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First stage 防衛機動戦(2)


 指定された集合地点に向かうため、出撃した母艦を周回するように飛行する。

 改造を重ねて不格好な見た目をした巨大な船体を見ると、そこら中に激戦の跡が残っている。本当にこの船はどれだけの年月を戦ってきたのだろうか。

 そんなことを考えながら、操縦桿を引いて機首を集結地点に向けた。


 集結地点ではすでに多数の戦闘機が編隊を組んで飛行しいた。私の機体もその中の1機として編隊に合流し、次の指令を待つ。


 少し経つと全ての機体が合流したようで、集結地点には戦闘機15機が三角形の編隊を組んで待機していた。編隊は隊長機を先頭にし、私は隊長機のすぐ後ろが定位置となっている。


『よし、全機揃ったな。これより、作戦を通達する。

 補給ポイントで待機している敵艦を発見した。彼らに肉薄し、見える砲塔をなるべく破壊しろ。その時はなるべく防御シールド発生装置も破壊してくれ。それが終わったら敵の戦闘機の迎撃が任務となる。以上だ』


 母艦の作戦ブリッジから全体通達が済まされる。


 どうやら補給船が離脱することをどこからか聞きつけた連合協商が、小艦隊を差し向けたようだ。


 作戦指示に従い母艦の対艦砲や対艦ミサイルなども攻撃準備に取り掛かるのがコックピットの外に見える。


『全機、聞いたな。これより作戦行動に当たる。エンジンフルパワーまで5秒前!』


 隊長の号令に合わせてエンジンのギアに手をかけ、ゴーの合図があれば機体を一気に加速させられるよう準備する。


『3秒前……2……1……ゴー!』


 中隊長からの合図が出た。


 エンジンのギアを最大まで押し出す。エンジンが唸り声を上げ、機体の速度が一気に上がるのが伝わってくる。


「うっ……」


 体にかかる負荷が一気に増し、思わず気絶しそうになるのを堪える。

 ほんと、何度飛んでもこの圧力は苦手だ。


「うぉぉぉお」


 気合で耐えていると、レーダーにマークされていた敵艦が目視できる距離まで近づいていた。小惑星帯に紛れて点々と移動しているのが見える。どうやら中型艦を中心に7隻で構成されているようだ。


 敵との距離が3キロまで近づいたところで、私はエンジン出力を抑えて減速する。それと同時に、操縦桿を倒して敵艦に当たらないよう機体を操作する。


「んっ」


 今度は、減速時にかかる逆の負荷が体に圧しかかってきた。

 しかし加速の時ほどキツくはなかったため、すぐに攻撃態勢に移ることができる。そして通り過ぎると小惑星を上手く避けながら反転し、今度は敵艦へと攻撃を浴びせる。


 攻撃は敵艦の後部を中心に浴びせられ、私の攻撃は敵艦の防護システム、その電気回路を破壊した。


 敵艦の電気回路から複数の爆発が起こっているのがよく見える。

 さらに、後部の電気回路だったためエンジンにも損害が出ているのが分かった。いい戦果だ。これならボーナスにも期待できる。


「よっしゃー!」


 私は思わず雄叫びを上げる。


『よくやった、マウザー5』


 その声に応えるかのように中隊長から称賛の無線が入ってきた。

 どうやら、他の機体も敵艦に対して多数のダメージを与えたようで、どの敵艦からも黒煙が上がっている。


 共同無線を開くとパイロットは皆、喜びの声をあげている。1往復の攻撃でこれほどまでに損害を与えれれば上出来と言える。

 しかし、喜ぶのはまだ早い。


『まだ終わりじゃないぞ』


 中隊長は浮足立っている全機に対して気を引き締め直させた。それとほぼ同時に、損害が軽微だった敵艦から対空砲が飛んでくる。


『各機に告ぐ。迎撃態勢を維持せよ。敵戦闘機が接近中』


 母艦からも警告無線が入ってきた。

 敵艦の方を見ると補給船への攻撃をやめて離脱を始めているのが見える。その間を縫うようにして敵の戦闘機が見え始めた。


「敵機発見」


 私は共同無線に向かって呼びかける。


『全機、敵艦隊から離脱し、敵戦闘機の迎撃に入れ』


 その指示に従い、機体を旋回させて接近してくる敵戦闘機の方に機首を向ける。速度と火器管制システムを調節し、戦闘機との格闘戦用のシールドに型を変更する。


『さぁーて、皆んな、本来の仕事の時間だ』


『『「おう!」』』


 護衛戦闘機としての本来の任務に、各パイロットたちから一層やる気に満ちた声が聞こえてきた。



 戦闘機同士の格闘戦が始まった。

 中隊長の指示で、3機1小隊として行動することになっている。


『マウザー5、マウザー6、俺に着いて来い』


 マウザー4に乗っているバルから無線が入ってくる。今回の小隊編成で、小隊長を務める人間の男だ。


『マウザー6、了解した』


「マウザー5、了解」


 私は小隊長機の後に続くように機体を移動させる。同様にマウザー6の機体も近くに飛んで来る。


 ちなみにマウザー6に乗っているのはケインと言う、亜人族の男だ。見た目は、口から飛び出た牙に人より長い腕で、人間の何倍も長く生きる。彼はアウター・コアの出身だ。


『我々は中隊長の小隊を援護する』


 バルの掛け声の元、私達は戦闘態勢に移行して敵機の群に突っ込んでいく。


 格闘戦は至って順調に進められていた。性能において勝る私たちの戦闘機中隊にとって、散発的に出てくる敵機を迎撃するのは簡単な仕事だ。性能に勝ると言っても各自の戦闘スタイルに合わせてカスタムしただけの、事実上中古の機体を使っている。


「敵機、右からきます!」


 私達を狙う敵機を見つけると、すぐに小隊員に知らせる。


『了解した。マウザー6、対処しろ』


 バルの指示で、ケインの乗る機体が小隊から離れていく。


 ケインは敵機と正面衝突しそうな勢いで突っ込んでいき、互いにレーザー砲を放つ。しかし、どちらもシールドによって防がれ、大した損害が見られなかった。


 ギリギリを避けるようにすれ違うと、どちらも旋回して再攻撃の用意をする。


「マウザー6、後方から新たな敵機」


 私はさらに接近してくる敵機を発見し警告をする。


 ケインは1対1の格闘戦に集中していて、敵機の増援に気が付くのが遅れている。敵機からの攻撃を受ける前になんとか気がついたようで、『援護してくれ!』とケインから救援の叫びが聞こえてくる。


『マウザー5、援護だ』


「了解」


 私は操縦桿を捻り直すとケインの乗る機体を狙う敵機を追って速度を上げていく。


 レーザー照準を起動すると敵機の背後に迫る。


 それに気付いた敵機も回避軌道を取り始めた。照準に補足されるのをを右へ、左へと避ける敵機にイライラしてきた。


「クソっ、これじゃあ狙えないじゃないか」


 目の前で敵がロックを避けるさまを必死に追いかける。レーザーが定期的に敵機を捉えては、外れる音がコックピット内に響く。


 私は息を止めて集中すると、捉えた音が響いた瞬間に引き金を引く。レーザー砲が火を噴き敵機をかする。


 しかし照準があっていない敵機に当たるわけもなく、レーザー弾は敵機をかすめるばかりだ。


「ぷはー、おしぃぃぃい」


 再び引き金に指をかけ照準音と視界に集中する。


『助けが必要か? マウザー5』


 どうやら、すでに敵機を撃破したバルが気にかけてくれたようだ。


「こっちももう終わる」


 ここで助けてもらうのは、何かムカつくのでその助けを断った。

 敵機の回避軌道を予測して、一か八かの賭けに出る。敵機が次に曲がる方向を左と仮定し、予め左に照準がいくようにセットしておく。


 そして再び、敵の機体にレーザーロックを掛けようと狙う。すると敵機は左側に大きく旋回した。


「もらったぁぁぁあ」


 私は左に旋回した敵機をレーザー照準の中心に捉える。

 そして引き金を引いた。レーザー砲から出たレーザーが敵機に吸い込まれるかのように飛んでいき、次の瞬間、敵機は宇宙の藻屑になって消え去った。


「よっしゃー」


 私はコックピットの中で大きくガッツポーズをする。


『よくやった、マウザー5』


 バルやケインもすでに敵機を撃破したようで、いつの間にか私の後ろを追ってきていた。


『少し遅くなかったか?』


 すかさずケインが指摘してくる。


「うるさい。敵機のパイロットの腕がよかっただけだ」


『お前たち集中しろ。敵機はまだいるぞ』


 言い争いそうになる私たちをバルが治める。

 少しむかついたが、新手に向かうバルの機体を追いかけて、私は操縦桿を倒した。



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