商業国家ウォルス
はい第11話です!
更新しないとかいいながらもう一話アップしてしまいました。
気分が乗ってる時って、指が動くんですよねぇ~・・・・・まぁ、明日?いや今日のアップがその分遅くなるかも・・・・・ごめんなさい。
ウォルスは世界中から商業の国といわれている。
ウォルスは人口17万3200人もの人口を誇る商業国家である。
ウォルスの国は大地の痩せ細った国で、特に誇れるような産業のある国ではなかった。
しいて言うのならば、ウォルスには質の良い綿と絹はあったが、それだけであった。
ほんの数十年前までこの国は世界でも見向きもされないような小さな国であった。
それが変わったのは、その国に一人の男が現れてからであった。
その男は何の産業も無い国に、商業のノウハウを国中にもたらした。
ウォルスは他の人間の国からは離れた位置にあった。
それはつまり人間以外の種族との国は近かったということで、その男は他の種族相手に交易を始めたのだった。
当時、人間の国と多種族との交易などと言うことは誰一人として考えられなかった。
なぜならば、多種族にとって人間族というのは、弱くて相手にもならない生き物として認識されていたからだ。
多くの人間達は、成功するはずがないとバカにして笑っていたものだったが、その男の目論見は成功を収めたのだった。
彼はウォルスにあった質の良い綿や絹を最上まで品質を上げ、それを他種族の国に売りさばいたのだった。
それが評判に評判を呼び、他種族国間との貿易をさらに深めることになった。
ウォルスではその後、他にもお茶等の嗜好品を作り出し、それも最高級までに改良し、交易の幅を広げていったのだ。
それは今まで馬鹿にしていた人間の国に衝撃を与えることになった。
人間という生き物を対等として見てくれる種族などいなかったはずなのに、その男はウォルスという国をも動かし、多種族との国家間の交易を見事に成功に収めた。
その後、彼は絶大な支持を受けこの国の国王になり、今の商業国家としての地位を不動のものとしたのだ。
その国王は病気で亡くなったそうだが、今なお、ウォルスの国は世界を股に架けた商売を展開している。
「へぇ~、すごいわねその国王様って」
「えぇ、なぜ彼がこの国に来たのかは知られていないのですが、彼のおかげでウォルスの国は豊かになったんですよ」
なんだか、その国王様ってひょっとかして前の異世界召喚された人間のような気がするが、そこはあえて知らない事にしておく。
ウォルスの城下町に着いたルミカ達はギルドへと向かっていた。
ルミカのギルド証の発行に行く必要があったし、さっきの討伐依頼完了の報告もしなくてはならないからだ。
「ねぇ、クレメンス聞いておきたいことがあるんだけどいい?」
「なんだ?」
「討伐したとしたら何か証とかがいるんでしょ?それってどうすんの?」
さっきクレメンスが持っていた皮袋の中身はスプラッタかと思っていたが、よく考えてみればそんなものが証拠になるわけない。
それでは、一体クレメンスはあの狼の何を証拠として持ってきていたのかが気になった。
「あぁ・・・証か、さっきのギーズは牙と体毛の二つで証になる、ちなみに証は魔物によって様々だからな」
「さっきのデカイ狼はそんな名前なんだ。なるほど、その二つなら腐ることはないし、小さく纏めて持ち運ぶことも出来るか・・・ありがとうクレメンス」
納得したように頷いたルミカは、ギルドについても知る必要があるなぁ・・・・・覚えることがありすぎて頭がパンクしないかちょっと心配になってきた。
まぁ、今日はギルド証の発行が終わったら即行で宿屋に直行する予定だが。
「ここがギルドだ」
「これがギルド、ねぇ・・・・」
想像していたのは酒場風のギルドと薄暗い感じのギルドの二つであったが、その両方とも外れていた。
はっきり言おう、派手だ。
外観はミニヴェルサイユという表現が正しいだろう、なぜこんなにも派手ででかいのだろうか。
「エノーラ、ギルドってどこもこんなに派手なの?」
「そんなことありませんよ、ウォルスのギルドだけです。こんなに派手なのは」
思わずエノーラに聞いたが、なぜこの国のギルドだけ違うのだろうか
「ウォルスの国は多種族との交易が盛んな国だからな、城や町なんかの外観も出来る限り綺麗にしておく必要がある・・・一種の見栄だ」
「なるほど、それでどの建物も綺麗なわけ」
町にある建物はすべて煌びやかで、美しい建物が多く建っていた。
道も舗装されていて、ゴミもほとんどなかった。
まぁ、ギルドだけどうしてこんなに派手なつくりになったのかは分からないが・・・。
呆気に取られている私の腕をエノーラが引っ張り、ようやくルミカはギルドの中に入ったのだった。
ギルドの中は、想像とはやはり違いヨーロッパ調のつくりではあった。
が、そこにいる人たちは予想通りの風体をしていたものが多かった。
ギルドの人間と言われて想像するのはそのへんのチンピラいやいや、ゴロツキのような人間がだろう。
まさにその通りだった。
その中でルミカとエノーラは明らかに浮いており、周囲の好奇の視線にさらされることになった。
もっとも、エノーラはギルドに所属していることもあり慣れた様子であったし、ルミカも他人からの好奇の視線を受けることは昔からあった為に、特に気にせずにクレメンスの後について歩いていった。
まぁ、一つ浮いていると言うことを言うならば、他の連中が中の内装から浮いているのとは違い、エノーラはヨーロッパ調の建物から浮いていなかったが・・・・・・。
「ルミカ、こっちだ」
「はいは~い」
キョロキョロと辺りを物珍しそうに見ているルミカが変な人間に絡まれる可能性を心配したのか、クレメンスが声をかけた。
その先にカウンターらしき場所と受付にダンディなオジサマと可愛いお姉さんが立っていた。
「依頼を完了した、換金をお願いしたい」
「ほぉ、あの依頼をこなしたか・・・・ちょっと待っててくれ」
クレメンスが皮袋を渡すとオジサマは少し驚いたような顔をしてから奥へと引っ込んでいった。
その間に、ルミカはエノーラに連れられて受付のお姉さんところへと案内された。
「こんにちは、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「今日はギルド登録をお願いします」
「はい、畏まりました。少々お待ちください」
受付のお姉さんは鉄壁の営業スマイルを向けてから、一枚の紙をカウンターに取り出した。
一瞬見えた文字は確実に日本語ではなく、ロシア語のような文字であったが、次の瞬間にはその紙に書かれていた文字をスラスラと読めるようになった。
こちらで文字を見るのは初めてだったが、どうやらベルゼがつけてくれた能力はちゃんと機能しているようだ。
「それでは、こちらの方に年齢と、お名前、戦闘方法のほうをご記入ください」
意外なことに、必要事項がたったの三つしかないという。
本当にそれだけでよいのかと視線をエノーラに向けたが、エノーラはその意図が分かっているのかいないのかは不明だが、頷いていた。
とにかく記入をしなくてはならないが、戦闘方法ってなんだろう?魔術がつかえるとか刀が使えるとかそういうことなのかが理解できずにエノーラに尋ねた。
「エノーラ、この戦闘方法って?」
「それは何を戦闘で使っているかって事で私みたいな魔術師は魔術、クレメンス様なら剣・・・・ルミカなら魔術ですね」
「ふ~ん」
そう言われて刀も扱うことができるということを思い出したが、エノーラはどうやらこれを見掛けだけのものと考えているらしく、刀については聞かれ無かった。
別に書かなかったとしても問題は特になさそうなので、魔術とだけ記入しておいた。
「・・・・・・・はい!ありがとうございます。それではギルド証を発行しますので少々お待ちください」
お姉さんは記入事項を確認すると、奥のほうへ引っ込んでいった。
クレメンスは換金し終えたようで、ジャラジャラと音のする袋を持ってこちらへ歩いてきた。
「邪魔そうね」
「全くだ、こんなものを大っぴらに持ち歩くと余計なのに絡まれるからな」
そう言ってクレメンスは袋の中からさらに袋に入ったお金をエノーラに手渡した。
エノーラはそれを受け取ると肩から提げている鞄にそのお金を入れた。
「なんで分けるの?」
「盗難防止対策といざとなった時の為だ」
いざとなった時とは、そういうことだろう。
そんな状態は真っ平ごめんだが、その時にはやはり、クレメンスにはエノーラを身を挺してでも守ってもらわないといけないなぁ、なんて物騒なことを考えた。
それが伝わったのかどうなのか、クレメンスはジト目でルミカを見ていた。
「ルミカ様、お待たせいたしました」
奥のほうからお姉さんが出てきて、カウンターに免許証のようなものとピンバッジの様な物を置いた。
「こちらがギルド証になります。詳しい説明が必要ですか?」
「いえ、今日は時間が無いのでまた明日にでも聞きに来ます」
「そうですか、それではまたお待ちしております」
最後まで鉄壁の営業スマイルを崩すことなく言いのけたお姉さんは、深々と礼をした。
こちらも礼をしてから慌ててその二つを受け取り、先に出口まで歩いていくクレメンス達を追って早歩きで歩き出した。
ようやくこの世界初の町に着きました。
城下町と書いたと思うのですが、お城もあります!まぁ、今回は立ち寄りませんけどね!王様とか王子様とか騎士とかに会うことはないですので・・・・残念ながら。
あとちょっとで異世界1日目終了です。
今日はまたこの時間くらいにアップ予定です、遅くてすみません。