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美少女(物理)  作者: 蘇芳春海
11/11

第十話『「私を侮辱したのよ。私は利口より美人でいたいわ」「ハハハ、見違えたぞ。よい風使いになったな」「ユ●様!」』

 サブタイは本編とは殆ど関係ありません。

 あと、更新遅くてすみません。スランプだったんです。・゜・(ノД`)・゜・。

 剣を振るう、剣を弾かれる、剣が向かってくる、剣を弾く、そしてまた剣を振るう。

 そんなやりとりを繰り返す勇者アツシと赤髪のアンゾルゲ。双方一歩も引かぬ戦いが、この訓練場で繰り広げられていた。


 アンゾルゲが剣を振り下ろす。


 それをアツシはギリギリでかわす。


 特に慌てた様子もないアツシから、先程の斬撃が見えていたことが分かる。


「……チィッ!!」


 大きな舌打ちをしたアンゾルゲは、剣を横に薙ぎ払う。


「遅い」


 しかし、アツシは後ろに少し跳ねるだけで簡単に避けてしまう。


 今度はアツシが剣を逆袈裟懸けに振るってきた。


「甘いッ!」


 アンゾルゲはそれを難なく避ける。


 一見、二人とも互角の戦いを繰り広げているように見えるが、アンゾルゲは息が切れてきていた。大きく肩を動かして息をしている。

 対するアツシの方は、多少は呼吸が乱れてきているが、アンゾルゲ程ではない。


(やはり、強い…!)


 アンゾルゲは、前回の戦い(ケンカ)で負けていた。アツシの右ストレートを顎に喰らって気絶したのだ。

 その後、アンゾルゲはいつもの倍の量の鍛錬を積んだ。異世界などという得たいの知れない所から来た蛮族に負けたのが悔しくて。


 しかし、相手は『勇者』であるアツシだ。主人公補正とも呼べる勇者の能力を持っているアツシに、僅か数日で追いつくことなど出来るはずが無いのだ。それにアツシも、アンゾルゲと同じように成長しているのだ。


「フッ!」


「ッ!」


 アツシの斬撃がアンゾルゲを襲う。アンゾルゲは流石に余裕が無くなってきたようで、大きく跳ねてアツシとの間隔を開いた。


 両者とも剣を構え直し、呼吸を一旦整えて睨み合った。


「…………」


「…………」


 交わす言葉は無い。今、二人の間に言葉は意味を成さない物となっていた。もっとも、二人とも戦闘中に喋れるほどの体力は残っていないが。


「ハッ…!」


「フッ…!」


 二人が動いたのは同時だった。同時に剣を振りかぶり、同時に走り出した。

 アツシが倒れるか、アンゾルゲが倒れるか。おそらくこの一撃で全てが決まるだろう。二人は時間が経つのが遅く感じるほど、この一撃に集中していた。


 段々と狭まっていく互いの距離。今まさに、二人の戦い(ケンカ)が決着しようとしていた。


 しかし、そんな時、それはやってきた。



 ガキィン!!


 ドスッ!!



 突如として響く二つの音。

 何が起きたのかわからない二人の間には、気が付くと一人の少女がいた。右手には光り輝く剣を持っていて、その切っ先は、いつの間にか剣から手を離していたアンゾルゲの喉元をとらえていた。そして、左手には……。



 勇者アツシの聖剣『エクスカリバー』が刺さっていた。



(これは……まさか!?)


 アツシは戦慄した。目の前の少女が、いつ間に入ったのか分からなかったからではない。少女の取った行動に見覚えがあったからだ。


 そして、少女は静かに、しかし重く響くような声で言った。



「双方動くな!動けば竜かなんかの鱗より削りだしたこの剣が、セラミック装甲も貫くぞ…!」



「どこのユ●様だよ!!」


 アツシはツッコまずにはいられなかった。
















 一度言ってみたかったんだよね、この台詞。


 そんな訳でこんにちわ。桐江憂改め、ユウ・キリエちゃんだぜ。

 この長ったるくて迷惑極まりない二人の喧嘩を止めるべく参上したでござる。


「ていうか『竜かなんかの鱗』って何!?なんでそこあやふやなの!?」


「仕方ないじゃん、フィリアさんの剣を勝手に拝借してきただけなんだから」


 そう、何故俺が剣を持っているのかというと、こちらに来る途中、フィリアさんの腰に挿してあった剣を勝手に持ってきたのだ。

 後ろの方から「え?マジで?うわっ、ホントに無い!」って声が聞こえた気がするけど、気のせいだろう。


「そんなことよりもアンタ、俺の腕に聖剣が刺さってる事に対する心配とかは無いのかよ」


「あ」


「あ、じゃねえよ。人の身を案ずることを忘れるとは、勇者の片隅にも置けんな、貴様」


「うっ…そ、それは…」


「どうしてくれるんだ?この可憐な少女の穢れなき白い肌を飢えた獣の牙で穢してくれて。どう責任を取るつもりかね?」


「なんでそんな官能小説にありそうな表現方法なの…?あと、口調変わってない…?」


「うぅ……痛いよぉ…痛いよぉ…、左前腕(ひだりぜんわん)腕橈骨筋(わんとうこつきん)に刺さった聖剣が尺骨(しゃっこつ)に響いて激痛を与えてくるよぅ……」


「無駄に詳細だね!?ていうか、目じりに涙浮かべてても、口が笑ってるから意味無いよ!?」


「それにしても、本当の所、いたいけな少女の腕に剣が刺さってても取り乱さないとか、アンタどんな神経してんだよ」


「いや、君のボケの嵐でそれを心配する暇が無いって言うか…」


「あぁ?何か言ったか?」


「………いや、何も…」


 まったく、大事なところが抜けてやがるなコイツ。いや、勇者としてじゃなくて、人として。

 まあ、俺から刺さりに行ったんだから、勇者アツシは特に悪いことしてないんだけどね?……喧嘩していたことは除いて。


 さて、次は赤髪のアンゾルゲに物申すか。


 俺は、剣を向けられて動けない状態のアンゾルゲを見つめて、こう言った。



「アンタが赤●のアンだな?」



「!?」


「ヴァヴォッフォッ!!」


 俺の見えない所で勇者アツシが噴出す音が聞こえた。ていうか、噴出した音、独特過ぎんだろ勇者アツシ。


「待て、貴様!私の名前は赤毛の●ンなどではないぞ!?アンゾルゲ・アントマンだ!」


「黙れ三下。アンタなんか●毛のアンで充分だ。ていうか、アンゾルゲってどっちかっていうと家名じゃね?なあ?勇者アツシ君」


「いや、知らないけど…」


 確かドイツあたりにあった気がするんだけど?まあ、いいか。


「それよりも、俺は赤毛のア●に言いたいことがあるんだ」


「いや、だから私の名前は赤毛●アンでは無いと言ってるだろう!?」


「うるせぇ!!自己紹介したにも係わらず未だに騎士団の連中から『美少女』って呼ばれ続けている俺よりかはマシだろうが!!」


「いや君の方がマシでしょ!!」


 赤●のアンが何か言う前に勇者アツシがツッコミを入れてしまった。


「そんなことより赤●のアンアン!」


「●毛のアンアン!?」


 おい、うるさいぞ勇者アツシ。


「喧嘩するのは構わないけど、他人に迷惑は掛けるな!お前の愛する騎士団長さんだって困ってるぞ?」


「そんなこと貴様には関係が………いや、フィリア団長のことは尊敬しているだけで愛しているわけでは無いんだが?」


「どっちでもいいだろ。とにかく、喧嘩はもうすんな。そして、いたいけな少女の手を煩わせた事を反省しろ」


「何を言っているのだ貴様は……。というか、いたいけな少女って自分で言うものじゃないだろう……」


「あぁ?何か言ったか?」


「………いや、何でもない…」


 俺の必死の説得が功を成したのか、赤●のアンアンはあっさりと引き下がった。まあ、喉元に剣を突きつけっぱなしだったのもあるかもしれないけど。

 しかし、勇者アツシ君。何故君はそんな呆れた表情をしているんだい?妙に腹立つぞ?


「…分かった、他の騎士達に迷惑が掛かったのは認める。後で謝罪をし、罰も受けよう。しかし、そこの勇者の行いはどうしても許せない。せめて、フィリア団長の命令だけは聞いて欲しい」


「だって手からすっぽ抜けるんだもん」


 とりあえず、喧嘩が悪かったことは認めたか。でも勇者アツシは許せないと。

 俺の目的は、二人の喧嘩を止める事だけだ。はっきり言って勇者アツシの問題なぞ知らん。……と、言いたい所だが、その問題を解決しなければこの二人はまた喧嘩するだろうな。


 あと、勇者アツシよ、それは理由にはならないぞ?


「じゃあ、勇者アツシ君には勇者アツシ君以上に強い人に戦ってもらえばいいじゃん。そうすれば、生存本能が危険を察知して剣を手放さないでしょ」


「生存本能って君……。でも、そんな人簡単に見つかるのかい?自分で言うのもなんだけど、俺結構強い方だよ?勇者だし」


 いや、本当に自分で言うなよ勇者…。勇者だし、じゃねぇよ。御伽噺に出てくる(本当の)勇者はそんなことは言わないぞ?なんかハラ立つなコイツ。


「じゃあ、騎士団全員対勇者アツシで模擬戦をしよう。そこまで強いって言うんなら」


「え」


「もちろん騎士団長のフィリアさんにも参加してもらう。なんだったら黒い勇者にも参加させるぞ?」


「ちょ、ちょっとま…」


「ルールは簡単。化け物級に強い勇者を騎士団全員でボッコボコにするだけ。勇者が倒れれば騎士団の勝ち。逆に騎士団が全員倒れれば勇者の勝ち。魔法あり、魔術ありのなんでもありなバトル」


「なんだその面白そうなイベントは。何が何でも実施させたいな。あと美少女、剣を返してくれないか?」


 フィリアさんが会話に加わってきた。まあ、フィリアさんは勇者アツシに対して相当鬱憤が溜まっていたみたいだからな。良いストレス解消になるだろう。


「ああ、勝手に持って行ってすまなかったな、フィリアさん。あと美少女言うな」


「いや、構わないさ。君のお陰で、また要らぬ苦労をせずに済んだ」


 そう言って、俺からこの『竜かなんかの鱗より削りだした剣』を受け取るフィリアさん。

 ちなみに、なぜ竜かなんかだと思ったかというと、ただなんとなくそう思っただけである。本当に、特に理由はない。某風の谷の作品に出てくる、蟲の王みたいな名前をした生物の皮からは確実に削りだしてはいないだろうと思ったから、代わりに適当に竜かなんかと言っただけである。竜だという確証は全く無い。


「黒いのも参加するだろう?第一回勇者フルボッコ大会」


「なんか大会になってる!?」


「当たり前だろう?こんな面白そうな催しに参加しない奴なんかどうかしている。なあ!皆!」


『オウ!!』


「なにこの今まで見たことが無いほどの団結力!?」


 おおぅ、適当に言っただけなのに皆乗り気になっちゃった。可哀想に勇者アツシ君。まあ、元から勇者アツシ君は調子に乗ってる節があったからな。ここいらでちょっと、痛い目見た方がいいかもしれないな。


 すると、フィリアさんが一歩前に出て、持っている剣を頭上に掲げた。

 ていうかあの人、間違いなくテンション上がってるな。あんなに楽しそうな獰猛な笑みをしてるし。完全に殺る気満々じゃないか、アレ。


「さあ、武器を手に集まれ皆!見事この勇者を討ち取れた者には、美少女からご褒美が貰えるぞ!!」


『ウォオオオオオオオオ!!』


「ちょっと待てフィリアさん!俺はそんなこと一言も言ってないぞ!?ていうか何でその程度の事で団の士気が上がるんだ!?あと美少女言うな!」


「行くぞお前達!!勝利を掴むぞ!!ヒィヴァニすりゅ……ヒィヴァニスィリルィユァ王国騎士団の名に懸けて!!」


『ダッシャァアアアアアアアア!!』


 なんかよく解らないけど、ついに戦いの火蓋が切って落とされた。それにしても、結団力高ぇなこの騎士団。


「その程度で王国騎士団の名に懸けるの!?ていうか君ら『ダッシャァアアアアアアアア!!』ってどんな掛け声だよ!!あとフィリアさん、さっき噛んでなk」



――ギャアアアアアアアアアアア!!



その日訓練場から放たれた悲鳴は、寝室で仮眠を取っていた国王にまで聞こえた。
















 結局、勇者フルボッコ大会は騎士団の勝利で終わった。

 最後、勇者にトドメを刺したのはカイルだったので、カイルに俺からご褒美をあげなくてはいけないらしく、非常にテンションが下がった。

 なんでこんな、俺からご褒美が貰える程度で鼻の下を伸ばせるようなアホ面野郎にそんなことしなくちゃいけないんだ。ていうか鼻の下を伸ばすな。何考えてんだ。


 仕方ないので「何が欲しい?」と作り笑顔で訊いてみたら、「君が欲しい(キリッ」とかほざきやがったので、顔面に平手打ちを喰らわせて張り倒し、「キモイ」「ウザイ」「新生児からやり直せ」などの暴言を吐きながら何度も蹴り飛ばし、最後に、

「貴方程度の人がこの私と肩を並べて一生を過ごせるとでも思っていたの?生憎、私は貴方みたいな弱くて、小汚くて、死んだ魚みたいな体臭がして、ズブで、ゴミで、豚の寝床よりも格が下なヒトはタイプじゃないの」

 と言うと、とうとう泣いてしまった。


 宥める気も慰める気も謝る気も無かった俺は、そのまま訓練場を出て行った。去り際に「冗談だったのに……」というカイルの声が聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。


 ていうか、二人の喧嘩止めるついでに、二人をボコって俺のスペック計ろうとしてたのに、左腕に聖剣刺しただけで終わっちゃったし。ちなみに、左腕に受けた傷は自己再生でいつの間にか治ってた。


「それにしても酷い言い様だったな、美少女」


 王城の廊下を歩いてると黒い勇者が追いかけてきた。


「アンタまで美少女って呼ぶのか」


「イヤか?」


「…確かに顔が整ってるのは認めるけどさ。何ていうか、小恥ずかしい」


「そうか。なら私は君の事を何て呼べばいい?」


「名前でも家名でも好きなように呼ぶといいさ。……そういえば自己紹介してなかったっけ?あ、昨日の謁見の間での時に居たか」


「じゃあ、イブラヒモビッチでいいか?」


「なんでだよ!?どこをどう繋げたらそうなるんだよ!!脈絡無さ過ぎるだろ!?」


「え?君の名前『ビェリナ・イブラヒモビッチ』じゃなのか?」


「ちげえよ!!ユウ・キリエだよ!!」


「冗談だ」


 もうヤダ疲れるこの人と話してるの……。部屋に戻って本でも読んでよう…。

 部屋に戻るべくトボトボと歩き始める俺。


「どこへ行くんだ?」


「俺に宛がわれた部屋……。着いて来るなよ…?」


「ナニをするんだ?」


「ナニもしねーよ!…ただ、本を読むだけだよ」


「じゃあ、君にはこの薄い本を……」


「だからナニはしねーっての!!ていうかどこから出した!!」


「腕が4本あるガチムチの大男と腹部に巨大な口を持つ男の純愛ラブストーリーなんだが」


「何だそのニッチなジャンルは!?しかもホモかよ!!興味あるとでも思っていたのか!?」


「私も少しだけ読んだことがあるが、あまりにも気持ち悪かったので2ページでやめたな」


「なんでそんな物を渡そうと思ったんだよ!!」


「仕方ない、ならばこのピンク色の……」


「だからナニはしねーっての!!」


「……じゃあ、何なら良いんだよ。イブラヒモビッチ」


「何もいらねぇよ……って何ナチュラルに『イブラヒモビッチ』って呼んでんだコラァ!!」


「HAHAHA!今度から騎士団の連中全員に『イブラヒモビッチ』って呼んでもらえるようにしておこうか?」


「ヤメロォ!!マジでやめろよ!?それ!!冗談でも絶対にやるなよ!?」


「勿論冗談だからやらないさ。フハハ、心配性だな。ユウちゃんは」


「―――ッ!!もういい!!帰る!!」


 なんなんだあの黒い勇者は!俺はどっちかというとボケの方なんだぞ!?ツッコミなんて慣れてないんだからやらせるなよ!!ツッコミなんて勇者アツシだけで充分だろ!!


 会話を打ち切って、怒ってることを隠さずに歩いていく俺。


 去り際に黒い勇者の声が聞こえた。



「フッ、元気の良い子は好きだ」



 うぜぇ……。




 パソコンが二台壊れました。


 パソコン1「とうとう残ったのは私だけか…。だが、今までの奴らを倒しても何の問題もない。四天王などと呼ばれてはいるが、全ては俺一人いれば事足りるのだからな……!」


 ちなみに、5台目のパソコンは年寄り(98)なのでご隠居してます。


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