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世界が終わる日

今日は世界が終わる日だ。


それはずっと前から言われていた。


テレビの偉い研究者やら、学者やらが、警告をしていた日。


その日が今日なのだ。




世界の終わる日が近くなるにつれて、世間は少しずつ賑やかになっていった。


いい意味でも悪い意味でも、賑やかになった。


朝昼晩問わず騒いで笑う声が聞こえてくる。


泣いている声や怒声、叫び声が聞こえてくることもあった。


誰も働かなくなって、世界はどんどん終わりに近づいていく。


テレビは映らない。


お金の意味はなくなった。


みんな好きに生きている。


終わりが近いから、人は人でなくなっていくのだろうか。


でもインターネットは生きている。


まだ、生きているというだけなのだろうけれども。




うちでゲームをするのに使っていたモニターは、ゲームの画面を映し出している。


ゲーム画面には、ホラーゲームが映し出されていた。


主人公がずっと化け物に倒されて、ゲームオーバーになる様子ばかりだった。


操作をしていないから、生き残れるはずの彼も生き残ることはできないのだ。


きっと、彼は世界が終わるまでこうして化け物の餌食になるのだろう。




外は紺色になった。


夜が近づいてきたのだろう。


電気はまだ生きている。


ゲーム画面はまだゲームオーバーを流し続けている。


家族がつけているラジオから歌が流れる。


世界が終わると言われた時から流行り出した歌だった。


誰が歌っているのかも知らない歌だ。


歌は明るい曲調でこう歌う。



「終わる 終わる 世界は終わる


落ちる 落ちる 空が落ちる


さあ 消えてしまえ!」



高らかな女性の声。


消えてしまえと叫ぶ美しい声。


明るい音、暗い叫び。


こんな歌が最近は四六時中ラジオから流れている。



暗くなった部屋では家族が皿を前にしていた。


真っ白な何も乗っていない皿。


自分が座るところにある皿だけ、フランスパンとチーズのスライスが乗っている。


これが最後の晩餐であるということだろう。


みんなはもう食べてしまったのか、それすらもわからない。



妹は俯いていた。


父も母も同じように俯いている。


従弟もいた。


祖母は既に眠っているのだろうか。


タオルケットに包まって身体を折り曲げている。


誰も何も言わない。


そんな静寂を貫いたのは、ぽつりと口から出た言葉。



「消えたくない。」



間違いなく、自分の声であった。




ピンポーン。


不意にインターホンが鳴り響く。


暗くなった部屋の中、インターホンのモニターが明るくなる。


こんな時に、誰が来たのだろうか。


誰も対応しようとしない。


俯いたまま動かない。


まるで時が止まったかのようであった。



「はーい。」



インターホン越しではないから届かない返事。


自分は立ち上がると、インターホンに向かおうとする。


瞬間、

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