第18話 忘れられていた?リネードさんの話 後編
ま、まだ24日の25時前だから...
昨日は...やってしまいましたわ。
まさかベランダの壁が崩れるなんて...
土屋様を下敷きにしてしまいました...
今日は絶対に土屋様のエスコートを成功させて見せますわ。
「あ、リネさん。お待たせしました。」
「いえ、私も先程来たばかりですから。
それより、昨日は本当にすいませんでした。」
「いや、壁が崩れたのなら仕方ないですよ。
なんなら、僕が修理しておきましょうか?」
「いえ、ちゃんともう届けは出しておきましたので。」
「そうですか。じゃあ、行きましょうか。」
あれ?これ、私がエスコートされてませんか?
「ここ、ケーキが美味しいんですの。この国に来たら絶対に来ようと思ってまして!」
「ここのケーキ美味しいよね。一昨日メイティさんと来た時に食べたけど、元の世界のケーキよりも美味しかったよ。」
「そうでございますか...」
むぅ、メイティさん...やってくれましたね。先手を取られるとは...
「それじゃ、入りましょうか。」
「え、ええ。」
ええい!次ですわ!
「ここの小物屋が...」
「おもしろい魔道具いっぱい置いてあって面白いよね。ここも一昨日...」
また!?
つ、次ですわ!
「ここは...」
「ここも一昨日...」
...もう、駄目ですわ...全てメイティさんに抑えられてしまってますの。
「あのリネさん?どうかしましたか?」
「実は、今日は私がエスコートしたかったのです。機能のお詫びに...なのに、なのに尽くメイティさんに先を越されてしまってましたの!」
「あ、あぁ成程。でも、一度来た店でも仲のいい人と店を回るのは楽しいものですよ。」
「そう...ですかね。」
そうだといいですがね...あら?またフォローされてしまいました...
ですが、思ってる以上に土屋様はいい人なのかも知れません。
「あ、そうだ。リネさん。」
「はい、なんでしょう?」
「リネさんにも杖を作りましょうか?メイティさんにも作ったので。」
「杖を...ですか?」
「ええ、昨日作ったら思ってる以上にすごく強い杖になったので、素材さえあれば作れるんです。なので、今から冒険者ギルドにでも。」
「いいですね、行きましょう!」
実は私、冒険者ギルドには少しだけ興味があるんですの。
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「昨日はすいませんでした!」
「いや、気にしてませんから。顔を上げてください。」
「いえ!Sランク冒険者の土屋様にそんな!恐れ多い!」
うーん、どうしよう。リネさんの杖を作ろうとおもって、魔石と木材を買いに来たのに、入った瞬間土下座されるって...
「あの、逆にそれだと迷惑になるんで...」
「わかりました!」
はぁ...もういいや。
そう思っていたら、後ろから人が沢山来た。その殆どが怪我をしている。中には腕が大きく欠損してる人もいる。
「今すぐ、回復魔法を使えるやつは手伝ってくれ!
グレートシャークの討伐で怪我人がかなり出た!」
「何だって!?」
あぁ、昨日話してたやつか。湖に出たっていう...
あ、ここには回復魔法の使い手、それもかなり有能な人がいるじゃないか。
「リネさん。」
「はい、やりましょう。」
「よし、これで大丈夫かな。」
「助かった、あんた達が居なかったらここにいる何人かは死んでいたかも知れない。」
「いえ、勇者として...当然のことをした迄です。」
勇者として...か。はぁ...
あ、俺は回復魔法を使えるくらいには水属性の適性がある。
リネさん程ではないけどね。
「それで...このお礼なんですが...」
「うーん、まぁたまたま来てただけだしなぁ...」
「じゃあ、グレートシャークの素材を...」
「あ、なら魔石を買い取らせてもらえませんか?」
「あ、いや、金はいい。これが魔石だ。貰ってくれ。」
よっしゃ、杖の素材ゲッツ。
「よし、それじゃリネさん。杖、作りましょうか。」
「はい、よろしくお願いします。」
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「出来た...良い感じだ...」
「わぁ...」
綺麗な魔石...それに、杖の柄の部分は虹色の金属でコーティングされている。
これが土屋様が作った杖...
作ってる時は何をしてるのかわからなかったのですが、これは凄いですね。
「あの、杖の性能を見てもいいですか?」
「えぇ、構いませんよ。」
土屋様からもらった杖にアイテムオーブをかざしてみる。
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グレートダークシャークの杖+
特殊効果:水属性適正上昇 (中)、闇属性適正 (微小)
武器魔法:闇水の息
素材:オリハルコン、アイストレントの甲皮、グレートダークシャークの魔石
作成者:土屋 俊太
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こ、これは...相当な性能ですわね。
私が今まで使ってた武器がまるで玩具のようです...
「ど、どうやってこんな武器を...」
「うーん、修行してたスキルで...?」
「そ、そうでございますか...」
相変わらず非常識ですわね...
「リネさん。」
「はい?」
「元気、出ましたか?」
「え?」
「今日、朝からずっと元気なかったですよ?いや、正確には昨日の夜からですかね...」
「ほ、本当ですか...私...」
恥ずかしいですわ...思った以上に昨日のことを引きずっていたようですわね...
「あはは、元気になったようで何よりですね。それじゃ、戻りましょうか。」
土屋様は明日はどこに行こうかな?と言いながら歩いていく。
まだ、土屋様に対する疑いが晴れたわけじゃないです。
でも、この人が考えてる事は私たちが思ってる以上に小さい事だと...なんとなくそんな感じがしますわ。
私はこの人をサポート役の水の魔道士として支えましょう。
それが私の役目だから。
この杖で...
読んでいただきありがとうございました。
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また明日も更新できたらします。
本当は祠に行く日ですが祠にはちゃんと行ってます。(朝に)




