン!』」
「ぐぁぁぁあああ!」
ディータに突き刺さった槍ごと魔力を吸収する。
やっぱり、魔力の回復量が高い?
「なんだ、なんなんだよテメェはよぉ!?」
「俺は土の勇者だ!」
そう、俺は土の勇者だ。脇役だろうがなんだろうが関係ない。
みんなを守るために力を振るう!
「テメェみたいなヨソモンにやられてたまるかよ!」
「ヨソモノだろうと関係ない!俺はお前を倒すっ!」
ここからが本当の勝負だ!




