表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こってますね、マッサージ致しましょうか?  作者: 蜜柑缶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/78

13 借金89,935,000ゴル

ブクマありがとうございます

 この貴族が何を考えているかよくわからないが兎に角マッサージの為の準備を始めた。ハント伯爵に着替えを渡し、持ち込んだマッサージ用ベッドを部屋の奥のバルコニーの近くへ設置し胸当て用のクッションを置きバスタオルを敷く。

 

「あら、いつの間にこんなもの作ったの?」

 

 シャーリーさんには二度ほどマッサージをしていたがベッドの事は知らない。

 

「マイルズ様に作って頂きました。私の一番客なので」

 

 まだ新品のベッドを撫でながら笑顔になってしまう。

 

「マイルズったら抜け目ないわね、私も今度これでお願いね」

 

「勿論です!」

 

 二人で話していると着替えを終えたハント伯爵がやって来た。

 

「ちょっと短くないか?」

 

 マイルズにはピッタリだった作務衣風ガウンはハント伯爵には少し丈が短かったようだ。それもそのはずで、ハント伯爵はガッチリした体型で筋肉質、背も高く何よりかなりの美丈夫だ。鼻筋がスッと通り薄い唇に蒼い双眸は意志が強そうな光を宿している。整えられたダークブロンドの髪と相まって正に前世で言うところのイケメンだ。

 

「申し訳ございません。マッサージ用の服ですので本来丈が短くても問題はないのですが次回までに閣下のお体に合わせてご用意いたします」

 

 ヤバい!新品を用意してきたが急な予約だった為そこまで頭が回ってなかった。だって貴族だって知ったのもさっきだし……ホント私って馬鹿。

 

「二回目があるという自信があるのか?」

 

 イケメンに目を合わせられ心臓が跳ね上がる。

 

「あわわわっ、あの、いえ、誠心誠意行いたいと思っております」

 

 うわぁ〜私何言ってるんだぁ〜

 

「リーバイ様、からかわないであげて下さい。アメリはきっと貴族を相手にするなんて初めてなのですから」

 

 はぁ……シャーリーさん、神!女神!!

 助け舟を出してくれるシャーリーさんにどれだけ感謝してもし足りないが恩に報いるために深呼吸すると仕事に取り掛かることにした。

 

「ではこの上に上がって頂いてここへ顔を当てうつ伏せでお願い致します」

 

 私の説明に、はっ?って感じでマッサージベッドの穴を見つめる伯爵。ジロリとこちらを見てくる蒼い瞳には「正気か?」と私を怯えさせるのに十分な迫力がある。

 

「大丈夫です、そこへ顔を当てていただく方がうつ伏せでマッサージを受けるのに首への負担が軽減されるのです」

 

 笑顔に見えるように口角をあげて頬を引きつらせながら答える。

 殺されるかも……

 

「これはかなり無防備な状態になるな……」

 

 何かを思案するように呟きながら言った通りに顔を穴へ当てる。

 ふぅ……まだ生きてる。

 失礼致します、と言ってベッドに上がり伯爵を跨ぐ。伯爵は体格が良くかなり鍛えられてた大きな体をしている。前にドルフが言った通りもう少しベッド幅に余裕があったほうが良かったかも。

 

「まさかと思うが……これは誘っているのか?体は売らないと聞いてたのだが?」

 

 気配を感じ伯爵が身を硬くしたのがわかる。硬くって言ったって体全体の事である一定の箇所では無いからね。

 

「はい、体は売りません。私の仕事はマッサージですから」

 

 そう言いながら膝立ちになり背中に両手を当ててグッと力を込めた。伯爵の背中は着衣の上からもわかるほど筋肉がついておりかなり鍛え上げられている事がわかる。背中全体を軽く押しながら感触を確かめたが少し硬い気がする。恐らく訓練なんかを終えてからここへ来たのだろう。熱を持つ筋肉は前世で言うところのクールダウンが出来ていない状態かな?

 

「もしかして閣下は騎士様ですか?」

 

 シャーリーを振り返り確認してみると少し意外そうな顔をした。

 

「マダムから聞いてないの?リーバイ様は騎士団に所属していて中でも優秀とされる近衛隊に席を置く王を御守りする立派な方よ」

 

 ヒィッー、マジ、いや、本当ですかぁ!と、叫びそうになったが何とか口をぎゅっとつぐんだ私ってかなり偉いと思う。

 

「そ、そうなのですね。通りで立派なお体……閣下、ここへは訓練を終えられて直ぐにいらしたのでしょうか?」

 

「訓練、という訳では無いが確かに激しい動きをした直後ではある」

 

 今の状態を確認したいと思っている私の問いかけに的確に答えてくれる。確かに冷静に考えれば今はスイート営業の開始時間で十一時、訓練をするには遅すぎる時間だ。だが詳細は聞けるわけないし知る必要もない。

 

「わかりました、ではマッサージを始めます」

 

 私はまず伯爵の足の裏を柔らかく解すように直接触れてマッサージをしていく。スポーツなど激しい動きをした後の筋肉には疲労物質が溜まっている為それを流すように筋肉に沿って揉みほぐすのがいい。前世で結婚して子供を持ったときにサッカー好きの息子の為に少しスポーツ後のマッサージの仕方を勉強していたことを思しながら進めていく。

 

「強さ加減はいかがですか?痛かったら我慢せずに仰って下さい。強すぎるマッサージは筋肉を痛めますから」

 

 足の裏に両手の親指でぐいぐい万遍なく押していく。

 

「あぁ……気持ちいいよ。丁度いい」

 

 大きな足はこれまでの訓練のせいか皮が厚く硬い皮膚をしている。私は持ってきていたオイルを手に出しそれを伯爵の足に塗り込むように揉んでいく。

 

「私の時は座った態勢だったから足はやってもらった事無いわね」

 

 シャーリーが私の手の動きをじっと見ている。私は足の裏からふくらはぎに進みつつ頷いた。

 

「こうやって足をマッサージしておけば浮腫みが軽くなります。特に長時間同じ態勢でいた後などは湯船の中で自分で痛くない程度に揉むと筋肉痛も軽減されますよ」

 

 浮腫が軽くなると言われればトキメク女子は多いだろう。シャーリーが嬉しそうに顔をほころばせた。

 

「そうなの?自分でならいつでも出来るわね」

 

 話しながらもマッサージの箇所が段々と上に上がっていくと伯爵が少し身じろぎする。

 

「すみません、ちょっと際どい所にも触れる感じになるかもしれませんが他意は無いのでご安心下さい」

 

 女性貴族なら入浴後に侍女達からオイルを塗り込んでもらうことに慣れていて体を触られる事に抵抗は少ないだろうが男性はあまり経験が無いのかもしれない。

 さっきのマイルズやドルフはまだマッサージに慣れていなかった為そこまで追い込んでいなかったが、伯爵は激しく動いたばかりなのでしっかりと解していたほうが明日の為にも筋肉の為にもいいだろう。筋肉は正義だ!

 太ももを筋肉に沿って擦ったり軽く圧迫したりして、血流が良くなるように優しく揉んでいく。伯爵は段々と足が心地よく温まってきたのか、体の力を緩めてリラックスしてきたように感じる。

 シャーリーさんもすぐ横にいるし、大丈夫かなと思いきってお尻を掴んだ。

「うっ……」と、一瞬声を漏らしたが伯爵はまたすぐマッサージ身を任せた。お尻の筋肉を解している私の手をシャーリーが真剣に動きを観察している。もしかしてマッサージを覚えようとしているのだろうか?勉強熱心だなぁ……

 

「あっ、ごめんなさい。貴方の仕事を盗み見る気は無かったのよ」

 

 私の視線を感じたのかシャーリーさんが謝ってきた。

 

「いいえ、大丈夫です。覚える事が出来れば一緒に働けるかもですね」

 

「一緒に?私と?」

 

「はい、マッサージ出来る人の人数が増えればどこかでお店をやることも夢じゃないですよね」

 

 借金さえ払い終われば晴れて自由の身になれる。そうなれば下町に店を出すなり、色々な町や村を訪問しながらマッサージをするのも良いかも。私ってこのアーバスキング国の王都ヘルムから出たことがない。地方の領地を回るのも楽しいかも……

 現実逃避のような夢に思いを馳せながら伯爵の背中を解していった。

 自分の事に必死で隣でシャーリーがどんな顔をして私を見ていたのか知らなかったのは惜しい事をしていたかもしれない。

 

 腕や肩、首筋を軽く解し、今度は仰向けになってもらい胸筋の近くの脇もぐいぐい解していく。その頃にはすっかりリラックスしていた伯爵はもう戸惑う事なく私に身を任せていた。最後に頭を揉み、こめかみもじっくり解して終了した。

 

「はい、終わりました。ゆっくりと起きてください」

 

 夢から覚めたような顔でハント伯爵が起き上がり私を見た。

 

「体に違和感などありませんか?」

 

 ベッドに腰掛ける伯爵の後ろにまわり、軽く首から肩、背中にかけて擦って仕上げていく。

 

「いや……予想以上だな」

 

 はい!頂きました。

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ