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旅立ちの朝

第28話~!

更新が遅れまして申し訳ありません。




遠く、山の向こうから、明るい光がその姿を現し始める。

朝日が昇ったのだ。

それとほぼ同時刻、エノーラはゆっくりと目を覚ました。

エノーラは自分の考えている時間ごろになると、まるで起きなければいけない、といわんばかりにパッチリ目が覚めるのであった。

別に睡眠が浅いわけではないが、なぜか思った時間通りに起きられるのだ。

元々、気配や音には敏感で睡眠が浅かった方であるが、最近は夜も安心してぐっすりと眠れるようになっているので、寝れていないわけではない。



完全に目を覚まさせるために、顔を洗ってスッキリさせ、深く深呼吸をした。



「おはようございます」



別に誰かがいるわけではない、自分に、世界に、神に、向けて言うのは毎朝のことであった。

これは、エノーラにとって非常に重要な挨拶であった。



「さて、着替えたらルミカを起こしに行かないと・・・・・・」



脱衣所へ服を着替えたエノーラは、すぐにルミカの部屋へと向かったのであった。



一方くだんのルミカであるが、こちらは身動き一つしないでぐっすりと寝入っている。


コンコン・・・・・・・


最初は控えめのノックであった。

しかし、物が動く音も声も聞こえなかった。


コンコンコンコン・・・・・・・・


「ルミカ~、朝ですよ~」


続いては強めのノックと呼びかけ。

布ずれのような、身動きをした音がするが、返事はない。



「・・・・・・困りましたね・・・・・」



これ以上大きな音を立てると、他の宿泊客にも響いてしまうかもしれないので、これ以上はできない。



「あ、そうですね、そうしましょう!」



しばらく何かを思案していたエノーは、納得したように頷くと、小さな声でブツブツ呟き始めた。







ぐっすりと眠っていたルミカは、なにやら部屋の異変を感じて、寝ぼけ眼で部屋の中を見渡した。

と・・・・・・・、そこにいるはずのない人影を見つけて慌てて飛び起きた。



「え・・・・・・!エノーラ!?なんでここに!?」


「ふふっ、すみませんお邪魔しちゃいました」


「えええええっ!?ど、どうやって?鍵・・・・・は、あるわね・・・・」



驚きながらも瞬時に物事を理解したルミカは慌ててテーブルの上に放置してあった鍵を確認する。

確実に動いた形跡はない、なぜなら、その上にルミカが物を置いていたからである。

であれば、そうやって進入したのか?



「すみません、ちょっとマズイと思ったんですけど、あれ以上音を立てると他の方のご迷惑になりますので」


「あ、さっきの遠くで聞こえてたヤツエノーラだったのか・・・・ごめん、気づかなくって」



なんとなく、音は聞こえていたのだが、体と目蓋が重くて動かなかったのだ。

確かに二回目のは声も聞こえていたような気がする。

ルミカが謝ると、エノーラは苦笑を浮かべていた。

起こしてくれと頼んでおきながら起きれなかったことに、ルミカは少し落ち込んでいた。



「こちらこそすみません、部屋に入り込んでしまって」


「あ・・・・・・そうだ!どうやって入ってきたわけ!?」


「実は・・・・・・・・」



そう言ってエノーラが語りだしたのは意外なことであった。

一言で端的に言うならばエノーラは魔術で部屋へ入った・・・・・というものであるが、その過程が驚愕の理由であったからだ。


エノーラは言った。


「実は、私昔から物を良く無くしまして・・・・・、家の鍵とか部屋の鍵とか、今まで持ってたものをどこにおいたか分からなくなったりとかよくあったんです・・・・・。そこで考えたんです、流石に部屋に入るのは何とかしないといけないんで、魔術で鍵を開けられないのだろかと!それで作った魔術なんですけど、クレメンス様にはあまり使わないようにと言われているんですけどね・・・・・・まぁ、今日は許してくださると思います」



ルミカも精霊たちから魔術の理論というか、意味を教えてもらったし、何よりも自分には想像魔術という代物がついているのだが、エノーラはそれが無い。

にも関わらず彼女はそれを作り出したのだ。

並大抵の魔術師では不可能のはずだ。



(ひょっとして、エノーラってすっごい魔術師・・・・・・?)



その考えが頭の中を巡り、ルミカはただ唖然とするしかなかった。

後でクレメンスに聞いてみることをルミカは心で誓った。



「それでは、目も覚めたみたいですし、私は部屋へ戻りますね」


「あ、うん・・・・・・起こしてくれてありがとう・・・・・・・・」


「はい、それでは」



にこやかな笑顔を浮かべたエノーラは、そう言って部屋を出て行った。

部屋には呆然としたルミカが取り残されたのだった。


エノーラが出て行った後、ルミカも支度を始めたのだったが、その顔にはすでに疲れの色が見えていたのは、仕方がないことであったかもしれない。




そんなこんなで支度を終えたルミカは、忘れ物チェックと、来た時も美しくというルミカのいた学校の校訓を守り、一度部屋を見回してからその部屋を出た。

部屋の前ではカインが待っていてくれたようで、一緒に下の階へと降りていった。


下に降りると、先に準備を済ませていたクレメンス達が女将さんと話をしてた。



「お待たせ~」


「ああ」


「おはようお嬢ちゃん!とうとう出発だねぇ」


「おはよう女将さん!今までありがとうございました」



感謝の気持ちをこめて深々とお辞儀をすると、女将さんは驚いて目を丸くした。



「あっはっはっ、こっちはそれが商売だからねぇ!また来てくれるんだろう?」


「もちろん!ウォルスに来たら一番に女将さんの所へ行くって約束するわ!」


「期待してるよぉ~!あんたも昨日は良く寝れたかい?」


「俺・・・・ですか?」



自分にも話しかけられるとは思わなかったのだろう、動揺した声色が隠せていなかった。



「そうだよ、自慢じゃないが、ウチのベッドはドワーフとエルフが合同で作った代物でね、すごく寝心地がいいって評判なんだよ」


「そうなの?」


「あぁ、作りはシンプルだけど彫り物とかは綺麗だったろう?それにあのフカフカした寝心地は他じゃ味わえないよ~」


「確かに・・・・・、あそこに転がってるとすぐに眠たくなってくるわね・・・・・」


「そうだろ、そうだろ!あれはウチの主人が方々回って作ってもらった代物でねぇ、魔術でも掛かってるんじゃないかってよく言われてたんだよ」



自慢じゃないがと先においておいたが、それが本心でないのは確実であった。

女将さんは満面の笑顔を浮かべて自慢話をしてくれているのだが、そろそろ動かないとクレメンスの眉間に皺が寄り始めていた。



「カイン・・・・で、どうだったの?」


「あ~・・・・・よく眠れました、ありがとうございました」


「うんうん、子供は良く食べて、遊んで、勉強して、寝るのが一番だからねぇ」


カインのちょっと棒読みゼリフを軽くスルーして・・・・、いや、自分の中でいいように自己完結させると、女将さんはニコニコしながら笑った。



「あ、そうだった・・・・女将さんこれ今日までのお金です。あと、彼の分も一緒に入ってるから」


「はいはい・・・・・、ちょうどだね・・・・・はい、いいよ!」



女将さんは渡された金額を確認すると、ヨシヨシとルミの頭を撫でた。

なんだかすごく子ども扱いされている気がして、非常に恥ずかしい。




「え~っと・・・・それじゃあ女将さん、イロイロありがとうございました~」


「はいよ、また来てね~!」



他の三人がルミカを置き去りにして宿を出て行くので、慌ててその後を追って出て行った。



「お前、随分と気に入られたんだな」


「ん?あぁ、まぁね~なんか話が合うって言うか・・・・・話しやすいって言うか・・・・」


「そうですね、私もあそこの女将さんは好きですよ」


「俺はちょっと苦手なんだけど・・・・・・」



ルミカよりも年下ということもあり、恐らくあれ以上に可愛がられるのを感づいていたのか、カインはちょっとため息を吐いていた。

確かに、さっきのナデナデは非常に恥ずかしかったので、そこはなんともいえない。

ルミカよりも年下のカインが身の危険を感じたというのならば、それはつまり!



「・・・・・・そうか、次に来る時はカインを身代わりにすれば!」


「・・・・・・お前、本当に俺をなんだと思ってんだよ?」


「・・・・・・あたしっ、自分の身を犠牲にできる人って尊敬するんだけどなっv」


「俺か!?俺にそれを求めてるのかお前!?」


「え?誰もそんなこと言ってないじゃないの、ちょっと独り言が出ただけだし」


「ありえねぇ・・・・・そんな独り言とかマジでねぇよ・・・・・・」



ルミカの理不尽な物言いに、こちらもブツクサ文句を言っているカイン・・・・そんな二人のやり取りを見てため息する二人という、非常に変わったパーティーが出来上がった。


まだ朝ということもあり、静かにさせるためにクレメンスがルミカとカインの首根っこを掴んで後ろに引っ張って黙らせたのは、この際、仕方がないのかもしれない。












pcを新しく買う予定だったのですが、予定外の出費でちょっと当分はそれができなくなってしまいました。

弟のpcに保存していた筈のデータも行方不明になってしまいちょっと落ち込みました…。

ってか昨日更新した筈だったのですが、更新できていなかったっていう不思議。

今月中にもう一回更新する予定です。

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