第28話 VSディータ再び
「いやー、久しぶり。こんな所で会うなんて奇遇だね。土の勇者様?」
「なんで、なんで生きてるんだ...ディータ...」
ワームの群れの反応があった場所へと向かった先。
そこには、少し前に俺が倒したディータが悠然と構えていた。
「なんで、って。教える訳ないじゃん。もしかしてキミ、バカなの?」
こいつ...いや、わざと怒らせてきてる。
ここは冷静に...
「土屋様になんて口を...」
「メイティストーーーップ!」
危ない危ない。メイティが先走る所だった。
とりあえず少しでもこいつから話を聞いておこう。
「で、まぁ教えてくれないならそれでもいいさ。
だけどな、お前が人間に害を成すと言うなら僕達はお前を殺す。
前と同じようにな!」
杖を構えて脅しをかける。
だが、ディータは余裕の笑みを崩さない。
「殺す、ねぇ?
前の時も僕を殺せてないのにどうやって殺すつもりだい?」
「...」
こいつが生きているのは十中八九魔法によるものだろう。
死ぬ直前に意識だけ移した?
それとも元々分身だった?
実は双子の弟とか?
可能性はいくつか考えられるが、それが合っているという保証がないし、そもそも対策の仕様がない。
とりあえずは行動不能に追い込んで...
「『アースバインド!』」
ワーム用にと詠唱済みだった魔法を放つ。
魔法で生み出された金属の鎖がディータに向かって高速で飛んでいく。
そして、鎖はディータの両手両足を縛り、ディータを拘束する。
「へぇ、前よりも魔法の質が上がってるね。
でも、まだ魔力の収束が雑だ。
『マジックディスタブ』」
「!?」
ディータが魔法を唱えると同時に鎖が消失する。
いや、正確には魔素の塊になった?
「せっかくだし、この魔素は使わせてもらうよ。
『マジックコントロール』『ダーククラフト』」
ディータの近くに散った属性を持たないただ魔素がディータの手元に集まり、闇の魔力へ、そして槌の形を形成する。
それが、どんどん大きくなって...デカすぎだろ!!!?
「前回の時は思いっきり潰されたからなぁ、今度は俺の番だよな?んじゃ、味わってくれや。
『カースハンマー』」
逃げるのは無理、迎え撃つしかない。
しかも詠唱してる隙がない。
仕方ない...
「『ディバインブースト:守』『アースグングニル』!」
これは使いたくなかったけど、使った直後に魔力ドレインで魔力を回復させれば...
「だと思ったよ」
「っ!」
ディータのカースハンマーを迎え撃ったが、その直後にカースハンマーと俺の撃ったアースグングニルの魔力はディータの手に収束する。
何故だ!?
「意味不明、って顔してるね。」
「当たり前だろ...なんで、お前が魔力ドレインを...」
「魔力ドレイン?なに見当違いな事言ってんの?
これはただ魔素の直接操作をしてるだけ。魔法を無詠唱で撃てるんだからこのぐらい出来るに決まってるじゃん。」
「くっ...」
「それと、君の仲間達脆すぎ。」
「!?」
言われて気付いた自分に腹が立つ。
気付いたら3人とも地面に倒れ伏していた。
倒れながらも僅かに動いていることから死んではいないようだ。
更に、周りには優に100を超えるワームの大軍。
ディータに引き付けられて、気配に全く気付かなかった。
「戦闘慣れしてないんだね。
ま、呼び出されたばかりの勇者じゃこんなもんだよね。
ちょっと油断させてあげればこのとおり、期待はずれもいいとこだ。」
くっ、言い返せない。
逆に平和な日本からいきなり来て戦闘なんて無理に決まって...
まてよ...これって俺、死ぬのか...これはゲームじゃない。ましてや、相手は平気で人を殺す魔族。
俺は、俺は...
「あれぇー?もしかして、死ぬ直前なんだって今気付いたの?遅すぎじゃない?
圧倒的ピンチじゃん、それとも物語みたいに誰かが助けてくれるとか思ってる?
残念、ここには人が寄り付かないように工作しときましたー。
...さて、そろそろやっちまうか。最初はそこのお仲間から嬲って殺してやるよ。」
メイティ、リネさん、エルバート...
駄目だ!殺させるわけには行かない!
「『魔力ドレイン』...ぐぁ!」
「おっとぉ、勇者様は黙っといてくれよぉ?」
魔力が足りなさすぎる。
魔力を空気中から取り込もうにも、ワームに押さえつけられる。
ディータが、1歩ずつ近づいて来る。
くそ!どうすれば...




