第1話
春・・・
「ねぇ祐樹。もしあたし達が運命ならさ、
また付き合ったりするのかな?」
そんなあたしの言葉に、
祐樹は困ったように笑う。
「ごめん。祐樹、元気でね・・・」
「加奈も。幸せになれよ」
中学校の卒業式、
校内で一番大きいと言われている桜の木の下で、
あたし達は恋人と言う関係に終止符を打った。
寂しさを隠し切れないあたしとは裏腹に、
祐樹の表情はどこかすっきりしたように晴れ晴れとしている。
「バイバイ」
どちらからともなく
自然に出たその言葉と共に、
あたし達は別々の道を歩き出す。
あたしはやっぱり名残惜しくて、そっと振り返る。
小さくなっていく祐樹の背中。
振り返ることもなく、ただまっすぐ前に進んでいく。
祐樹の姿が見えなくなると、
なぜか無性に悲しくなって涙がこぼれた。
「バイバイ、祐樹」
前に向き直り、
ゆっくりと歩いていく。
___________
祐樹との出会いは中学2年の夏。
夏休みの終わりと同時にこの学校へ転校してきたあたしは、
まだあまりクラスに馴染めていなかった。
とゆうより、みんなに避けられていた。
理由は、当時のあたしの見た目。
前の学校が校則などないも同然だったために
髪は赤く、目には濃いライン。
スカートは膝丈が常識のこの学校で、
超がつくほどのミニスカート。
転校早々、
先輩からも一目をおかれる存在になっていたあたしは、
すっかり浮いた存在になっていた。