記憶喪失の難しさ
第30話~!
これ書くのにあまりに行き詰って半日クオリティの短編小説なんか書いちゃったよw
読み返して何やってんだか・・・と。
まぁ、とにかくでけたので、どうぞ読んでくださいませ♪
エノーラに泣き付いた私に軽い鉄拳制裁を加えたクレメンスは、なぜか何度も小さく溜め息をついてチラチラと私の方を伺っていた。
可笑しいな・・・、完璧なフリだったはずだが、なんでそんな顔?
「クレメンス様、どうかなさったんですか?」
「なにがだ?」
「いや、なにがって・・・ねぇ、エノーラ?」
「はい、・・・ひょっとして例の事ですか?」
「あ、いや、そうじゃない。心配を掛けてすまなかった」
エノーラに突っ込まれてようやくいつもの調子に戻ったクレメンスは、苦笑を浮かべて謝った。
「それならよろしいのですが・・・」
若干心配そうな顔をしたエノーラだったが、再度クレメンスが苦笑を浮かべると何か納得したのか再度尋ねることはせずに、そのまま歩き始めた。
エノーラがそんな感じだった為に、ルミカもこれ以上聞くのも空気が読めていない感じなので、しぶしぶ追求を諦めた。
それから、四人はたわいも無い話をしながら街道を歩いていた。その中でルミカは、初日に見た魔物?と動物?らしき生き物が実はクルガン以外は動物、しかも食用であったことがわかり食文化の違いに泣きかけた。
「あっ、そう言えばクレメンスに聞きたいことがあったんだった」
イロイロと話していたために、今朝の一件について話を聞くことを忘れていた。気になっているので本人ではなく、クレメンスに聞いてみることにした。
まぁ、4人で固まって歩いているので、自然とそれぞれの話が耳に入ってくるのだが。
「聞きたいこと?」
不思議そうな顔をするクレメンスにはエノーラでなくて自分に聞かれたことが意外だったようだ。
「そうそう、私さ、昨日エノーラに朝起こしてくれるように頼んだでしょ?」
「あぁ、・・・・・・・それが?」
時間通りに降りてきたので、特に問題があったとは知らないクレメンスは訝しげに聞いた。
エノーラは気まずそうに視線を明後日の方に向けて、聞こえないフリを敢行している。
「朝、目が覚めたら部屋にエノーラがいたんだけど・・・」
「「「・・・・・・・・」」」
カインは、いまいち理解できないのかパチクリ瞬きをし、クレメンスは目を細めてエノーラをじとっ、と睨み付けた。
言われた当の本人は顔を会わせないように、更に遠くを見るようにしていた。
「・・・ん?部屋にいた?鍵かけて無かったのかよ」
「ん〜ん、鍵は掛けてたわよ?でもいたのよ」
「はぁ?なんだそれ・・・寝呆けてたんじゃねぇのか?」
多分誰が聞いても同じ反応を返すだろう。
普通に考えれば鍵の締め忘れ、夢、もしくは寝呆けてたか、部屋に入れたのを忘れたかと言ったところだろう。
残念ながらそのどれでもないのだが・・・・・・。
「エノーラ、お前な・・・・・・」
「すっ、すみませんクレメンス様!!えっと、そのですね、これにはちゃんとした理由が・・・・・・」
訳の分からないカインを余所に、クレメンスは引きつった笑みを浮かべてエノーラにお説教を始めようとしているようで、何やら不穏な空気を醸し出していた。
エノーラもなんとか免れようと思っているのか、しどろもどろになりながらも、一生懸命弁明を試みていた。
「え〜っと、どうなってんだルミカ?」
「あ〜っと、ね・・・朝部屋に入ってたのはエノーラが魔術で鍵開けたから、らしいわよ」
「へぇっ・・・・・・・・・って鍵を開けた!?」
やはり異常な事は異常なのだろう。
鍵を開ける魔術は一見大したものでは無いように見えるかもしれないが、実際は使いようによっては非常に恐ろしいものになる。
例えば金庫のような物があったとしても、この魔術があれば誰でも中身を取り出すことができるし、たとえ鍵がかかっていたとしても楽々扉を開けることが出来てしまうのだ。
とどのつまり、犯罪を犯し放題になるのだ。
これをもしも一国や盗賊なんかが使用出来る様になれば、どれほどの脅威になるかわかったものではない。
それを分かっているからこそ、つい聞いて見たくなったのだ。
どうやら本人に大それたことをしている自覚は無いようではあるが・・・。
「朝から悪かったなルミカ」
ひとしきり説教を終えたのだろう、さっきまで後方をエノーラと歩いていたクレメンスが前方にいたルミカに謝った。
エノーラはしょんぼりと肩を落として少し後ろを歩いているが、遅れないスピードで歩いてはいる。
「いや・・・別に部屋に入られた事はたいして気にはしてないけどさ・・・・あ~、カインとりあえずエノーラについててくれる?流石にあれじゃ・・・いつ転けても可笑しく無いから」
「みたいだな~。わかった、任せろ」
クレメンスに怒られたのが余程応えたのだろうか、足元が若干ふら付いたような感じになっている。
カインとしてもエノーラは大事な旅の仲間なので、励まそうとしてくれているようである。
「・・・・・話が逸れたけど、あれってエノーラの所謂、独自の魔術なのよね」
「・・・それがどうかしたか?」
「う〜ん・・・ひょっとしてエノーラって凄い魔術師だったりする?」
「そう言う訳か・・・なら期待には沿えないぞ、あいつは普通の魔術師だ」
「え〜?それって本当に?」
いかにルミカが記憶喪失〔ウソ〕であったとしても、エノーラのレベルが普通だなんて思えなかった。
知識、技術、魔力・・・どれをとっても普通ではない。
特に魔力なんてルミカが会った人間の中でも一番高い、それも頭一つ分飛び抜けていると言ってもいいほどに。
それなのに、クレメンスは普通だど言い張るのだ。怪しんで当然であろう。
「何が言いたい?」
「いや、私が会った魔術師の中ではエノーラが一番強かったから不思議だな〜って」
「・・・・・・それも分かるのか?」
「まぁ・・・何となくだけど」
微妙な顔を浮かべたクレメンスは、溜息を吐いて思案するように空を仰いだ。
その反応だけでもエノーラがちょっと普通の枠から離れているのが分かってしまうのだが・・・・・・・・・。
「お前にはエノーラがどう写る?」
「どうって・・・・・・・ちょっと抜けてるところがあるけど凄く良い人?」
そもそも記憶喪失〔ウソ〕のルミカや元奴隷のカイン何かを平気で連れていくと言い切るほどお人良しな彼女であるが、それが一体なんの関係があるのだろうかと首をひねったルミカであった。
「そうだな、それでいて自分に対する評価が異常に低く、常識を知っている筈なのに自分の容姿や実力を丸っり理解していない」
「それって・・・・・本人は実はすんごい魔術師なんだけど自分では理解してないし、あんまりひけらかしたりしないから他の人間も知らないとか・・・・まさか、そんなオチ―――――――」
「そういう話だ、まぁ・・・・俺があまり人前では使わないように言ってたからな」
「えっ?それって本気?」
「本人は大真面目だ、そういう訳だから、あまりエノーラのことについてはあまり騒ぎ立てないでくれ・・・ヘタに周囲に知れると色々と厄介だからな」
それはルミカも十二分に理解しているつもりだ。
というかそもそもその事について忠告をしてくれたのはエノーラだったような気がするのが・・・・・。
何はともかく、エノーラがとっても大切な友人であることは変わりないのでこれ以上の詮索はするべきでは無いのかもしれないが、一応聞いておく。
「一応聞いておくけど、エノーラって普通とは言えないのよね?」
「そうなるな・・・・・・」
「何て言うのか・・・・あんま人のこと言えないじゃん・・・・・」
散々人のことを異常な人間扱いしていたが、エノーラも大して変わらないではないか。
そんな思いがルミカの心の中によぎったが、クレメンスから若干憐みを含んだ視線を感じると、それ以上の言葉を吐き出すこともできなくなった。
「・・・・・・苦労してるのね、クレメンス」
「お前にだけは同情されたくなかったがな・・・・」
どこか達観した視線を浮かべるクレメンスはエノーラに関することはほとんど慣れてしまったのだろう、その上、身元不明の明らかに怪しい女と、元奴隷でハーフの男の子を連れて歩くなんて、・・・・不憫としか言いようがないではないか。
「うん、これからは迷惑かけないように気をつけるわ」
「・・・・・・そうか」
一人で勝手に結論付けたルミカがやる気満々で宣言をしたが、クレメンスはどこか疲れたように頷いたのだった。
疲れているらしいクレメンスをほっぽったルミカは、そのまま落ち込んでいたエノーラのもとへと近づいた。
「エノーラ少しは元気出た?」
「はい・・・・どうしてあんなに怒ったんでしょう・・・・?」
「・・・・・・うん、どうしてだろうね~?」
「えっ?」
「うん?何かなカイン?」
「ナンデモナイデス・・・・・・」
ルミカの黒い笑みを真正面から受けたカインは視線をそらしてそう答えるしかなかったのだった。
それからもエノーラはしきりに不思議がってはいたのだが、ルミカが巧みに他の話題を振るので、次第にそのことについて考えるとはなくなった。
まぁ、クレメンスがちょっと呆れたような顔をしていたが、それ以上何も言ってくることはなかった。
「なぁ、ルミカそう言えばお前に聞こうと思ってたんだが」
「ん?急にどうかしたの?」
未だにそのあたりにいる(動物)に微妙な視線を向けていたルミカは、急に真剣な顔をしたカインに小首を傾げた。
「お前記憶喪失なんだろ?なんか憶えてることとか、思い出したことってねぇのか?」
「ええっと〜、無い、かな?」
そもそもが記憶喪失ではないので、この世界で思い出すことなんて無いのだが・・・・それをどうやって誤魔化すか考える必要があるようだ。
「そうですか・・・、図書館で地図を見たときもいまいち反応がなかったですもんね・・・」
「地図見て思い出せないってどうなんだ?・・・あっ、ひょっとして・・・すげぇ世間知らずの貴族とか?」
「それは・・・ある、かもしれませんね!衣服はそれなりですし、魔術も使えてお金持ち・・・これですね!!」
「ギルドに捜索の依頼ってねぇかな?」
いつの間にかエノーラとカインはルミカの身元捜索の話をしているが、ルミカからしてみればたまったものではない。
何がって・・・居たたまれなさ過ぎる所だ。
妙な勘で未だに話すことを躊躇っていたのだが、精神的に痛いものがある。
主に良心的なものが。
「お二人さん!今はそこまで困ってないから私の事はゆっくりでいいから!」
「何言ってんだ!早く記憶戻したほうがいいに決まってんだろ?ほら、おまえの親とか探してんじゃねぇのか?」
カインとしては親切心でいっているのだろうが、嘘をついている身としては全くもってありがたくない。
小さな親切大きなお世話というのはまさにこのことであろう。
引きつった笑みを浮かべたルミカに手を差し伸べたのは、意外にもクレメンスであった。
「その辺にしておけ、あまり騒ぐな」
「あっ、わかりま、あ!わかった」
殊勝に謝ったカインは、不思議そうに首を傾けた。
ルミカのことについて知りたがっているのは自分よりもクレメンスのほうであったと思ったのだが・・・。
その視線に気付いているのかいないのか、クレメンスは正面を向いたまま続けて言った。
「この辺りで最近ギーズが目撃されているらしいからな、騒ぎ立てて無駄な労力を使いたくはない」
「ん?・・・・ギーズ?それって私達が初めて会った時にクレメンスが倒したんじゃないの?」
数日前の事なのでよく覚えているが、確かにクレメンスが始末したはずであった。
その証し足る牙と毛をギルドに持っていったはずだ。
「ちがいますよルミカ、アレは突然変異を起こしたギーズです」
「ってことは…ギーズってのは種族名で、他にもわんさかいるってこと?」
「はい、ただしあのような大きさの物はいませんよ、一般的にギーズは2スイ、単体ではなく集団で行動する魔物ですから」
話を聞いてから以前出会ったギーズを思い浮かべたルミカは面食らったような顔をした。
ルミカが出会った魔物はどちらも異常に巨大だったので、それが普通なのだと思っていたのだが、どうやら違うらしい。
ちなみに2スイは凡そメートルみたいな物だ。
若干差があるがたいしたものではないので、ルミカはそう覚えることにした。
「ギーズは聴覚と嗅覚が優れているからな、大声を出すと襲われかねないぞ・・・・まぁ、こちらが仕掛けない限り基本的には襲ってはこないがな」
「了解〜」
クレメンスの忠告に軽く返しながら視線を正面に戻したルミカは、立ち止まって固まった。
それに気が付いたエノーラが同じく視線を向けてまた固まった。
「どう・・・・・」
「固まるな!!動けっ!!」
カインが声を掛けるのと同時にクレメンスが怒声を響かせた。
彼の手には既に剣がぬかれ、ルミカ達の前に油断無く立っていた。
その声に弾かれたように刀の柄に手をかけて引き抜いた。
・・・・そこには先程までのゆるりとした空気は全く存在していなかった。
なぜならば・・・・・・・
ルミカ達の遥か前方から土煙を巻き上げながらこちらへやってくるギーズの群れがあったからだ。
次は書いてみたかった戦闘ですね!
なんか途中まで書いたけどなんだろう、戦闘って難しいよ!
ちょっ、だれか分かりやすい描写の方法を伝授してください!切実に!
短編どうしよう、書き直そうか、消そうか・・・今読んでみるとアレ?ってとこ多かったorz
でも息抜きだし・・・ほっといて行き詰った時にでも続きを書いてみようかなぁ・・・?