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魔王挑戦権資格試験

魔王挑戦権資格とは! いついかなる場合でも誰の挑戦でも受ける

魔王陛下の気概の表明である。

「全魔国魔王挑戦権のしおり」より


とある世界に魔王が降臨した。魔王となった男は 転生前の世界の極東の経済大国で最高ランクの大学を主席で卒業し、大学院を通う傍ら国家の官僚を勤めていた。だがしかし生真面目でつきつめる性格が災いし過労で若くして男は亡くなった。死後、男は勇者として転生すべく女神の前に召喚されたがその使命や役割を聞き、冷徹に拒絶した。


「国家や世界的危機に その文明や種族、国家国民に責務や対処をさせずに勇者なる「奇跡・僥倖」をもって介入するなど言語同断な話だ。よしんば、その危機に耐えられず滅亡するならその世界の生態環境での不幸な出来事で、あなたが人類を加護や後見をしているならばこの過程の失敗を素直に受け入れるべきだ」


女神は激怒し不敬であると、男を魔王として本来は勇者とする男を自分の世界に突き落とした。


「神とは理知的な話を受け入れない理不尽な存在であったか。知性も能力も人を凌駕する上位存在と

思った自分の認識が間違っていたのか」


男は神との対話が不調に終わったことに落胆し、同じような知性の存在との対話を切望した。


とはいえ男は魔王として転生した。魔界は暴力と魔力と混沌が支配していた。


男はこういう場合の国家的な対処を知悉していたので自らの権能で「魔王軍」「魔王内務省」「魔王警察」「魔王公安局」を創造・組織・運用し魔界を掌握してしまった。


魔王が魔界を支配し統括する行政府は「魔王城」として魔族から畏怖された。魔王に逆らった者は

「魔王治安維持法違反」で「魔王特別徴税」を課され払えない場合は懲役労働の呪いをくらった。


或る者は魔王都建設の現場監督を課され現場職人に詰められ、或る者は配送業務に走りまわされ

或る者は終わることのない書類処理をやらされ、魔王に逆らうものは魔界ではいなくなった。


この懲役労働に耐えるか、何事もなくこなす者を魔王は魔王城のスタッフとして好待遇で雇い入れた

同時にこの魔王城を運営する人材育成に「魔王大学」を設立し魔界の次世代を教育する方針をとった。


魔界運営が軌道に乗った時期、女神が召喚した勇者が魔王を打倒すべく魔王城に向かっているとの情報が魔王公安局からもたらされた。


魔王となった男は女神と対話した出来事を思い出しぽつりとつぶやいた


              「バカとは会いたくないな」




勇者一行が魔界の国境にさしかかると魔国の国境検問所が建っていた。勇者が身構えて検問所に向かっていくと メガネをかけた魔族が対応した。

「身分証明書提示と入国目的を記入してください。パスポートがあれば提出してください。武器や危険物や違法薬物の持ち込みは禁止されています。飲料や食料・植物は検疫所に提出してください」


転生者であった勇者は面食らったが、しぶしぶ応じた。パーティーの魔法使いのポーションが違法薬物として、僧侶の薬草が検疫で外来植物として、戦士のもっていた麻薬は厳重注意され没収された。


勇者や戦士の装備については「装備しないこと、骨とう品美術品としてなら持ち込み可。市中で装備使用の場合は魔王治安維持法違反として摘発検挙されますのでご注意ください。攻撃魔法も同様です」

と注意を受けた。


勇者は入国目的にバカ正直に「魔王打倒のための魔界入国」と書いてしまい他のメンバーを慌てさせた。だがしかし。

メガネの魔族は告げた。「本来ならば魔国元首への武力挑戦や行使においては他国の方々では侵略

テロ行為にあたり魔王治安維持法違反になります。しかしながら本国においての有力魔族の方の「陳情」や魔国元首地位を欲する方々のための資格試験制度が今年度より設けられました」


おもむろに魔族は分厚いパンフレットを取り出し勇者に受け取らせた。その表題とは


           「魔王挑戦権資格試験のしおり」


魔王挑戦権は今年度より設けられた魔国国家資格です。種族・国籍・出自・年齢・性別を問わず魔国元首に直接に武力行使および挑戦する権利が与えられ、魔王への陳情・交渉と打倒による元首地位の奪取・魔王制の廃止・国家革命・国家主権奪取・魔王討伐の機会が可能となります。


1,共通資格試験実施について。

魔王挑戦権資格試験は年1回、年初月末に魔王大学の所定の教室に受験番号にしたがい試験場が設けられ

受験が実施されます。科目は第一外国語(魔国)、第二外国語(他国および挑戦者出身国)、数学、魔法学もしくは錬金術、社会(魔国歴史、世界史、地理より選択)の5科目で、魔法学および錬金術は、軍学・会計学に変更可能です。外国語においてはヒアリング試験、魔法学・錬金術については実技・実験試験が選択制において実施されます。


2,受験願書願の提出について。

受験願書願は試験当日の2か月前までに魔王城および魔王大学の「魔王挑戦権資格試験窓口」に書面を

提出してください。願書願は窓口で無償配布しております。提出の際は受験料13,200魔王ゼニー税込

のお支払いをお願いいたします。 


3,受験票発行とご注意

願書願提出にて1時間ほどで受験票が発行されます。その際に受験者氏名と受験番号の確認をお願いいたします。受験票発行の際に魔力付与で本人確認が可能となります。受験票は試験場および魔国内での身分証明書になっておりますので試験当日まで紛失・破損しないように大切に保管しておいてください。

受験票の喪失は受験資格失格となりますので、その場合は期限内において再度願書願を提出となります。


4,不正行為の発覚と処罰

魔王挑戦権資格試験における不正行為の規定は替え玉受験・カンニング・事前の試験問題漏洩および入手・他者への妨害行為・試験妨害のこころみなどで、発覚した場合これらは犯罪行為として魔王治安維持法違反で摘発検挙されます。魔王挑戦権資格試験での不正行為は重罪ですので受験者は受験資格を永久に喪失し試験も失格となります。


5,合格発表について

魔王挑戦権資格試験は魔国元首を含めた魔王大学教授陣の「魔王挑戦権資格試験問題作成チーム」による試験問題回答への厳正な採点をおこない合否が判定されます。最高得点取得受験者および上位3名には魔国元首からの表彰と特典が与えられます。合格発表は試験実施日から2か月後の年度末月第1週初日にて魔王 大学正門前に合格者受験番号が張り出されます。遠方受験者には魔法電報による合否連絡サービスも利用できますので受験の際申し出てください。


6,魔王挑戦権資格および 「全魔国魔王挑戦権闘技大会」実施について

魔王挑戦権資格試験合格者には国家資格「魔王挑戦権資格」が授与されます。資格授与者には魔国月

11月3日に魔国アリーナ「魔王殿武道館」にて開催される「全魔国魔王挑戦権闘技大会」に出場可能となります。「全魔国魔王挑戦権闘技大会」においては対戦者には魔国元首たる魔王陛下が元首資格防衛者として対応されます。資格授与者にて大会参加を希望の方は「全魔国魔王挑戦権のしおり」を魔王殿武道館および魔王城にてお求めください。


その後に長々と受験会場案内だ科目選択やら、実技試験内容やらが続いたが、勇者一行の浮かんだ表情には驚愕と絶望が刻まれていた。


そんな勇者一行の苦悩をよそにメガネの魔族は言った。

「そうそう遠方や外国からの受験の方にこの国境検問所にも「魔王挑戦権資格試験窓口出張所」があるんですよ。願書もこの検問所で配布しております。受験をご希望ならこちらに記入して検問所左手奥の

窓口へどうぞ。ああ、受験料13,200魔王ゼニーもお忘れなく。全魔国魔王挑戦権には出場者全員に

魔王挑戦権資格が必要ですからね?まだ願書は間に合いますから」


ちなみに、魔王挑戦権資格は魔国内では年々受験者が増え倍率はうなぎのぼりである。この制度が

魔国の教育レベルと人材育成に多大な貢献をしていることは言うまでもないことである。





まあ、勇者とは言え他国の元首に挑戦するんですから。

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