第14話 メイティの武器を創ろう 前編
思ってた以上の人数に自分の作品が見られててびっくりしました。
嬉しいような恥ずかしいような...(o´艸`)
窓から聞こえる訓練の掛け声。窓の淵に止まっているのかすぐ近くから聞こえる鳥の囀り...朝か。
昨日は魔人属の男を倒したのは覚えてる。あのあとメイティに押し倒されて、それで?
ーーコンコン
「土屋様、起きてますか?」
び、びっくりした。いや、あのことは忘れて切り替えよう。別にナニかをしたとかそういう事は無い。されてない限りは...
「ええ、起きてます。どうぞ入ってください。」
「失礼しますわ。」
メイティはいつも通りだ。祠に挑むのは...明日か。あれ?そう考えると昨日ってだいぶ濃い1日だったような...
「どうかされました?」
「あぁ、いや、なんでもないよ。それで、どうかしましたか?」
「昨日あの後土屋様は魔力枯渇で意識を失ってしまいましたので...その...」
メイティが言葉に詰まる。あれ?なんかデジャヴ...
「実は、昨日。土屋様のために買ってきたのですが...渡すタイミングがなくて...」
そうして渡されたのは大きな金色の宝石がはめ込まれたブレスレットだ。
ヘカーテさんのアイテム鑑定スキルで見てみる。
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魔力貯蔵の腕輪
効果
予め魔力を込めておく事で、魔力枯渇になった際に魔力を自動で補給してくれる。
詠唱を唱えることで魔力枯渇状態じゃなくても魔力の供給ができる。
最終売却価格 金貨8枚
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高っ!?金貨8枚って...80万...
「土屋様っ!?まだお体の調子が良くないのですか!?」
違うよメイティ。君の金使いの荒さにびっくりしただけさ。
などと言えるはずもなく。かといって鑑定スキルの事も言えないので。
「いや...なんか随分と高そうな物をもらってしまったな、と思いまして。それにこういうのって男が渡すものじゃ...」
「気持ちが大事なのです!」
「そ、そうでございますか...あ!」
じゃあ、いいことを考えた!
「どうかされました?」
「メイティさん今使ってる魔法用の杖ってどんな感じですか?」
「えっと...ちょっと待ってくださいね...」
メイティが腰のポーチからアイテムボックスを取り出して、杖を探している。
とはいっても、念じると頭の中にリストが浮かんでくるからそこから杖を探してるんだろうけどね。
ーーポンッ
1m程の杖が出てくる。ガイアの杖は2m行かないくらいの大きさだから、それに比べると小さく思える。メイティは小さいから(背が)たぶんこれくらいが丁度いいんだろうけど。
「これでございます。」
「少し借りてもいいですか?」
「ええ、どうぞ。」
鑑定してみると...
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サラマンダーの杖
火属性適性上昇(小)
(秘匿型任意発動スキル
サラマンダーの炎息)
杖の素材
マグマトレントの甲皮、サラマンダーの魔石
オーダーメイド 金貨10枚
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なるほど...なかなかいい杖だ...よな?相場がよくわからないけど結構いい杖に思える。日本円にしたら100万円だし。
この世界の杖は魔法を使う上での媒体に過ぎないから、苦手な人が使えば楽に使う道具になるし、得意な人が使えばより強力な魔法が簡単に放てる。
その上で火属性適性上昇とかは割と有能な部類ではないだろうか。
「これは...どこで手に入れたのですか?」
「15歳の誕生日に父から頂きましたわ。お前は絶対に土の勇者に嫁がせる!その為にはそれ相応の武器が必要だ!とか...」
「過保護...?」
「いえ、あの人は今の地位を捨てたくないだけです。それに...」
「何かあるのですか?」
「実は、私の曾祖父が領主の時に領地にドラゴンが発生したのです。それも...水属性の...」
「あ...」
「私の家の者はみんな火属性しか適性がなく、苦戦を強いられたと聞きました。それから、その時に領民を無理やりドラゴン討伐に狩り出した...とも...」
「...」
「ギルドに頼めば良かったのに...貴族のプライドと代々火属性を使う魔道士の一族として余所者には頼らないと、頑なにその意見を押しのけ...」
「それで...ドラゴンは...」
「討伐されました...出撃した者の3/4の犠牲者をもって...それ以来、我が公爵家はずっと批判を浴びていて...」
酷い話だな。本当にプライドってのは弊害しか産まない。
「でも、それは今の人には関係無いんじゃ...」
そう言うとメイティは首を振る。
「そんな簡単に収まるものではないのです。信用というのは失うのは簡単ですが、得るのは難しい物ですから...」
「なんか...重い話させちゃってごめん...軽々しく聞いていいことじゃ無かったね...」
「いえ、土屋様は悪くありません!私が一人で喋ったのが悪かったのです!そんな事より、私の杖が何かあったのですか?」
あ、やべ。どうやって説明しようか...うーん。
「じ、実は昨日の修行で武器を作れるスキルを手に入れたんですけど...それで参考までに普通の武器を見てみたくて...」
「?武器なら土屋様の杖が...あ...」
「あれは普通じゃありませんから...」
ガイアの杖は鑑定スキルでも素材がわからなかった。あのでかい魔石もなんなのか気になるし...
「それで、どのような武器をお作りになるのでしょう?」
「いや、このブレスレットもらったからお礼にメイティさんに作ってあげようかな?と...あ、迷惑でした?」
粗悪品とかできたら大変だしな。下手に作るとかいうんじゃなかった。
「...ほ、本当にいいのですか?」
「え、ええ。まぁ、昨日も助けられましたし...」
「ありがとうございます!一生大事に保管します!」
「まだ作ってないからね!?それにいい出来具合だったらちゃんと使ってね!?」
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という理由でやってきました冒険者ギルド。
素材とか買えるらしいし、色々あるから登録もしておきたい。
入口のドアをあけて中に入ると、強面のおっさんが1人、2人、3人...
はっ!思わず雰囲気に押されて帰りそうになった。
「おう兄ちゃん、お前みたいなひょろっちぃのが来る場所じゃないぜ?ここは。」
遠くから、あいつ終わったな。とか世間知らずすぎるのも大概だな。とか聞こえる。その人達は俺の正体に気づいてるんだろう。てか、これまたテンプレすぎる...
あれ?俺、この世界来てからテンプレな事件にしかあってなくね?
「あ、強さに関してはそれなりに自信があるので大丈夫です。それでは。」
こういうのはめんどいからスルーに限る。あ、でもこういう奴って...
「おい、待てよ。このBランク冒険者のヴィリー様が冒険者とはなんたるかをレクチャーしてやるよ。」
「いえ、そういうのはエルバートに聞くので結構です。」
「お前!エルバートさんを呼び捨てにしたな!?不敬だぞ!あの方は...」
ーーゴチンッ!
いつの間にかその男ーーヴィリーの後にいたエルバートがヴィリーに拳骨をかましている。
「不敬なのはお前だ。こいつは土の勇者・土屋 俊太だぞ?あれだけの事したこいつを知らないとかお前は世間を知らなすぎた...」
「あの...エルバート?そいつ気絶してるけど...」
あ、ちなみにエルバートとは呼び捨てになった。いろいろと面倒くさいので。
「あ、本当だ。まぁいいだろ、つーかギルドに来るなら一声掛けてくれよ。」
「あー、一応部屋には行ったんですけど...反応がなかったんで...」
「あー、すまん。そういえば中庭で護衛兵たちの稽古頼まれてたから稽古やってたんだわ。」
「僕、悪くないですよね...」
「おう、すまんな。はははは」
「あ、じゃあちょっと冒険者登録してきますね」
「あーその事なんだが...」
「なにかあるんですか...?」
こういう時って大体なんかあるよな...面倒なのは勘弁!
「勇者達は予めBランクスタートで登録されるんだよな...強さが申し分ないからな。だが特例で今回お前は.........」
「...僕は?」
「...Sランクスタートだ......」
...はぁ!!?なんでそんな事になるんだよ。
「...理由を聞いてもいいですか?」
「あの有名な盗賊団の掃討。王女様の救出。魔人族の討伐。どれも普通だったらひとりで解決できるようなことじゃねぇ。これで納得か?」
「...拒否権は?」
「ねぇよ。まず、Sランクにデメリットは殆どない。別にいくつもある肩書きがひとつ増えるだけだ、気にするな。」
「ちょっとまて、いくつもあるってどういう事だ!?」
「お前、街だと"土の守護者"とか"裁きの勇者"とか呼ばれてるぞ?あとは...そうそう!"ガイアの眷属様"とかあったな。」
「なんだよ!それ!?恥ずかしすぎるわ!」
「いろいろとやらかしたお前が悪い」
「うっ...」
ぐぅの音も出ませぬ...
読んでいただきありがとうございました。
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