勇者一人
一人語りに近い形式で、勢いに任せて書いてみた作品。
いずれは長編を書くための踏み台。
つたない文章なのは重々承知ですが、
多少でも楽しんでいただければ幸いです。
おお勇者よ、死んでしまうとは情けない……
そう、俺は勇者だ。
死んでも教会に飛ばされて生き返る。
死んでは生き返るをひたすら繰り返す。
一部の経験は失いながらも徐々にだが確実に強くなっていく。
そしていずれは魔王を倒すため。
そのために神は俺に不死の加護を授けた。
ただ、不死のみでは力をつけるのに時間が必要だ。
加齢による劣化を気にしていては十分な力を身につけることができない。
だから不死に加えて不老の加護も授かった……
そして、俺は不老不死の勇者となり魔王を打倒した……
「おお勇者よ、死んでしまうとは情けない……でしたっけ?」
目を開けると、目の前にはエルフの少女。
魔王を討伐した際の仲間の一人だ。
「火山に裸で特攻って何やってるんですか?不老不死の加護がなければ死んでいましたよ?」
……そう、俺は死にたかった。
魔王を倒して100年くらいか?
世界は平和になった。
たまに争いがあったとしてもそれは国同士の小競り合い。
戦う相手は人間だ。
そんなの勇者の出番じゃない。
俺が果たすべき役割はもうどこにもない。
一緒に魔王を倒した仲間達の多くも死んでいった……
残っているのは俺とエルフのこいつと魔道士のあいつだけだ。
世間でも俺が勇者だと知っている人間は残りわずかだ。
エルフやドラゴンなどの寿命が長い連中と権力者だけが俺は勇者だと知っている。
そんな権力者のうっとうしい視線を避け、今は辺境の村で農業生活。
戦いに明け暮れていたころは、のんびりしたこんな生活にあこがれていたんだよなぁ。
でも、近所の連中には人間のくせに年を取らないと最近になって怪しまれている。
人外なのではないかと……
確かに俺はもう人間ではないのかもしれない。
これ以上怪しまれる前に、また違う村へと引っ越すべきか。
この前なんて、近所の子供になんで年を取らないのかと直接問いかけられた。
だから、俺は勇者で不老不死の加護があるから年を取らないんだと正直に答えてみた。
そしたらどうなったと思う?
近くにいたそいつの親に不審者扱いされて衛兵を呼ばれた……
俺は勇者だぞ?
これでも世界のために頑張ったんだ。
確かに死んでも生き返る。
でも死ぬのが辛くないわけじゃない……
死ぬのは痛い、怖い、そして冷たい。
なのにこんな状況だ。
死のうとしても死ねない。
死を神に願っても答えやしない。
役目を果たしたら放ったらかしか?
どうすればいい?
俺はどうしたらいい??
「人間の村を渡り歩くのに疲れたなら、エルフの村にでも引っ越しますか?」
それも良いかもしれない。
そこなら周りも寿命が長い連中ばっかりだ。
置いて行かれる気分をこれ以上味わはないで済むかもしれない。
「どうですか?この村は?平和で落ち着く生活も良いでしょう?」
確かにこれはこれでよいものだ。
人間の村で普通に生活するのに憧れていたが、
周りに怪しまれ疎まれ置いて行かれるのは辛すぎる。
もう、この村で生きよう。
そうだ、あいつもこの村に呼んでみよう。
魔力が相当高い魔道士だからな。
魔力の加護か人間なのに長生きしていやがる。
もう相当な爺だが、まぁ魔法で飛んで来れば来れないことないだろう。
そうと決まればさっそく連絡だ。
久々だからどこにいるかわからないが、念話を飛ばせば一発だ。
……つながらない。
頭の中に浮かぶ念話相手のリスト。
そこに奴の名前はグレーで表示されている。
選べない、つながらない……
もう二度と話せない。
とうとう奴も死んだか。
俺をまた置いていきやがった……
「ほら、ふさぎ込んでないで、村の子供たちに剣術でも教えてあげてよ」
教えるのは構わないさ。
でも、俺は知ってるぜ。
村の子供ら、誰も剣術なんて習いたくないんだろ?
それをお前が頼み込んで、習わせているんだろ?
聞いたんだよ、村の子供らが喋っているのをさ。
面倒だけど、村長の言うことだから仕方ないって。
剣術なんて、いまどき何の役に立つんだって。
……確かにな、もう剣術なんて何の役にもたちゃしない。
俺と同じだ、もう無用の長物だ。
もう俺は眠りにつくよ。
死ねはしないが眠ることはできる。
魔王の城で見つけた魔の棺。
あの中で眠りにつくよ。
一度入ったが最後、棺が壊れるか、解放のための呪文を唱えなければ開くことはない。
寝て起きなきゃ死んだも同じ。
輪廻の輪に乗れないから、死んだ仲間達とは会えない。
それでもこのまま生き続けるよりましだ。
お前には世話になったな……
泣くなよ、エルフの寿命は長いんだろ?
どうしても会いたくなったら呪文を唱えろ。
俺が必要になったら開けてくれ……
……あれからどのくらいたったんだ?
なんで目覚めた?
あの淋しがり屋のエルフが呪文を唱えたのか?
すさまじく荒れ放題だな。
確か階段を上って地上に出ると、森の中の祠だった気がするんだが何もないな。
あたり一面荒野が広がっている。
これは……魔王の魔力か?
奴が復活して世界を滅ぼしたのか??
……とりあえず、エルフの奴に連絡してみるか。
……つながらない。
頭の中に浮かぶ念話相手のリスト。
そこに奴の名前はグレーで表示されている。
選べない、つながらない……
もう二度と話せない。
とうとう奴も死んだか。
俺をまた置いていきやがった……
俺は本当に一人になった……
一人ぼっちか……
これからどうしようか?
見渡す限り本当に何もない。
知っている人間どころか、生き物すら見当たらない。
こんなことになるなら眠りになんてつかなきゃよかった。
誰もいない、何もない、死ねない……
あいつもいない……
見送ることすらできなかった。
なんで死んだのかもわからない。
……今更ながら、俺はあいつを心のよりどころにしていたんだなぁ。
そんな相手を置いて俺は一人眠っていたのか。
あいつも淋しかっただろうに!
俺は眠っていなければこんなことにはならなかったかもしれないのに!!
何が勇者だ!!
何が不老不死だ!!!
神よ!俺はお前を呪うぞ!!
そして何より自分自身が憎くてたまらない!
あぁ……目の前が赤く染まっていく!!
暴走した魔力が全身から吹き出し世界を真っ赤に染めていく!
赤い光が収まると目の前には何もなかった……
何もない荒野だったこの場所から荒野すら消失した。
……どこかで何かが壊れる音がした。
何も考えられなくなっていく……
あぁ……これがタマシイが壊れるということカ……
だが、俺は不老不死ダ。
コのまま、暴走シテ、いずれは神をもコロシテやろう!!
自分がキエテいくのヲ感じル……
なんだ、オレもシネるジャナいカ……
タマシイがコワレればシンだもドうゼン……
オォ、ユウ…シャヨ、シンデ……シマウ…トハナ・サ…ケ…ナイ……




