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自由なのに不自由

第23話!

気がついたら一週間以上たってたという・・・なんというマジック!



二人が会話を一段落つけた頃に、着替え終わったらしいカインが声をかけてきた。



「終わったぞ」


「ん?丁度良かったわ、こっち来てくれる?」



そう言ったルミカの前に姿を現したカインは、将来的に男前と予想される美少年であった。

普通の石鹸で体を綺麗にしただけであったはずなのに、予想以上のビフォーアフターを体験することになった。

思わず、やはりこの世界には無駄に顔のいい連中しかいないのかもしれないなんて思ってしまうほどには・・・・・・。


カインは水に濡れた艶やかな黒髪に、明るい茶色の瞳をしていた。

エノーラが買ってきてくれた服も大体サイズは合っていたようで、しかもナイスコーディネートといわんばかりの出来だった。

残念なのはその顔に殴られた痕があることくらいだろう、それ以外はまさに某事務所にいても可笑しくないくらいの出来だ。



「意外にイケメンだったわね」


「いけめん、ですか?」


「いや、特に意味は無いから気にしないで」



イケメンの意味が通じなかったことに少し焦ったが、そう言えばこの世界にはイケメンなんて略語は無かった。



「それで、なんだよ」


「何って言われてもね~、とりあえず、ソレ取るからジッとしててくれる?」


「は・・・・・・・?っておい!触んな!!」



ルミカの意味が分からずに反抗しそうになったカインだが、先ほどの苦痛が思い出されたのだろう、不自然な位置でその手を静止させて固まった。

その瞬間を狙ってルミカは首の紐に手をかけると、紙を引きちぎるように簡単にそれを引きちぎった。


絶望の色を浮かべたカインの瞳だが、それから何も起こらないことに気がつきゆっくりと体を弛緩させた。



「取れたわよ?それにしても誰がこんな凶悪な代物作ったのかしらね~」


「・・・・・・・・・・本当ですね・・・・・・」



エノーラはどこか遠い目をしながら言われてしまったのだが、取れたので気にしないことにする。

カインは何が起こったのかが未だに理解できないのか、しきりに首の辺りを触っていた。



「で、どうするよ?」


「な・・・・・何がだよ?」


「だからさ、これからどうするのって聞いてんの」



まるで意味が分からないような顔をしているカインは今がどういう状況なのかが分かっていないようであった。



「分かんないかな~・・・ソレが取れたからもう自由ってことよ」


「っ・・・・・・・そう、か・・・・・!」



そもそも奴隷は首につけられた代物のせいで自由を奪われていたのだ。

それが無くなった今、カインは晴れて自由の身となったのだ。

ようやく理解できたカインは目を大きく見開くと、とたんに嬉しそうに笑った・・・・と、思いきや、急に落ち込みだした。



「えっ・・・・ちょっと、何で急にそんな沈んでんの!?ほ、ほら自由だよ、自由!」


「そ、そうですよ!もう誰かに使われる心配は無いんですよ?」



何が彼をここまで落ち込ませることになったのかは不明だが、すぐさまエノーラと視線を交わして元気付けるように励ましたのだが、反応が無い。

エノーラもどうしたらいいのか分からないようでオロオロとしている。



「あ~・・・・・・いや、それはいいんだけど、さ・・・・・・・俺、これから本当にどうすればいいんだ?」


「・・・・・・・え?何、どういうこと?」


「あっ・・・・・そ、そうでした」



それが理解できていないのはルミカだけのようで、エノーラは何か分かったのだろう、同じく気分が沈んだ顔をしていた。



「ちょっとエノーラ」


「あぁ、すみませんルミカ・・・つまり、彼の今後をどうするかということなんです」


「はぁ?だから、もう自由なんだから自分のしたいように生きればいいんじゃないの?」


「忘れたんですかルミカ、彼はまだ14の子供なんですよ・・・・それに、彼はハーフの黒髪です」


「あ・・・・・・・・・、そうだった・・・・・・・・」



自由の身にしたのはいいが、問題はそれからであった。

確かに、この世界にまだ14歳の少年をお金も無い、仕事も無い状態でほっぽり出すことはまさしく死んでこいと言っているようなものであった。

しかも、カインはハーフで黒髪という最悪なオプションを持っている。



「それは確かに困ったわね・・・・・、カイン、あなた誰か頼れそうな人いないの?」


「いねぇよ、誰が俺みたいなハーフと仲良くするんだよ」


「どうしましょう・・・・・・・」



エノーラも一生懸命考えていてくれているようだが、この世界でハーフの黒髪の少年を預かってくれるような奇特な人間はそうそういないだろう。

それほどまでにこの世界のハーフに対する偏見と嫌悪は顕著なのである。


エノーラは気にしたような感じはしないだろうし、恐らくクレメンスもルミカに文句は言うだろうが、14歳の少年を傷つけるような真似はしないはずだ。

なぜならば、こんな得体の知れない女を文句をいいながら面倒見てしまうような人間だからだ。



「ん~・・・・・こうなったら当初の予定通り私に着いてくる?」


「は・・・・・・?」


「エノーラ、それでも平気?」


「私はもちろんです。クレメンス様も少し文句は言われるかもしれませんが、大丈夫だと思いますよ」



エノーラも同じことを思っていてくれたようだ、恵まれてるな~・・・・と少し感動した。



「ってわけで、カイン、私はもう主人じゃないけど、他に行くとこ無いなら私たちと行かない?」


「いい、のか?」


「今更何言ってんのよ、元々私があなたを買ったんだから、別にいいのよ」


「っ・・・・・・・・・あり、がとう・・・・・・」


「ちょ・・・・、どうしたの、何で泣いてんの!?」



ルミカが答えた瞬間、カインの目から涙がポロッと零れたのをみて衝撃を受けたルミカが悲鳴じみた声を上げた。



「うるせぇ!頭から水が垂れただけだ!!」


「ええええっ!?何その言い訳!?」


「言い訳じゃねぇ!!くそっ・・・・・・」



まぁ、目の中にゴミが入っただけだとか、心の汗だ!とか言われるよりかはマシな言い訳であったが、さっきまで水に浸かっていただけに微妙に文句をつけにくい言い訳だ。

流石に慌てた様に服の袖で乱暴に目元をぬぐっていた。


そんな二人の様子をまるで子供がじゃれているのを温かく見守るおばあちゃんのごとく穏やかな目をして見ていたエノーラがいたとかいなかったとか・・・・・・・・。











奴隷とか解放するのは結構簡単だと思うんですけど、その後のアフターってなかなか難しいですね~、偏見とか差別とか、まず金がないという現実・・・・、さてこれをどうやって解決したらいいのやら・・・・。


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