第二話『親方!俺が女の子だ!!』
サブタイは鷹村(同じアカウントで投稿している同居人)が考えました。
なんだこれ。
さて、突然だけど今の俺の状態を説明したいと思う。
神と天使的なアレに見送られて、異世界に繋がる真っ黒な穴に意気揚々と落ちた俺。その先で見たものは、異世界の全貌だった!わーきれい!
………遠回しに言ったけど、要は空からまっ逆さまに落ちてます。
一言で説明するなら、『親方!空から女の子が!』が一番妥当だろうな。
まあでも、俺は飛●石持ってないからパ●ーがキャッチする前に落ちるだろうな。
ていうか、現実逃避してる場合か?俺。絶対に死ぬじゃんこれ。
まあ待て落ち着け。神様は何と言っていた?
俺の身体能力は半端なく上がってると言っていたよな?じゃあ、もしかしたらこの高さから落ちても上手く着地できんじゃね?
いや、でもそんなことしたら両足の骨が☆粉砕☆玉砕☆大喝采☆しそうだな。ていうかその前に下手すりゃ死ぬじゃん。
しかし、ここは覚悟を決めて着地しなくればいけないな。
とりあえず、このまま逆さまじゃマズイから、なんとか体勢を立て直して、着地に備えy……
「ぐっへぁっ!?」
グダグダ考えてたら落ちたよ。
なんか漫画みたいにクレーター作ったりもせずに、数回バウンドしたよ。
「いてて……。ていうか、生きてるし……」
とりあえず体を起こす。
あー、死んだかと思った…。やっぱり有り得ないくらい身体能力上がってるな……。どっちかっていうと、体の頑丈さだけど。見ろよこれ、傷一つ付いてないぜ?
「もはや化け物だなこりゃ……」
ていうか、傷一つ無い自分の体見て気が付いたけど、なんで俺真っ白なワンピースなんか着てるんだ……?自分としては、元男だったからあまり女性物の服や下着は着たくないんだけど…。
…………そういえば俺、今下着何穿いてんだろ…。
…やべぇ、すごく見たくない。この俺のワンピースの下に何があるのかなんて知りたくもない。これだったらまだ穿いてない方がマシな気がする。
そうだ、転生したばかりだから穿いてないって可能性だってあるじゃないk……駄目だ、なんか穿いてる感覚あるわ……。
こ、この話はやめにしよう。うん、やめやめ。話題を変えよう。
そういえば、異世界に来た始めに空から落ちるのって結構テンプレだよな。
大抵は落ちる前になんとかしたり、地面にクレーター作ったりするけど、数回バウンドして全身で着地した俺ってなんかしょぼいよな、ハハハ。
…………話題変えるにしても、この話はねえよな…。
と、とりあえず、立ち上がって周りを確認しようか。
見た感じ森っぽい。落ちたところは何故か木が無い空けた場所。周りには木々が生茂っているだけで何も無い。地味にキノコが生えてるけど。あとはなんか巨大なゴリラが俺の後ろにいるくらいだな。
………………。
「は?」
ナニコレ。
状況が把握できない俺は、横から強い衝撃を受けて吹っ飛んだ。ゴリラに殴られたんだと思う。
木々を薙ぎ倒しながら10m以上吹っ飛んだ俺は、地面を数回バウンドしてようやく停止した。
またバウンドかよ……。
「なんだ!?何かいるのか!?」
ん?周りに誰かいるみたいだ。
なんか鎧を着込んでる人が10人くらいいる。そんでもって一人だけマント付けてる。
なんだろうこれ。いや、なんだろうって騎士かなにかだろうよ。見た目からして。
いやー、にしても本当に異世界に来たことを実感するね。こんな格好してる奴、俺のいた世界にはコスプレイヤー以外いなかったぜ。マント付けてる人はあれか?これのリーダー的な存在か?
「人が吹っ飛んできたぞ!?」
「何があったんだ!?」
「美少女だ!美少女が吹っ飛んできたぞ!」
「おい!まだ生きてるぞ!?」
「あの吹っ飛びようでか!?」
「すごい美少女だ……」
「美少女!大丈夫か!?しっかりしろ!」
「美少女!」
「美少女!!」
「…えっと……多分大丈夫です…」
……ナニコレウザイ。ていうか美少女ゆうな。
とりあえず体を起こしておこう。
ここで、唯一マントを付けているリーダー格っぽい人が声を上げた。
「おい!美少女が吹っ飛んできたからといってテンションを上げているんじゃないぞ貴様ら!!」
「美少女ゆうな」
ていうか怒るところ違くね?
リーダー格っぽい人はその場に座っている俺に近付き、しゃがんで視線を合わせてきた。
ていうかこの人、声聴くまで分からなかったけど、女性だ。綺麗な水色の髪を持つ美人だ。地味に鎧が似合ってる。
リーダー格っぽい地味に鎧が似合ってる綺麗な水色の髪を持つ美人さんは、先程声を上げた時とは打って変わって優しく俺に話しかけてきた。
「美少女、一体何があったんだい?」
「美少女ゆうな。俺には桐江憂って名前がある」
「キリエユウ?変わった名前だな…」
そうなのか?ああ、苗字より先に名前が来るお国柄なのか。苗字が先に来る名前なんて珍しいからな。
「あ、いや、憂が名前で桐江がファミリーネームだ」
「なるほど、ユウ・キリエか。私はヒィヴァニスィリルィユァ王国騎士団隊長、フィリア・アストライスだ。よろしく」
「よ、よろしく……」
なにその王国の名前…。無駄に長くて無駄に言いにくい…。
しかし、やっぱりリーダー的なあれだったか。なんか他の奴等と違うんだもんな。立ち振る舞いとか身のこなしとかが。
それにしても、異世界に来ていきなり空から落ちて、バウンドして、巨大なゴリラに殴られて、王国の騎士団隊長に会うなんて、さっきから急展開ばっかだな…。ていうか何この展開。
「それで美少女、一体何があったというんだい?」
「ああ、えーと……って、俺の名前は憂だって言っただろ。何回言わせれば気が済むんだこの残念な美人」
「褒めてるのか貶してるのかわからないなそれww」
草生やしてんじゃねえよ。
「おい!なにか来るぞ!?」
急に周りにいた騎士団の一人が叫んだ。
「ゴリラだ!巨大なゴリラがいるぞ!!」
俺が吹っ飛んできた方向から巨大なゴリラが現れた。
おおぅ。さっき俺を吹っ飛ばしてくれたゴリラじゃねえか。さっきは吹っ飛ばされた所為で一瞬しか見れなかったけど、改めて見ると異様にでかいなこいつ……。6mはあるんじゃね?
ゴリラは俺達を見つけるなり、いきなり口から火を吐いてきた。
なんでゴリラが口から火を吐けるんだよ!ドラゴンとかの特権だろそれは!!
「お前ら!避けるんだ!!」
そう言った残念な美人のフィリアさんは、
残像を残す速さで周りの騎士達に蹴りを入れて強制的に避けさせた。
って、何してんだアンタ!?自力で避けさせる暇も与え……グヘァッ!?俺もかよ……ッ!!
俺も他の騎士達と同じようにフィリアさんに蹴られて、強制的に炎を避けさせられた。
意外と強い蹴りだったから、今の比較的小さい体の俺は結構な距離吹っ飛び、数回バウンドしてから止まった。
ちなみに吐かれた火はその辺の草木を黒ずみと化させた。
「いてて……何回バウンドさせりゃあ気が済むんだよ……」
この世界に来てからバウンドしてばっかだ……。
「全員避けたか?」
フィリアさんが全員の安否を確認する。
それに対して騎士の一人が文句を言う。
「『避けた』というか、強制的に隊長に避けさせられたんすけど……」
「口答えはするな!!いいか?貴様らは邪魔だから帰れ!!」
「「「「わあぉヒデェ!!」」」」
息ぴったりだな騎士達。
「もともと私は一人で戦う方が慣れてるのだ!!正直こんな大勢で来たくなんか無かったし。
とゆうわけで帰れ!!ここは私の戦場だ!!」
すると今度は別の騎士が反論した。
「隊長…!それは危険すぎます!」
「いいから、帰れ!」
「し、しかし!隊長…!」
「早く帰れ!!ぐずぐずするな!!男ならもっとしゃきっとせんかい!!」
最後の方、どこぞのオカンみたいになってるぞ。
「………わかりました、どうか無事でいてください。母さん」
マジでオカンだったの!?
「誰が母さんだ!!」
あ、やっぱり違うみたいだ。
その騎士は、フィリアさんのツッコミを無視し、後ろを振り向いて、
「撤退だ!!」
と叫びながら走り出した。
その後に続いて他の奴等も撤退宣言をしながら走りだす。
「撤退!!」
「撤退するぞ!」
「撤退だ撤退!!」
……うん。普通、撤退宣言する時は一人が一回言うだけでいいよな。
「撤退!!」
「撤退だ!!」
「撤退!」
「ヒャッハー!!撤退だー!!」
「なんでお前そんなにテンション高いんだよ!?」
「撤退!!」
「俺、この撤退が終わったら結婚するんだ……」
「誰だ今死亡フラグ立てた奴!!」
「撤退!!」
「美少女!!早く撤退するぜ!?」
「は!?俺!?って、うわっ!?」
完全に、撤退する騎士達を見送る形になってしまっていた俺は、騎士の一人に姫抱きされる形で一緒に撤退した。
それにしても、まさか俺の人生で他人に姫抱きされる時が来るとは思わなかった……。
まあ、今まで男だったけど、今は少女だもんな。このくらいはあっても不思議じゃないか。
でも、この構図は恥ずかしい。折角持ってもらってるところ悪いが、下ろさせてもらおう。
「なあ、この状態は恥ずかしいから、降ろして欲しいん…」
「撤退だ!」
「えっと、だから…」
「撤退だ!!」
「姫抱きは恥ずかしいから…」
「撤退だ!!!」
「撤退宣言はもういいよ!!降ろせっつってんのが聞こえねえのか!この王国騎士団撤退宣言部隊美少女姫抱き専門班隊員!!ていうか、撤退宣言しながら走ってるの恥ずかしくないのかよ!?」
それに答えたのは、一番先頭を走る、最近おっさんに仲間入りしたくらいの年齢に見える茶髪の騎士だった。
一番最初に撤退宣言した騎士だ。
「我々ヒィヴァニゅるり……ヒィヴァニスィリルィユァ王国騎士団に恥は無い!」
噛んだ……。
「例え、今のように自分の国の名前を噛んでしまっても!街中で財布の中身をぶちまけても!野良犬に追い掛け回されても!何も無いところで転んでも!演説中大事な所で噛んで、言い直そうとしたらまた噛んでしまっても!奇妙なダンスを踊っている所を誰かに目撃されてもだ!!覚えておくがいい!!美少女!!」
「少しは恥じろッ!!ていうか奇妙なダンスってなんだよ!!あと美少女ゆうな!!」
俺がおっさんの騎士にツッコミを入れてると、今度は俺を抱えている騎士の左隣を走っていた、黄色い髪の青年の騎士が俺達の会話(?)に加わってきた。
「おい、ウェル!なに美少女独り占めしてるんだ!俺にも寄こせ!」
「お前は何を言っているんだ!?あと美少女ゆうな!!」
ていうか、俺を抱えてる奴はウェルって言うのか。
あと、ごめん。会話(?)には加わってきてなかったわ。
ちなみに、このウェルって奴は、緑色の髪をした青年だ。
見た感じ、黄色の奴と同い年くらい?
「誰がお前なんぞにこの美少女をやるか!こうゆうのはな、早いもん勝ちなんだよ!!」
美少女ゆう………ああ、なんかもういいや。どうでも。
「なんだと!?お前この間、騎士団の連中と焼肉食べた時、『あ!それ俺が取ろうとしてた肉だぞ!返せ!』とか言って俺の肉奪ったくせに何言ってんだこの肉野郎!!」
「あ゛!?俺の4分の1ピーマンあげたから別にいいじゃねえか!!」
「よくねえよ!!肉と4分の1ピーマンは釣り合わないんだよ!!等価交換が悲鳴をあげるんだよ!!」
「わかったよ仕方ねえな、今度食う時は俺のピーマン全部やるから、それでいいだろ?代わりにお前の肉全部くれよ?」
「いらねえしあげねえよ!!ていうかお前ピーマン嫌いだろ!!あん時の4分の1ピーマンだって、
『フィリア。俺、呪われし歪な形をした緑色の苦い果実を食うと嘔吐するから、フィリアの剣術で4分の1に斬ってくれないか?大丈夫、4分の1ならいける』
とか言って、わざわざフィリアさんの凄腕の剣術で斬ってもらった奴じゃねえか!!」
「凄かったよなアレ。剣一振りしただけなのに、四つに斬れてたもんな」
「ああ、凄かったよ!!それも、投げて空中に浮いてる最中に斬ってたもんな!!あれは確かに凄かったよ!!でもピーマン斬る為の剣術じゃないよなぁ!?フィリアさんの無駄遣いをするな!!」
なんかこいつら面白いな。
「とにかく、何と言われようがお前にはやらん!!この美少女は俺のものだ!!」
「いや、アンタのものでもないんだけど」
「いいじゃねえかちょっとくらいよぉ!!」
「それ、第三者に強制猥褻の誤解を与える発言だぞ?」
「美少女はやらん!!」
「美少女をよこせ!!」
「美少女!!」
「美少女!!」
「「美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女美少女!!!!」」
「うるせぇえええええええええええええええええええええ!!!」
美少女連呼してたアホな男共を、最後尾を走っていたクリーム色の髪の女騎士さんが正義の鉄槌を喰らわせて吹っ飛ばした。
まあ、当然そのアホな男の一人に抱えられていた俺も吹っ飛んだんだけど、さっきの茶髪のおっさんの騎士がキャッチしてくれたおかげで、またバウンドしたりはせずに済んだ。
「美少女美少女うるさいわよ!この王国騎士団美少女宣言部隊美少女姫抱き専門班志願者!!!アンタ達が美少女美少女言ってる間にもう森から出たわよ!!それから、美少女美少女連呼してた所為で美少女が困ってるじゃない!!美少女が好きなら、美少女好きとして、美少女の気持ちを考えて、美少女の為の行動をし、美少女を困らせない為に、美少女を思う気持ちで、美少女の春の息吹は、美少女の……」
「アンタも美少女美少女うるさいわ!!……って、なんか最後の方おかしくなってなかったか!?なんだよ美少女の春の息吹って!!」
「ほら、向こうに町が見えるわ。皆疲れてるから今日はあそこで宿を取りましょう」
俺のツッコミはスルーか。
まあ、意外と言ってることは正しいような気がするし、別にいいか…。
……いや、正しいのか?
「クソッ………ウェル、あとで覚えとけよ…?」
「お前もな………カイル…」
黄色の人はカイルって言うのか。
そんなわけで。疲れたし、あそこの町で宿を取ることにした騎士団一行。
騎士達は町に向かって歩き出し、緑と黄色の馬鹿野郎共も、のそのそと起き上がって町に向かって歩き出した。
そして、何故か俺も町に行くことになっていた。
なんていうか、流れで?
まあ、行く場所無かったし良いんだけどね…。
美少女ぺろぺろ(^p^)