クレメンスとカイン
第27話・・・・皆さんお久しぶりです。
皆さん地震のほうは大丈夫だったでしょうか?私は西日本に住んでいるので被害はなかったのですが・・・TVを見るたびに凄惨な状況が映し出されて心が痛いです。
現在も予断を許さない状況ですので、皆さんも気を付けてください。
このたびの地震で亡くなられた方々のご冥福を祈ります。
夕食も終わり、各自部屋へと戻ることになった。
カインは剣を貰うためにクレメンスと一緒に部屋へ行った。
ルミカとエノーラは簡単な挨拶をしてそれぞれの部屋へ戻ることになった。
「あ~・・・・・・今日も1日頑張ったわ・・・・・・・」
異世界に着てからまだたったの3日だというのに、なんて濃い日々なのだろうかと思う。
明日からは旅に野宿、まさしく異世界の醍醐味を体験することになる。
キャンプなんはかしたことはあるが、それは文明の利器があったので比較的簡単にできたが、こちらにはそれが無いので、いったいどうなるのかが分からない。
「それにしても・・・・・奴隷って、酷いもんなのねぇ・・・・・」
現代日本において、そういう制度は無かった。
精々が教科書の歴史やテレビなどのマスメディアによる放送でその存在を知るくらいだ。
それを実際に見たことがあるような人間がどれだけいただろう。
この世界においても、カインに会うまで奴隷は紙の上での存在であった。
しかし、思っていた以上にソレが身近な代物になってしまった。
「・・・・・・他にも、いるんだろうなぁ・・・・・・」
カインに聞いていた奴隷の生活であるが、自分よりももっと酷い扱いをされている奴もいる。と、彼は言っていた。
できるならば助けてあげたいところであるが、買ったところで何の解決にもならない。
カインを助けたのは目の前にいたからだ。
そうでなければルミカは動かなかっただろう。
ルミカはいくら自分が他人よりも優れているとは言っても、自分のできることはほんのわずかな代物であることを知っている。
いくらお金があっても、いくら戦える力があっても、それをしただけで何一つとして変わることは無いのだ。
変えるのならば、この世界の認識だ。
それを変えるためにはなぜ黒髪黒目、ハーフが忌み嫌われているのか、その根幹であるだろう魔族と呼ばれる存在はなぜ忌避されているのか?それを知らなくてはいけない。
図書館で簡単に調べてみたのだが、詳しく書かれているものは無かったのだ。
曰く、魔族は魔物を使役して他の種族を襲わせている、曰く魔族は神を呪って、神殺しを企んでいる。曰く魔族は世界滅亡を望んでいる・・・・・・。
全て書いてあるのは曰くとか、言われているとか、かなり曖昧な代物ばかりだ。
断定してあるものもあったが、それは明らかに作者の偏見が入っており、実際に魔族に話を聞きに行ったわけではない。
それはとどのつまり、それが事実であるという根拠が無いということだ。
この世界の魔族がどんな姿形をしているのかは知らないが、とにかく一度会ってみようとルミカは考えている。
いざとなったらリミッターを外して応戦すれば死ぬことは無いはずだ。
そんなことを考えていたルミカの所にいつもの魔術師が来て、お風呂を入れてくれたので、明日で出立する旨を伝えると、笑顔でまた来てくださいと言われた。
たいした会話はしていなかったが、ちょっと嬉しい一言だ。
とにかく明日に備えるために、すぐにお風呂に入って床に就いたのであった・・・・・・・。
一方、時間は少し戻るが、クレメンスの部屋では・・・・・・・・。
「とりあえず、これがさっき言っていた剣だ・・・・持てるか?」
「大丈夫、です」
「・・・・・・・別に無理をして敬語を使う必要は無い」
「う・・・・・わかり、いや、分かった」
クレメンスとしては妙な線引きをされているようで少し違和感があったので、そう言うと、
ぎこちないが、務めて敬語を外すように頑張っているようだ。
「それで・・・・・何か話しがあるんじゃないんで・・・・あ、ないのか?」
「・・・・・・・まぁ、そうだな・・・・・お前に一つ聞きたかったんだが、お前は魔族とのハーフか?」
「っ――――――!!!」
「やはり、な・・・・・・・」
ハーフという種族には、この世界にいる種族の数だけいる。
その中で最も数が少ないのが魔族とのハーフである。
「どう、して・・・・・・」
「あぁ、悪いな・・・・っておい、別に非難しているわけじゃないからな!」
顔を青ざめたカインは無意識にそこから後ろへ後ずさって行く、慌てて止めたが、その顔色は優れなかった。
それを確認したクレメンスはそっとカインに近づてその正面に立った。
目の前に大きな影ができたことで、思わず身が竦んでしまったカインにクレメンスが手を伸ばした。
クレメンスが何かするとは思えなかったのだが、今までの経験から体が震えたのだった。
ぽすん・・・・・・なで、なで、なで・・・・・・・
「えっ・・・・・・・・?」
「悪かった、そんなに怖がるとは思わなかったんだ・・・・許せ」
カインは間を抜けた声を上げて、パッと顔を上げた。
そこには、少し困ったような表情をして労わる様にカインの頭を撫でるクレメンスがいたのだ。
今度は別の意味で固まることになってしまったカインであるが、それを承知の上でクレメンスは続けた。
「お前が何のハーフであることはこの際どうでも良かったんだ、別に旅に支障があるわけではないしな」
「だっ・・・・たら、何で・・・・・?」
「・・・・・・・・・・昔、な・・・・・俺の知り合いにいたんだ、魔族のハーフが・・・・・今は、いないが、な・・・・・」
おずおずとカインが聞きに入ったが、クレメンスは懐かしそうに、とても哀しそうな表情を浮かべて暗い口調で言った。
恐らく、その知り合いはもういないのだろう・・・・・・そう、この世には・・・・。
「だから解った・・・・・・お前の持っている魔力の雰囲気と同じだったからな・・・・・・それで思わず聞いたんだ、悪かったな」
「あ、いや・・・・、理由も聞かずに、悪かった・・・・・」
「そういう訳だから気にしないでくれ、俺の好奇心みたいなものだからな」
気まずい空間になることを微妙に思ったクレメンスができる限り軽く言った。
「解った」
「それと・・・・・・もう一つあるんだがいいか?」
「もう一つって・・・・・なんだ?」
重たい雰囲気を一掃したはずなのだが、クレメンスは苦笑を浮かべて言った。
「ルミカのことだ」
「あいつの・・・・・?」
「さっき話していたと思うが、あいつは身元不明の不審者と言っても過言じゃないほど怪しい奴なんだが、まぁ、悪い奴ではないと思う」
「あ~・・・・・それは、俺もそう思うけど・・・・それが?」
「なにか隠しているのは俺もエノーラも気づいているが、未だに話す気配は無い。そこで、だ・・・・・お前にあいつを任せておく」
「・・・・・・・・・は?え?任せるって、どういう・・・・・?」
「どうも俺達二人には話せないことがあるみたいだからな、その分お前にはいくらかガードが緩いと俺は考えてる・・・・こんなことを言うのは何だが、あいつが話したいときに話を聞いてやってくれ」
恐らく、クレメンスは至極真面目に言っているのであろうが、その内容は無駄に過保護な保護者の発言であった、怖いのは全く無意識でそれを言っていることだろう。
それに呆気に取られていたカインは、その内容に思わず笑ってしまった。
ルミカはクレメンスは怖い!と言っていたが、当の本人は驚くほどの過保護振りを披露してくれるというのが可笑しかったのだ。
「・・・・・なんで笑ってる?」
「ぶっ・・・・わりぃっ!ちょっと、思い出し笑いってか・・・・なんていうか・・・」
本当の理由を言えば、確実に怒られるのがわかるので、なんとか言葉を濁すことにした。
訝しげではあるのだが、それ以上の追求は無かったのでホッと一安心であった。
「あ~・・・・その役目だけど、やるよ」
「いいのか?」
「あぁ、元々あいつに拾われた命だからな・・・・・本当は俺、もう少ししたら処分される予定だったんだ。だから、それくらいの事なら任せてくれ」
「そうか・・・・・なら、頼む」
そう、カインはあそこでルミカに買われなければ、処分されることになっていたのだ。
ルミカはカインの話を聞くときに平気そうな顔をしているが、その実、衝撃を受けていたのが分かっていたので、そのことを話してはいなかったのだ。
カインは奴隷として扱われることに非常に抵抗していた。
こういった奴隷は扱いが難しいことから、大抵処分されることが多い・・・・カインもその一人だ。
それを免れて、今は自由の身となっているのは、どう考えてもルミカのおかげである。
今はそれを恩義に感じているし、もし必要ならばルミカを主人として仰ぐのも悪くは無いと思っている。
両親は死んでいるので、心配されるような相手もいない今となっては、ルミカが一番大事だ。
「ならこの件は終わりだ、悪かったな引き止めて」
「いや、・・・・・・・俺、頑張る」
「あぁ、俺も・・・・・できる限りは」
クレメンスも同じ気持ちであるだろうことは間違いないのだろうが、一瞬躊躇った後に言った台詞は若干積極性にかけていた。
何か事情があるのはクレメンスも同じのようだ。
「明日も早い、さっさと寝るんだぞ」
「あぁ、また明日」
「また明日、な」
こうしてそれぞれの夜はゆっくりと過ぎていったのであった・・・・・・・。
とにかく今できることは節電と募金でしょうか?
全国の皆で節電や募金をしましょう。
今こそ私たち日本人の団結が必要な時です。
皆さん頑張りましょう。




