Prologue. 世界は輝いて見える――A
はじめまして!
リメイクですが、ほとんど新作に近しい作品になります。
頑張って完結まで書き上げるので、よければお楽しみください。
星々がきらめく銀河系の片隅で。
私は朱色の惑星が一望できる軌道衛星の展望エリアから、そんな星から旅立っていく様々な艦船を見送っていた。自由に飛び、どこまで行ける翼でこことは違う世界に旅する。
「ここにいたのか? 君は船が好きだな」
私が見入っていると、背後から声をかけられた。
「ガミさん!」
私の横に立ったその男はガミリオスと呼ばれる男。私もほかの人に倣ってガミさんと呼んでいる。低い声に対して若い見た目をしている。
「まったく、よく飽きもしないで見ていられるな」
「……あれはみんな自由だもん」
「そうか。お前はパイロットに向いている」
「……」
私は空を飛んだことがない。
空を飛ぶことがどんなものかは知っているが、自由に飛ぶことを知らない。
私は空を飛びたいのだろうか。
「……そろそろ行くぞ」
そう言って先に歩き始めた男。私もその後を追う。
と、その時、背を向けた窓のすぐ近くを何かが高速で通過する。窓に響き、その振動の音が私の胸を震わせる。
私は思わず振り向いた。窓の外には何もない。
「どうした?」
「今のは何?」
私の質問に男が窓の外を眺めてから言った。
「あぁ、今日は帝国の航空戦闘隊が来る日だったな」
男が言った言葉が上手く理解できなかった。『こうくうせんとうたい?』とは何だろうか。
「ちょうどいい。今から行くところでそれが見れるだろう」
「本当?」
私はこの胸を高鳴らせた存在を見てみたいと思った。
「失礼します」
重厚感のある扉が開き、男がそう言って部屋の中に足を進める。私はその部屋からあふれる不気味な気配に怯えながらも男の後を追う。
「良く来たな、ガミリオス」
「お久しぶりです。ロード准将」
大きな窓を背にして机に座る一人の男。その周りには、他にも男が五人ほどが立っている。
机に向かっている男は、ガミと違って立派なひげを蓄えた貫禄のある見た目をしている。
「その子は前に言っていた?」
「はい、そうです」
大人たちの視線が私に向けられる。
しかし、そんなことより私の視線は窓の外に向けられていた。部屋にあてがわれた大きな窓の外には、小さな飛行機が何機も飛んでいるのが見える。
私は窓に近づいた。
そうすることで外を飛び回る自由な機体が何か
「外を見るのか? なら席を譲ろう」
髭を蓄えた男が私の動きに気付いて、席を立ちあがる。
そんな様子を見て、ガミが私を持ち上げて席に座らせてくれた。少し視界が広がったことで、よりはっきり外の様子が見えるようになった。
三機一編隊になって宇宙空間を飛び回る飛行機たち。
固く規定された編隊飛行に見えて、それぞれが最大限自由に飛んでいるように見える。機体をひねって、返して、降下して、上昇して。
そのなかの一編隊が大きく旋回してこちらに近づいてくる。
「お、ガルバー大尉らだな」
何か別の話をしていた大人たちがその存在に気付いて声を上げた。
「ガルバー?」
「帝国一のパイロットだ」
「ふーん」
どうやらすごい人らしい。
近づいている機体は、他の機体と違って深い青色の機体色に赤色のマーカーが描かれている。
エンジン音が大きくなり、私の鼓動も跳ね上がる。このドキドキは恐怖なのか、期待なのかは分からない。それでも私は目に映ったその機体から目が離せなかった。
「私もいつか飛びたいな……」
誰にも聞こえないくらい小さな声が漏れる。
大人たちは話に夢中になって聞こえていない。
窓の外をさっきの飛行機が横切っていく。
気のせいかもしれないが、その機体のパイロットと目が合ったような気がする。
輝く星々の海に飛行機たちのエンジン光が紛れていく。
☆★☆★☆★
私は夢を見る。
憧れたその自由な飛行機のように、自由に生きることを。
第一話は本日の夕方に投稿します。
それでは次回もお楽しみください。