幻奏
幻奏。
それは幻を奏でる音。
その音は、幸せの奏で。
その家に住む仁は、家の柱に座って晴れた空の光を浴びていました。
その光を浴びてきらきら遊んでいるのは彼の子供たち。
男の子二人、女の子二人。
草の上をきゃあきゃあ言いながら走って走って、楽しそうに。
紫の長い髪の女の子が邑李
水色の髪を小さく一つに結った男の子は泉李
元気よく紅と橙の髪を揺らして走っている男の子が瑶李
笑いながら端の方へ逃げているのが白髪の女の子、諳李
みんなみんな楽しそうにきらきら、きらきら。
そんな子供たちを見るのが仁の至福の時。
何事にもかえがたいモノ。
くす、と小さく笑う仁の隣にもう一人の子供。
ストン、と仁の隣に座る黒髪の男の子、咏李。
いつも仁の傍に居て、口数がとても少ない上、笑った事もない彼。
彼は少し難しい子で、哀しい事をいっぱい知っています。
仁でさえ最初嫌われて拒まれて触らせてさえくれませんでした。
けれども、
「……ん?」
ことん、と仁の肩に小さな重み。
日の光りにあてられて咏李がうとうとと。
その重みが嬉しくて嬉しくて。
毎日この幸せが続くようにと、切に祈り、護っていこうと思うのです。
幻奏。
それは幻の音。
一人一人を幸せにと
あなたは一人ではないよと
全てを受け入れさせてほしいと
優しい願いを綴った譜面