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僻・秘・否
貴方には、僕の姿が見えているでしょうか。
誰にも相談できませんでした。否定されるのが怖かったのです。
気が狂ったように黙り込む客に男は言葉を撃つ。
「怪異に見舞われた事が、普通ではない、と言っているわけではありません。其方の怪異など、抑々どうでもよいのですから」
「あんたの普通でないところは、其の怪異に選ばれてしまう素質を持っていた事です。大多数の他者と同一でない素質を、魅入られてしまった」
客に、言葉は届いているのか。
「怪異の元凶は、あんた。恨みを抱いているのも、あんただ」
「ご覧なさい」
「さようなら」
何故、貴方の顔は見えているのでしょう。
誰にも話せませんでした。卑下されるのが恐ろしかったのです。