第27話 はぐれワーム
少し短いかもですが、なんとか投稿...
「ん、んん...」
「あ、起きましたか?」
「あ、はい。どのくらい寝てました?」
「1時間程ですわ。メイティさんはまだそこに寝ています。」
「そうですか......んー、あたっ」
伸びをしようとしたら、馬車の天井に手をぶつけてしまった。
そういえば、馬車の中で寝てたんだった。
「あと1時間程で目撃情報のあった場所ですわ。そろそろメイティさんも起こした方がいいかも知れませんね。」
「そうですね...ふぁぁ...」
眠いなぁ。
まぁ、そろそろワームが出てくるらしいから甘えてられない。日本で休日だったら二度寝してるだろうけど。
眠たい目を擦っていると、御者の人が急に叫んだ
「ぜ、前方にファングウルフが6匹!青いワームが1匹、戦闘しています!!」
うーん、群れからはぐれたワームと野良のファングウルフの戦いかな?
気になるな。ワームの強さも知っておきたいし。
「気付かれない位の距離まで近付いて下さい。
少し様子を見てきます。」
「わ、わかりました。」
馬車から顔を出して見ると目視できるギリギリくらいで砂煙が上がっているのがわかる。
この距離で正確な種類と数を把握できる御者さんスゲー。
「ここら辺が限界だと思います。」
「わかりました。それじゃちょっと見てきますね、っと。」
馬車から降りて少し近付き、戦っている様子を見る。
様子を見ると両者共に軽い傷がチラホラと見られる。
ワームが1匹に対してファングウルフは6匹だから、勝負はすぐつくかと思ったがそうでもないらしい。
青いワームの皮膚は硬いらしく、ファングウルフが引っ掻こうと腕を振るうも、弾かれる。
どうやら皮膚を縮めて硬質化させているらしい。
対してワームの方も時々体をひねり、ファングウルフ達を吹き飛ばしてダメージを与えているものの、大した事は無い。と言った感じで再びワームに襲いかかろうとしている。
「これは時間がかかりそうだなぁ。」
もうまとめて倒しちゃうか。
そう思った時だった。
ワームが土から完全に出たと思ったら水を発生させ、その水を飛ばし始めた。
突然の水魔法に驚いて飛び退くファングウルフ達。
「キシャアアアア!!!」
それを確認したワームが突然叫び始める。
魔力がワームへと集まっていくのがわかる。
どうやら、魔法を使おうとしているらしいが...
あれ?ワームって発声器官がないから魔法を使えない筈じゃ...
「シャアアア!!」
急にワームの体の一部分が青く光り始める。
よく見るとワームの体に魔法陣が刻まれている。
魔法の発動の仕方は2つ。
詠唱を込めた魔法と、魔法陣を使う魔法。
魔法陣はしゃべらなくても魔法をつかえるが、予め魔法陣を刻む必要があり、ワームが自分の体に魔法陣を刻んだとは考えにくい。
つまり......これは誰かが人為的に細工したワームってことか。
......どう考えてもディータの仕業なんだよなぁ。
あー、面倒臭いなあいつ。
でもまぁ、所詮はワームだから倒そうと思えば多分殲滅は楽なんだろうけど。
あ、ファングウルフ達が全滅した。
最後にワームが使ったのは水属性の上位の魔法だった。
前にリネさんが使ってたのを見た事がある。
たしか...『タイダルウェイブ?』だったかな。
高圧の水を敵にぶつける魔法だ。
たぶん水の勇者である水谷がやったら地球のウォーターカッターみたいなのになるんだろうな。
まぁ、あれとは別でC級魔法に『ウォーターカッター』ってあるんだけどね。
まぁ、それはさておき、あのワームは倒してしまおう。
『地よ!大地の鎖の力で敵を捉えよ!"アースバインド"』
目視できるなら十分に魔法の効果範囲内だ。
土属性は水属性の弱点に位置する属性なので、あのワームに破ることは不可能だろう。
やっぱ優劣を考えると闇と光は特殊なんだよなぁ。
まぁ俺みたいなモブには土属性で十分だが。
あ、また考えてることが逸れた。
さっさとワームを仕留めよう。
「土操作。」
地面の土を槍の形にして突き出し、ワームを貫く。
とりあえず、魔石とか素材は回収しておこう。
そう考えて、馬車に一度戻った。
ーーーー
ワーム等の処理をして、馬車で走る事30分程。
ようやく湖に辿り着いた。
「結局ワームはあの一体だけしか見なかったね...」
「何処かに移動したのでしょうか...?」
「その可能性が高いかな?」
流石に討伐されたとかはないと思う。
唯でさえ地面に潜って面倒臭いグレートワームを10体以上纏めて倒すなんて面倒極まりないだろうしな。
普通なら。
「それじゃ、いつも通りかな?」
「そうですね、土屋様。よろしくお願いしますね。」
いつもの=土操作による探索だ。
そろそろこれにも名前を付けていいのではないか?
「土操作............いた。ここから3時の方角にあの群れがいます。距離はここから馬車で15分くらいのところかな?」
「まだ、そんな遠くには行ってないようですね。」
「そうですね......あの2人の安全を考えてここからは僕達は歩きで向かいましょうか。
御者さんは一応戦えるんですよね?」
「はい。これでもAランクの冒険者だったもので。」
「Aランク...凄いですね...」
「いえいえ、勇者様程では有りませんよ。」
ニコニコと笑いながら御者さんが謙遜するが、この人は普通にすごいとおもうんだけどなぁ。
まぁ、本人がそう思わないならいいか。
「さて、では行きますか。」
「「はい。」」
「おう。」
俺たちは馬車に背を向け、ワームがいる場所へと歩き始めた。
......ただし、そこで待ち構えていたのはワームだけでは無かった。
ここに来てようやく俺は、魔人族という存在の厄介さを知ることになった。




