食文化は複雑怪奇
12話・・・・・なのに、まだ1日目終了してないとかww
あと、なぜか長くなってしまいました(汗)
明日は更新できないかもしれません、ごめんなさい!
ギルドから出たルミカ達は、宿屋へと向かっていた。
クレメンス達は3日前からここに滞在しているらしく、そこの宿屋はまだ空きがあったことからそこへと向かっていた。
いくら怪我をルミカが治したとしても、疲労までは回復しなかったようで、二人ともちょっと疲れた顔をしていた。
ルミカも、異世界初日で足の裏はまめだらけになってしまい、これ以上歩くのはしんどかった。
空を見上げると薄暗くなってきており、夜の訪れがようやくやってきたようだ。
二人が滞在している宿屋はギルドの近くだったようで、すぐにそこについた。
「いらっしゃい!あらあら、あんた達だったの、お帰りなさい」
「ただいま戻りました、あ、女将さん一人お客さんを連れてきたんですけど宿にまだ空きは在りますか?」
見るからに肝っ玉母さんという風情の元気溌溂とした・・・・ちょっとふくよかな、ちょっとふくよかな!女将さんがそこにはいた。
(・・・・・大事なことなので二回言いました!)
すっかりミナに培われてしまった知識が恨めしい、なんて切実に思ってしまった。
いつの間にやらミナからの洗脳があったようだ。
「お客さん・・・・・?そっちの子かい?」
「はい、でも女将さんルミカはこれでも17歳ですよ」
「あらまぁ!それは悪かったわねぇ、部屋ならまだ開いてるよ、一泊25ファンだけど、いつまでいるんだい?」
女将さんは大げさに驚いた後に豪快に笑いながらたずねてきた。
いつまで滞在するとかほとんど考えていなかったものだから、どうしようかと思案したが、エノーラたちと今後のことについて相談してから決めることにした。
それにしても、ここの通貨単位はファンって言うのか・・・・、金銀銅、とサイズの小さい銅貨とサイズの大きい金貨の5つの硬貨がベルゼに渡されたバッグの中に入っていたが、恐らく小さな銅貨25枚ってことだろう。
「えっと、まだ決めてないです」
「そうかい、それじゃぁとりあえず一泊ぶんの25ファンを頂きたいんだけど・・・・」
そう言われてルミカは鞄の中から銅貨を一枚取り出して女将さんに手渡した。
この世界の通貨単位が分からなかったが、とりあえずこれを渡せば間違いないだろう。
「はい、100ファンだね75ファン返すよ」
どうやら思っていたよりも貨幣価値は変わらないようだ。
そのことにホッとしながら女将さんから小さめな銅貨をルミカに返してきた。
「部屋は二階に上がって一番右奥の部屋だからね」
「ありがとうございます」
「行きましょうルミカ」
エノーラに促され、ルミカは階段を上がっていた。
ちなみにクレメンスの姿はすでに無く、エノーラに聞くと先に部屋に戻ったらしい。
残念なことにエノーラとクレメンスは同室ではなかった。
なんだ、ラブコメ展開とかを期待してたのに。
エノーラの部屋はルミカとは反対の左奥の部屋らしく、二階に上がってからすぐに別れた。
部屋に入ったルミカは、ベッドの上にバッグを置くと、室内を物色し始めた。
RPGなんかをしていた人間にはお馴染みの木製のベッド、ただしシンプルなだけの造りではなく、所々に趣のある細工が施されていた。
次に確認したのはクローゼットで、中には服を掛けるためのハンガーみたいな棒がぶら下がっている。
ひょっとしたらハンガーなんかも作ったら売れるかもしれない。
最後に確認したのはお風呂だったが、なにやら風呂らしきものはあった・・・・あったのだが、どこにも蛇口のようなものが見当たらなかった。
水を流す栓はついているのでお風呂であるのは間違いないのだろうが・・・・・・。
後でエノーラに聞きに行かないと・・・、それからトイレを探したのだがここには無いようだった。
一通り見終わったルミカはベッドへとダイブした。
今日は本当に疲れた、異世界初日でなんて濃い1日だったことか・・・・・。
疲労から眠気が襲ってきてウトウトしていたところに控えめなノック音がした。
ノロノロと起き上がり、扉を開けにいった。
クレメンスが驚いた後、呆れたような顔をしてそこに立っていた。
「お前な・・・・・・・」
「ん、何?」
寝ぼけ眼で対応したことに呆れているのかと思えば違ったようで、とにかく用事を聞こうと部屋の中に入れた。
「お前、もう少し危機感というものはないのか?今回は俺がお前に用があっただけだが、これが盗賊なんかだったらどうするんだ」
「あ~・・・・・・そっか、すっかり忘れてた」
言われてからルミカは苦笑いを浮かべた。
いきなり死んで異世界に飛ばされたルミカにとっては、魔物はリアルで見たので現実として認識されたが、人間相手は無いので危機感が無かったのだった。
扉を開けたら盗賊なんて洒落にもならない。
「今度から気をつけるわ、それで、いったい何の用?」
「一つ言っておきたいことがあってな・・・・・・・、はっきり言っておく、俺はお前を信用していない」
クレメンスの言葉予測はしていたので、あまり驚くことは無かった。
それはクレメンスも予想していたのか、そのまま話し始めた。
「お前の言動は的を得ないことばかりだ。記憶が無いと言い張りながら魔術や神術は行使するし、文字も書けるし言葉だって話せる。さらに言うなら、お前の服やバッグだって多少汚れてはいるが、ほとんど外に出たことが無いような新品だ。他にもまだあるが・・・・聞くか?」
「いらないわよ、とにかく信用できないっていうのを言いたいんでしょう?」
「あぁ、・・・・エノーラはあの通りお人よしだからな、お前が如何に怪しかろうが困っている人間をほっておけない。エノーラの気が済むまでは一緒に旅をしてもいいが、万が一お前が妙な動きをした場合は問答無用で切るぞ」
クレメンスは本気なのだろう。
その目は物騒な光を映していた。
ルミカはその事に関して楽観ししてはいなかったが、こんなにすぐに牽制されるとは思ってもみなかった。
「はいはーい、それでいいわよ」
「・・・・・・・・随分軽いなお前」
「・・・・・・・・そうは言ってもねクレメンス、私は、本当にこの世界の理を知らないのよ・・・・・・・・・・・」
ため息をついたクレメンスにルミカは真剣に応えた。
じっとルミカを見つめていたクレメンスは、その瞳に一瞬暗い影が過ぎったのを見て、驚いた。
クレメンスからしてみれば、このルミカという人間は明らかに怪しい女であった。
旅の同行者であるエノーラを見事に騙し、近づいてきた怪しい女であったが、少なくともその性格は演技であろうと明るいものだと認識していたために、今の暗い影に驚いたのだった。
「分かったならそれでいい。とにかく、どういうつもりかは知らないが、エノーラを傷つけるような真似はするなよ」
「・・・・・・本当に恋人じゃないのこれ・・・?いや、ひょっとした無自覚なのかもしれないわね!エノーラの方が気づいていない片思いパターンか!?」
さっきまでの真剣モードを忘れたかのようなルミカの軽さに呆気に取られたが、逆にさっきまでの雰囲気が払拭されて妙な安心感があった。
「とにかくそれだけだ、じゃあな」
クレメンスは言いたいことだけを言って部屋から出て行った。
「・・・・・・そんなこと、一番私がわかってるわよ・・・・・・」
怪しいことも、信用できないことも、そんな事は一番ルミカが一番わかっていた。
わかっていた上で、こうして彼らにくっ付いている。
だが、それ以外に今は何もすることができないのだからどうしようも無いじゃないか。
「あ~・・・・・なんか眠気がどっか吹っ飛んだじゃないの、どうしてくれんのよ」
折角いい感じに眠気が襲ってきたのに吹っ飛ばされてしまった。
人間の三大欲求のうち主張していた一つが無くなってしまえば残るは二つ・・・・・。そのうちの一つである食欲が急に湧いてきた。
ぐぅぅぅぅぅぅぅ~・・・・・・
「・・・・・そういえば水は飲んでたけどご飯食べてなかったけ・・・・」
ルミカ自身は緊張していたつもりは無かったが、極度の緊張状態だったようで、空腹すら気がつかなかったらしい。
「ん~、女将さんに聞いてみるか」
ご飯時にはちょっと早いかもしれないが、何か用意してくれるかもしれない。
ついでにお風呂とトイレの場所も聞いておかないといけない。
思い立ったらすぐ行動と言わんばかりに部屋から出たルミカは階段を下りて女将さんを探した。
女将さんはすぐに見つかった。
どうやら厨房らしきところで何かを作っているようだった。
「女将さ~ん」
ルミカの呼びかけにすぐに気がついたようで、こちらを振り返り、小首を傾げていた。
「どうしたんだい?何か部屋に不都合でもあったかい?」
「いや、違うんだけど・・・・ちょっとお腹が空いたからご飯ってどうしたら良いかなぁって」
「あぁ!そうかい、ちょっとそこに座って待ってな、今持ってくるよ」
ルミカの台詞に納得したような女将さんは席を勧めて、また厨房へと戻っていった。
しばらくして戻ってきた女将さんは両手にお盆をのっけていて、なにやらおいしそうな匂いが漂ってきていた。
「はいよ、カルムの塩焼きと、ポクのスープにご飯だよ」
女将さんが持ってきた料理名に全く聞き覚えの無い名前の代物があったが、恐らくこちらでは一般的な食材の名前なのだろう。
カルムの塩焼きというのはどうやら魚の塩焼きのようで、香ばしい匂いがしてきた。
ポクのスープは見たところすこし茶色の色がついた透き通ったスープになにやら白いものが浮かんでいたが、なんのかは分からなかった。
そして、ご飯・・・・・驚いたことにこの世界には米があったらしい。
現代日本ほど米の粒は大きさも揃ってもいないが、その匂いはまさしく白米であった。
しかもお箸とスプーンとフォークの三つがあり、水まで持ってきてくれていた。
「ありがとうございます!いただきま~す」
「あら、あんたこの辺の人間なのかい?」
「へ?違いますけど・・・・どうしてですか?」
女将さんにきちんとお礼を言って箸を手にとっていつものように「いただきます」をしただけであったが、女将さんは不思議そうな顔をしていた。
「その【いただきます】って言うのも【ハシ】もこの国独特の代物なんだよ」
「い、いや、さっきエノーラに聞いて・・・・ハシは前に知り合いに教えてもらったんです」
女将さんに引きつった笑みを浮かべて応えたが、ここにクレメンスがいなかったことに感謝した。
こんな一般的な習慣をクレメンスに見られたらさらに変な疑いを持たれる事間違い無しだ。
「あっ!と、ところで女将さん、お手洗いってどこにあるんですか!?」
「え?お手洗いねぇ、あそこに扉があるだろう、あそこにあるよ」
「そうですか!ありがとうございます」
ご飯時にこんな質問どうかと思うが、とにかく話を逸らさないと、いつクレメンス達が降りてきてもおかしくない状況であった。
ルミカはそう言いながらもご飯を食べ始めた。
カルムは白身魚のようで、ホクホクとした身は塩の味が若干物足りないが、素材の味を活かすということなのだろうか・・・?出来ればもうすこし塩を振るか醤油が欲しかったが、流石にそれを口にすることは出来なかった。
ポクのスープは意外なことに魚介系のスープで、おいしかった。
白いものは何かは分からないが、なんとなく豆腐のような味だった。
「女将さん、この白いのって何?」
「それはモルだよ、ウォルスの特産品の一つでねぇ、変わった食感で人気なんだよ・・・これがモルだよ」
女将さんが見せてくれたのは豆だった。しかも、大豆に近いものだ。
ここまで見て、この食文化を広めたのが前の異世界人であることが裏付けられたきがする。
雷の精霊から聞かされていたが、案外前の異世界人はこちらの世界でうまく順応していたようである。
「ふぅ~ん、これがモルか、変わってるわね、それがこれになるんだ・・・」
「そうなんだよ、これは前の国王様が改良したものでね、今ではウォルスでよく食べられるようになったんだよ」
やはりそのようである。
しかし、一体彼はどうしてウォルスへ流れてきたのだろうか?
召喚を行う国は聞いていた限りラングレアという国だったと思っていたが・・・・?
まぁ、まだこちらに来てから一日も経っていない、これから少しずつ勉強していけばいいか。
「あ、女将さん、それからお風呂なんだけど、どうやってやるのか知らないんだけど・・・・」
「おやおや、知らないのかい?もう少ししたら部屋に魔術師がお湯を用意しに来るから待っておきな。それから、今日の合言葉はあっちが【サルク】でこっちは【クルサ】だからね」
「合言葉?」
「変な輩が入ってこないように、扉をノックしてから合言葉を言うんだ。違うことを言われたら開けるんじゃないよ」
どうやらお風呂のお湯については魔術師が作り出してくれるらしいのだが、部屋一つ入るのにもルールがあるらしい。
確かに、さっきクレメンスに注意されたばかりだったので、納得だ。
この世界の人間はそうやって身の安全を守っている、ちょっと危険が身近になった気がした。
まぁ、その程度で安全が確保できるかはこの際気にしないでおく。
そういえば、女将さんは魔術師といったが、人間には精霊魔術を使える人間は少なかったはずだが・・・・・、まさかお湯を入れることすら商売にしているのだろうか・・・・恐ろしいな商業国家とその仕組みを考えた人間。
「ん・・・・・ごちそうさまでした、ありがとう女将さん」
「はいよ~」
食器を下げてお礼を女将さんに言ったルミカは、トイレに行ってから部屋へ戻った。
トイレがあったのは本当に助かった。
ベルゼに中世レベルと聞いていて、ちょっと心配していたのだ。
確かあの頃のヨーロッパでは外、つまり道端で用を足すのは当たり前の状況で、汚物を片付けるという当たり前のことをしていなかったそうだ。
その為に衛生状態は最悪で、病気が蔓延することもしばしばあり、臭いを誤魔化す為にどぎつい香水を振り撒いたり香りの強い花を植えたりしていたらしい。
聞いただけでも気分が萎える話であった。
ウォルス以外の国もこれくらい衛生面に気を使っていてくれるとありがたいのだが・・・。
そんなことを考えながら部屋へ戻った。
どうしてこんなに長くなった・・・・しかもまだ今日が終わってないしww
次の話では終わります!えぇ、今度こそ終わります!!
しかし、会話をさせながら思ったが、クレメンスは18歳でいいのだろうか?
もういっそのこと20歳くらいでいい気がしてきた。
どっちがいいかな~・・・・、この先、いつの間にか年齢変更とかしてたら済みません。
あと、明日は更新できないかもしれません、ごめんなさい。