第七話『聖剣は犠牲になったのだ。……御伽噺に出てくる勇者のな』
間違えた(゜Д゜ )
間違えて先に8話上げちゃった( ゜Д゜)
私としたことが(゜Д゜)
申し訳ないです。・゜・(ノД`)・゜・。
前回のあらすじ。
俺のサンドイッチが穢れた不毛な大地に堕ちた。
以上。
さて、俺はサンドイッチの仇を取るべく、うどん饅頭を攫った男達を追っていた。
…ああ、いや、うどん饅頭じゃなくて………もういいか、うどん饅頭で。
ちなみに、あの場に居た子供達は放置してきた。
あの後子供達は、しばらくの間気絶しててもおかしくない一撃を喰らったというのに、平然としている俺に対して興味が沸いてしまったらしく、やたらと俺に集ってきた。
腹も減ったままだし、正直言って五月蝿いことこの上ない。早く追わないとサンドイッチの仇も見失ってしまう。
だから、帰るように促すこともせず、放置してきてしまった。
………やっぱり帰るよう言っておくべきだったかな…。
それにしても、追いかけにくい所に逃げやがって……。
今、俺が走っているのは、何かの肉の串刺しを売る屋台があった大通りから外れた、とっても薄暗い寂れに寂れまくった路地だ。
……なんか『とっても薄暗い』って良く分からない表現だな…。とっても暗いのか、薄暗いのか……。
それはそうと、この辺りの道はやたらと不衛生極まりない。あちこちにゴミやら動物の死骸やら虫の死骸やら衰弱した人間やらが転がっている。
発展した王都の裏の顔とも呼べる場所。ある意味王道的な場所だ。
「……あまり長居はしたくないな」
俺はスピードを変えずに、曲がり角を曲がる。
「うおぅ!?」
「うわっ、と!」
曲がった先で誰かにぶつかってしまったようだ。ちなみに、「うおぅ!?」の方が俺。
しかも、真正面からぶつかり合って、向こうさんが俺を倒れないように抱えてきたお陰で、転ばずには済んだが、かなり恥ずかしい体制になってしまった。
「こ、子供!?」
おいコラ、ぶつかって一番にその発言はどうなんだ?少しはこっちの心配とかしろよ。
「…あ…と、ごめん大丈夫だったかい?」
「アンタの筋肉の所為で地味に痛かったよ」
「それは、ごめん…」
なんか落ち込まれてしまった。俺は思ったことを素直に言っただけなんだけどな…。
まあ、『心配しろ』と思っておきながら、その台詞はおかしいか。
ここでようやく俺を放してくれたことにより、向こうさんの姿が確認できた。
それなりに無駄の無い筋肉が付いている、見た目18歳程の男。右手には聖剣っぽい剣を持っていて、長いこと走っていたのか額に汗を掻いている。
うわ、この人凄く勇者臭がする!
「あ!それより!白い髪に青い目の女性見なかった?」
男は、先ほどの落ち込んだ様子から一変して、今度は焦った様子で質問してきた。
白い髪に青い目?それなら、うどん饅頭と外見が一致するな。
「ああ、それっぽい女性ならさっきまで一緒だったが…」
「本当か!?どこ!?どこに行った!?教えてくれ!!」
うわっうるさ。
「とりあえず、落ち着け。急ぐのは構わないけど、焦ってたって何も変わんねぇんだ。ここは少し、クールに行こうぜ?」
「う……そ、それもそうだね…。悪かったよ…」
「謝るのは後だ。泣くのも、後悔するのも、全て後だ。今しかやれないことは、今やるしかないんだ。でないと君の時間も、その女性の時間も無くなるぞ?」
「……外見とは裏腹に、随分としっかりしてるね…」
「全部姉さんの真似だ。あと、外見については何も言わないでくれ、自分でも似合わないのは解ってる」
なんでこんな口調にしたかというと、半分は人を冷静にさせるには適しているかと思ったからだ。
残りもう半分は、ノリだ。
「まあいいや、この先真っ直ぐ行って左に曲がった所辺りに行ったと思う。数人の男に連れ去られてたから、気を付けろよ?」
「連れ去られた!?クソッ、もっと早くに来ていれば……。っと、『後悔するのは後だ』って言ってくれたのは君だったね。じゃあ、俺はもう行くよ。道を教えてくれてありがとう」
そう言って、俺が指した方へ走って行く勇者臭男。『ゆうしゃくさお』じゃないよ?『ゆうしゃしゅうおとこ』だよ?
そのまま走って行くと思いきや、おもむろに振り返って。
「この辺りは危ないから、君は早く帰りなよー!」
と、言い残してまた走り出して行ってしまった。
……お節介な男だな。
「ま、もちろん断らせて貰うけどな」
こっちには、サンドイッチの仇を討つ用事があるんだ。そう簡単には下がらんよ。
そういえば、あの人髪と目が黒かったな……。
所変わって、城の屋根の上。そこでは黒い甲冑と一国の王がオセロをやってるという、なんともシュールな光景が繰り広げられていた。
「お前は行かなくていいのか?」
「ん?何がだ?」
国王に聞かれて疑問符を浮かべる黒い甲冑。
「勇者は王女を探しに、騎士団長は事の鎮静化に行った。お前はどこにも行かなくていいのか?」
あれから、四人が半荘し終わった後、収拾が遅れている事に流石に気が付いたフィリアは城内に戻り、抜け出した王女が心配になったアツシは城下町へ行った。
そして、ここに残ってるのは国王と黒い甲冑の二人。
隣の国と言えど『勇者』ではあるんだから、何かしら行動を起こさなくてもいいのか?というのが国王の疑問であった。
「ああ、そうゆう事か」
そう言ってオセロの石を置く黒い甲冑。というか、国王相手にそのような口調で大丈夫なのだろうか?
「私が行った所で、何も変わりはしないだろう。三日前、隣の国から来た勇者なんて普通に信用ならん」
「そうゆうもんか?ここで鎮静化に協力しておけば、皆からの信用も得られるぞ?」
「まあ、それもそうだが、ちょっと疲れてるのだ。休みたい気分なのだよ。此処の所、嫌なこと続きでな」
「ほー、そうなのか」
オセロの石を置く国王。ちなみに、国王が黒で、黒い甲冑が白である。普通逆だろ。カラーリング的な意味で。
「そういえば、騎士団長が何やら客室を取っていた様だったが、誰か来たのか?」
そう言いながら、次の一手を打つ黒い甲冑。
「あー、調査しに行った先の森で見つけた、記憶喪失の少女を保護したらしいぞ」
「ほぉ、そうなのか」
「ああ」
一手打って、オセロを黒く染める国王。
「……ん?それだけの理由で城に連れて来たのか?大丈夫なのか?」
「あー。まあ、保護者が見つからなかった場合は、フィリアが引き取り手になる予定らしい。責任も大体はフィリアが取る事になるな」
「成る程、騎士団長の連れ子にすることによって、王室や貴族に掛かる負担を和らげたのか。中々小賢しい真似をするじゃないか」
「そう言わないでくれ。そう決めたのは宰相の方だ。それに、騎士として将来有望らしいぜ?まだしっかりとした実力は見ていないが、何でも防具無しでフィリアの蹴りに耐えたらしい」
「ほぅ、それはまた凄いな。あのフィリアの蹴りに耐えたか…」
オセロの石を置く黒い甲冑。勝負は、白も黒も同じくらいの数で接戦である。
「最近の女は皆強いよな。この間だってオレ、妻からラリアット喰らって気絶したし……」
「いや、君の奥さんと最近の女性を一緒にしてはいかんだろう。何時見ても隙の無い佇まいだし」
「ククク、言えてるな」
国王が最後の一手を決める。
「で、その記憶喪失の娘の名は何というのだ?」
「ああ、たしか……」
「せいやっ!」
「ガハッ!」
「おりゃっ!」
「グハァッ!」
「ちぇすとー!」
「アベシッ!」
どうも。ユウ・キリエこと、桐江憂です。
ただいま、勇者臭男が犯人を蹴散らしています。
人がどんどん飛んで行く様は、以外と爽快です。
「このベタな名前の聖剣『エクスカリバー』の力、見せてやろう!」
勇者臭男が調子に乗り始めた!ていうかベタな名前とか言うな!
「聖剣パンチ!」
「ゴフッ!」
「聖剣キック!」
「グァッ!」
「聖剣巴投げ!」
「グワァ!」
どこのトンファーだ。
ああ、駄目だこいつ…。完全に調子に乗っていやがる…。先ほどまでの勇者臭は何処へ行ったのだろうか…。
『力に溺れる』とは良く聞くけど、これはどうなんだろう?『聖剣の力、見せてやろう!』とか言って調子に乗ってるけど、全然聖剣使ってないし。
どっちかっていうと、ふざけてる?舐めプ?
ちなみに、今俺が居るところは廃れた教会のようなところだ。
どうやらここが俺のサンドイッチを粗末に扱った愉快犯の本拠地のようだ。礼拝堂らしき部屋の中で、勇者臭男が愉快犯達を蹴散らしてる。さらにその奥には、足と手が鎖で縛られたうどん饅頭が倒れている。
そんな様子を、教会の入り口から覗き見ているのが俺だ。
「聖剣昇●拳!」
「聖剣竜巻●風脚!」
「聖剣ヨガファ●ヤー!」
途中からス●Ⅱになってんぞ。
ていうかもう『ヨガ』って言っちゃってるよ、この人。
俺はどうすればいいんだろう。なんか愉快犯どもは勇者臭男が蹴散らしちゃってるし。俺の出る幕無いじゃん。
……とりあえず、うどん饅頭でも助けておくか。
中に入り、無双劇をしている勇者臭男と愉快犯に見つからないように、礼拝堂のなるべく端を通ってうどん饅頭のいる場所に向かう。
それにしても派手に蹴散らしているな……。
エルボーにハイキックにダブルラリアットにと、次々に繰り出される技の数々はどれも鋭く、的確に相手を捉えている。そんな彼はまさしく、御伽噺に出てくる勇者そのものであった。
………いや、こんな勇者いてたまるかよ。聖剣使えよ、聖剣。御伽噺にこんな勇者出てきたら、子供がガッカリするぞ?
大体、どこにやった聖剣は。かっこよく刀身を光らせたあの勝利を約束してくれそうな名前の聖剣はどこにやった。
……あ、あった。邪魔だと言わんばかりに壁に深く突き刺さってた。そんな扱いでいいのか聖剣。
聖剣「解せぬ」
なんか聖剣の心の声(?)が聴こえた気がしたけど、難なく鎖で縛られてるうどん饅頭の元へたどり着くことが出来た。
「…!?~~!?~~~!!」
おぉう、うどん饅頭ってば猿轡はめられてるじゃないか。
目隠しはされてないようで、俺が視界に入った途端何かを訴えるように喋ろうとしていた。
なんで目隠ししてないんだよ。なんで猿轡しか付けてないんだよ。それだけじゃ不完全だろうが。目隠しあってこその拘束だろうが。まあ、それはシチュエーションにもよるけど、個人的には目隠しはあったほうがいいなと思うのですよ。ええ、目隠しプレイ好きですよ?私。見るの専門でしたけど。
おっと、俺の性癖なんてどうでもいいんだ。優先すべきは性癖を語ることじゃない、人助けをすることだ!
俺は拘束されたうどん饅頭を助けるべく、彼女のすぐ側にしゃがみこんで優しく声をかけた!
「ごめん。なんて言ってるか分かんない」
「~~~~!!?」
人助けを優先した結果がコレだよ!
まあ、ヒドイと思う人もいると思うけどコレが俺なんだ!面白そうなものを見つけたら、全力で遊ぶ。もはや生きがいと言っても良いくらいだね!
「一体どうしたのさ。そんな、ひとえに悲しい事に何度もあったかのような顔をして」
「~~~!~~!!」
「え!?お宅の息子また大学落ちたの!?アラヤダ、それはもう~、ねぇ?息子さんもさぞかし落ち込んだでしょうねぇ……」
「~~!?!(なんの話!?)」
「浪人生になってから何年目でしたっけ?………は、8年目!?8年って言ったら、もう26歳じゃないの!アタシの息子が26の時にはもう、伝承された北●神拳で解体業社を立ち上げてたわよ!?」
「~~~~~~!?!?!(だからなんの話ですか!?)」
「もういい加減に就職考えたらどう…?大丈夫なの?」
「~~~~~!!!(知りませんよ!!)」
そんなやりとりをしていると、視界の隅で荒ぶってる勇者臭男に一方的に弄られてる愉快犯の数が減ってきているのに気がついた。
愉快犯も大分片付いてきたようだ、うどん饅頭をいじるのもそろそろ止めておくか。なんか涙目になってきてるし。
それにしても、手足を鎖で縛られてる上に猿轡を噛まされてる状態で涙目になられると、背徳心がそそられるな。今すぐ襲い掛かりたい気持ちでいっぱいになるぜ。
まあ、もちろん冗談だけどね。
「……うん、冗談はこのくらいにして、助けてあげるよ」
「………」
うどん饅頭が非難するような目を向けてくるが、無視する。そんな目を向けても俺は興奮しないぞ?どちらかというとさっきの涙目の方が(ry
さて、足から外そうかね。
足に絡み付いてる鎖を摘まんで、力任せに千切り取っていく。なんか鎖に変な紋様が描いてあったけど、難なく壊せたぜ。
うどん饅頭が驚愕したような目を向けてくるが、無視する。
「次は耳だ……じゃない、腕だ」
一瞬、某大佐になりかけたけど、何の問題も無いね。
「…………」
いや、待て。
本当にこれでいいのだろうか…。本当に俺は彼女の解放を望んでいるのか…。
いや、俺は彼女を助けたいとは思う。しかし、たしかにそれなら彼女は救われるが、俺は救われるのか?
こんな世界に二つも無いような玩具をみすみす捨ててしまってもいいのか。
俺の中で、彼女を解放してやりたい気持ちと、彼女で遊び続けていたい気持ちがせめぎ合って、どうすればいいのか判らなくなる。
究極の選択肢を迫られた気分だ。いや、もしかしなくても究極の選択肢なのだろう。ここで鎖を解くか、解かずにもっと弄り倒すか。そこが問題だ。
「………?」
横たわる玩具は、どうしたのか、早く解いてくれないかと俺に視線を向けてくる。
その目は不安と恐怖で彩られ、見た者の庇護欲を掻き立てるのと同時に、背徳心に火を付けてしまうほど可憐な目だった。
………何を悩んでいたんだか、俺は。
俺は力を抜いて微笑んだ。
究極の選択肢なんて馬鹿馬鹿しい。こんなの、考えるまでも無いじゃないか。
そして俺は、力強く叫んだ。
「次回に続く!!」
「~~~!!?(何言ってるのこの人!!?)」
話が長すぎたので打ち切りました(´・ω・`)