表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/31

奴隷の少年

第21話!

あけましておめでとうございます!!


早くあげるとか言いながら結局年明けしてしまった今日この頃・・・・うん!でもまぁ、忙しいのもこれで終わったからこれからまた更新がんばろう!

ってなわけで、これからもよろしくお願いします。




そうして帰ろうとしたところで、人の争う声が聞こえてきた。

二人のいる路地ではなく、もう一つ向こう側から聞こえてきたのだが、興味を引かれた・・・・またの名を野次馬根性とも言うものに逆らえずに、エノーラを引っ張ってそこまで行った。


そこにいたのは大柄な男と・・・・・ルミカよりも身長が低いことから年下と思われる少年がいた。

普通と違っていたのは、その男が少年の手を思いっきり掴んでいて、少年が痛そうな顔をしていたこと・・・・そして、その少年が黒い髪の色をしていて、ボロボロの服を身に纏っていたことだ。

ウォルスの国は王侯貴族から市民までその贅が潤っており、あそこまでひどい格好のものをルミカは見たことが無かった。

何より、黒い髪というのは勇者のものとは違い、疎まれる非常に珍しい存在であったはずだ。



「エノーラ、あれって何?ねぇ、エノー・・・・・・・・・?」



思わずエノーラの服を掴んで引っ張ったが、何の反応も無い。

不思議に思って振り返ったルミカは、驚いた。

そこには、元々白かった肌をさらに蒼白に染め、小刻みに震えているエノーラがいたからだ。

明らかな異常事態に驚いていたルミカであったが、エノーラの視線の先がその二人であることに気がついてさらに困惑を深めることになった。



「エノーラ!どうしたの、ちょっと・・・・・!!アレ知り合いか何か?!」



男たちに気づかれないようにできる限り小さな声で問いかけたのだが、それにもまったく反応を示さない。

この時点でさっさとこの場を離れるべきなのだろうが、肝心のエノーラが地面に根を張ったように動かなかったのだ。



「・・・・・・・・・れ・・・・・・す・・・・・・・・・」


「えっ?な・・・・・・に?」


「・・・・・・あ・・・・・・は、奴隷・・・です」



顔色はすこぶる悪かったが、ルミカの耳にはその言葉を捉えることができた。


――――――――奴隷――――――――


エノーラはそういった・・・・・・ルミカの世界にはそんな時代錯誤なものは少なくとも知っている限りはいなかった。

だが、この世界ではそれが普通にあることを知ったのは、先日の図書館だった。

この世界では認められてはいなかった筈の奴隷・・・・・・しかし、ソレが存在するのはひとえにハーフと呼ばれる存在がいるからであった。


ハーフというのは人間とそれ以外の種族との間に生まれた者の事である。

その彼らは、この世界の種族たちから蔑まれていた。

エルフやドラゴン等の種族は血統意識が非常に強く、人との間にできた彼らを忌み嫌っている。法律によりその大地に踏み入ることすら許されていないのだ。


それは他の種族も同じようで、最も弱いとされる人間すらも彼らを忌み嫌っていた。

そんな中、誰が始めたのかは不明だが、奴隷制度が開始されたのだ。

それは、ハーフであれば例外なく奴隷にすることができるというもので、世界中で奴隷狩りが始まったのはこの時からである。

ハーフ自体数は少なかったのだが、そのうちに敗戦国の住民達を奴隷にする国が増え、今現在では同じ人間の奴隷も多いそうだ。

また、人買いや人攫いなどの人種も多くなり、犯罪が跋扈している。

奴隷には基本的人権が無く、その扱いは自由であり、生死すらも主人が握っている。



その奴隷が、すぐそばにいる。

その事実に戦慄が走った。

彼らが何かをしたわけではない、ただ単に、親が人間以外の誰かだっただけだ。

たったそれだけなのに、彼らは迫害され、虐げられている。

ジリジリと胸の奥で何か得体の知れないものが込みあがってくるような気分の悪さに、ルミカは小さく呻いた。


あの少年は何かしたのだろうか、なぜあんなふうに怒鳴られて・・・・・・グルグル回る思考に囚われていたルミカが正気を取り戻したのは、男が少年に殴りかかったからだ。


その瞬間ルミカは二人に向けて走った。

特に何かを考えていたわけではないが、動かなくてはいけないという、強迫観念に駆られた。

その間もルミカは自分に冷静になるように何度も心の中で繰り返した。


すぐ近くまで走りよったルミカは未だに気がつかない二人を確認してから、深呼吸を一つしてから務めて冷静な声色で口を開いた。



「ねぇ、そこの人・・・・・ちょっといい?」


「あん?なんだぁ?てめぇ・・・・・・ガキがうろついてんじゃねぇよ、あっち行け」


「あれ、いいの?折角いい話持ってきたのに・・・・・・」



二人のすぐそばに来たルミカは、さっきまで焦っていたくせに、存外冷静な声が出たものだ、と変な感心をしながら男の興味を引くためにそう言った。



「いい話だぁ?ふざけたことぬかしてんじゃ」


「そこの子、奴隷でしょ?」


「だったらなんだってんだ?関係ねぇだろうが」



明らかに苛立った様子を隠すことなく舌打ちをする男に、反論する余地をほとんど与えずに話を続ける。



「その子、いくら?」


「あ?お前が買うってのか!はっ、バカなこと言ってんじゃ」


「誰が私が買うって言ったのよ、買うのは私じゃなくて、お嬢様よ」


「・・・・・・・お嬢様・・・・だと?」



男からしてみれば、ルミカ(外見的に少女)に奴隷を買うようなお金があるとは思えなかったようだったが、ルミカにお嬢様という後ろ盾がいることを知り、とたんに目の色を変えた。



「そうよ、お嬢様にあなたのような人間と話をさせる訳にはいかないからね、私が代理で話を聞くようにって言われたのよ」


「どこにいるってんだよ、ああ?」


「本来ならあなたのような下賎な人間に教える必要はないけど、あそこよ」



そういって、ルミカが指差したのはエノーラであった。

先ほどから怯えているのだが、悪いが少々利用させてもらうことにした。



「本当だろうなぁ・・・・・・」


「信じなくても別にいいわ、とにかくお嬢様がその子をご所望なのよ?いくらなのかはっきりしてくれる?」


「なんなら他にも揃えてるが」


「その子だって言ったでしょう?他は今はいらないわ」



疑わしそうな視線を撥ね退けたルミカは、まだ他にも奴隷がいることに口が苦い思いをしたが、全てを救えるなどという誇大妄想ができるほどの自信は持っていなかった。



「何でコイツなんだ?他にもいるだろうが」


「バカなことを・・・・・ソレの髪の色に決まってるでしょ?お嬢様のコレクションの中にはまだ黒髪っていなかったから欲しいそうよ」



態とツンケンな態度を取ってはいたが、そろそろ限界が近づいてきた。

いくら演技とはいえ、長々とこの男と喋るのは非常に疲れる。



「へぇ・・・・・・・なら10万ファンでどうだ」


「10万・・・・・・」


「無理なら「分かったわ」・・・・・・何?」


「だから10万でしょう?それで決まりね」


「あ・・・・・・あぁ・・・・・・・」



ルミカからしてみば奴隷の相場など知らないし、実を言うとお金は一生困らないくらいの大金をベルゼが持たせてくれていたので、それくらい減ったとしても、まだまだ余裕があったのだ。

驚いたのは男と少年のほうだったようだ。

手渡された大きな金貨に呆然としていたようだが、すぐさま気を取り直してニヤニヤした笑みを向けてきた。

恐らくポンと大金を入手したのに味を占めてさらにぼったくる気なのだろう。



「言っておくけど、私が合図をしたらお嬢様の護衛が動くから」


「護衛なんざどこに・・・・・・」


「お嬢様の後ろに」



自分のことを見透かされたことに動揺しながら、男がエノーラの方へと振り返ると、確かにその後ろに大きく黒い影が確認できた。

そこまでいくと、流石に男も手を出せないようで、おざなりに紐のようなものを渡して、少年を置いて姿を消した。

その間、少年はルミカのことを親の敵といわんばかりに睨み付けていたが・・・・・・。


なんとか売買がうまくいったことに安堵したルミカは、さっそく少年に話しかけようとして、息を止めた。


とてつもなく臭い・・・・・・!!


当然のことであるが、奴隷に人権が無いので、まともにお風呂にも入ったことが無いのだろうが、非常に臭う・・・・・・まずは身を綺麗にしなくてはいけない。

とはいえ、見るからに奴隷である彼を、あの気のいい女将さんの宿屋へと連れて行くわけにもいかなかった。



「え~っと・・・・・とりあえず、大丈夫?」


「・・・・・・・・・・・」



男に掴まれていた所は青あざになっているし、殴られた痕も色づいて若干腫れていた。

非常に痛々しげに見えたのでそう話しかけたが、少年は返事を返してくれない。

困ったな~・・・・・なんて呑気なことを考えていたルミカは、とにかく一度外にでも出て水浴びをしてもらおうと決めた。幸い石鹸はかばんの中に入っている。



「あなた、名前は?私はルミカって言うんだけど・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・」



さらにダンマリを決め込んでしまったので、どうしたものかと思ったが、少年がいくら嫌がろうが引っ張って行くしかない。



「あの・・・・・・・ルミ、カ?」


「あ、エノーラ」



考え込んでいたルミカの元に、先ほどよりは随分マシな顔色をしたエノーラがやってきた。

心配そうな顔をしているエノーラに笑って返すと、少し落ち着いたようであった。



「ちっ・・・・あんたが俺の主人かよ」


「えっ?主人って・・・・・?あの、ルミカ?」


「あ~・・・・・・ごめん少年、さっきのアレね、嘘よ、う・そ!最初から最後まで」


「はっ・・・・・・?」



呆気にとられていた二人に、簡単に先ほどのやり取りを説明すると、二人とも信じられないものを見るような目でルミカを見つめていた。



「では、この子を買ったんですか?」


「そうそう、買っちゃった」


「買っちゃったって・・・・・・、お金はどうしたんですか?」


「あ~・・・・・・なんかカバンに入ってたから・・・・・」


二人が驚いていた中のひとつとして、ルミカが出したというお金についてだった。

この世界で10万ファンというお金は、一般の市民の給料の5年分に相当し、貴族でもない人間が用いることが無いような途方も無い金額だそうだ。

それが、記憶の無いという身元不明の女が、しかも魔術騎士という地位さえ持っているような意味の分からない女が所持しているというのは、やはり異常であった。



「そう、ですか・・・・・・・」


「お前・・・・・・なんなんだ?」


「いやぁ・・・・・・なんだろうねぇ?」



改めて自分の設定の難しさに頭を悩ますことになってきた。

これは、できる限り早めにエノーラとクレメンスには説明しないといけないだろう。

流石にいつまでもこの異常事態を黙認してもらうのは良心が痛むというものだ。



「・・・・・・・クレメンス様にどうやって説明したらいいんでしょうか・・・・・・」


「んと・・・・・その時はあたしが説明するからさ、本当にごめんねエノーラ」


「今更ですから、気にしないでください」



エノーラも異常性が高すぎてちょっと感覚が可笑しくなってきてしまったようだ。反省。



「そういう訳だから、あなたの主人は私なのよごめんね?」


「お前が主人って、何で俺がこんなガキに・・・・・・」


「言っとくけど私はこれでも17よ」


「17ってお前が!?俺より3も上だと・・・・・!」



ルミカの年齢に驚いているようではあるが、何度も言うが、これでもルミカの世界では年齢以上に見られることが多かったくらいだ。この世界の住人達がちょっと大人っぽ過ぎるのが悪い。



「ってことは14歳か・・・・・・で、名前は?」


「うるせぇ!誰がお前なんか!!ぐっ!!!」



ルミカが再度名前を確認しようとしたところ、思いっきり反抗的に手を叩かれた。次の瞬間、少年は急に首元を押さえて苦しみだした。

驚いたのはルミカのほうであった。さっきまで元気だったはずの少年が急に苦しみだしたのだ。持病か何かがあったのかと慌てて触れようとしたルミカの腕が急に引っ張られた。



「何すんのよエノーラ!!」


「少し待ってください・・・・・・すぐに、落ち着きますから・・・・・・」



わけが分からないという視線をエノーラに向けたのだが、エノーラはまた顔を青ざめて痛々しげに少年を見つめていたので、思わず体から力を抜いた。

エノーラの言ったとおり、少ししたら落ち着き始めた。

それを確認してからエノーラは口を開いた。



「奴隷には主人を傷つけるような行動が許されていません、もしもその様なことをしたら、先ほどのように首にある紐が締め付けるようになっています」


「なっ!?何よ・・・・・それ・・・・・・!!」


「奴隷・・・・・・ですから」



視線を少年からずらしたエノーラは小さく呟いた。

少年は落ち着いてはいるものの口を閉ざしてしまった。

確かに、これ以上口を開いて反抗をしてしまい、自分を傷つけるようなことにでもなったら大変である。



「・・・・・・・これってどんな仕組みなの?どうやったら取れるわけ?」


「・・・・・・・・ルミカがもっているその紐、それが主人が身につけるものです。その紐には呪術がかかっていて、奴隷側には先程の効果があり、主人側には別の呪がかかっています。それを取り外すには神官による神術しか方法がありません」


「主人側の効果って何?」


「例えば奴隷やそれ以外の人間、もちろん主人も含みますが・・・・・その人間が紐を切った場合、奴隷についてる紐が首を切り落とします・・・・・・・」



絶句・・・・・・・その一言に尽きるだろう。

生殺与奪の権利が奪われているのは知っていたが、そこまで非情なものとは知らなかった。

この少年だけではない、他にも多くの人々が奴隷とされているのだ。

今一度この世界がルミカの知っている世界とはかけ離れたものであることを認識した。



「・・・・・・エノーラ悪いんだけど、フードつきのローブと、なにか服を買ってきてもらってもいい?サイズはとりあえずパッと見のでいいから」


「え?」


「私はこの子連れて外の川にいるから、草原のそばにあったところね?お願い」


「・・・・・・・・わかりました。買い物をしたらすぐに行きますね」



顔は真っ青であったが、気丈にもエノーラは微笑んでからその場を離れた。

問題はこちらである。



「・・・・・・・ねぇ、少年さ、とりあえず素直に名前ぐらい教えてくれる?」



教訓から学んだのだろうか?いや、この手のタイプの人間はそれでも諦めずに反抗するタイプだろう。

とはいえ、このままの状態は非常に困る。



「あのさぁ・・・・・「カインだよっ」・・・・カイン?それが名前?」



話を聞くのにはもう少し時間がかかるかと思っていたのだが、意外と早く名前を教えてくれたものだ。



「とりあえずカイン、その格好じゃマズイから一回ここ出るわよ」


「ちっ、分かったよ」



舌打ちをされるたびに、カインではなくルミカのほうが心臓的に悪い気がするのは仕方が無いことだろう。









ここでようやく奴隷とか黒とかの話が出てきました。

うむうむ、この辺でシリアルじゃなかったシリアスねww入れてみようかなんてねw

笑いながら言うことじゃないけど、新キャラ登場させたかったので、申し訳ないですが、これからも生暖かい目で見守っていてください。

もちろんご都合主義なので、キャラ達は不幸せな結果にはならないのでご安心を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ