表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

文化祭 映像作品

小説版

作者: 空白

人生初小説となります。

文章が下手だったり、読みづらいかもしれません

夏の再来だと思えるほどの、澄んだ青空。

静かな窓の外とは反対に、騒ぎ立てる教室。

いつも耳に入るはずのクラスメイト達の声が、癇に障る。


ポケットに手を入れると、零れ落ちるキーホルダー。

それを慌てて拾い、眺めてみる。


「...え、ユウ......ん」


!!... なんだ、幻聴か。

それもそうだ、こんな声が聴こえるはずがないのだから。

馬鹿馬鹿しいと思いながら、また目を閉じて......




「じゃあ、一時間目は生物室に移動だぞー」


「「「はーい」」」


...おっといけない。つい眠ってしまったみたいだ。クラスメイト達はもう準備している。

「レイいっしょいこー」 「うん」 「やべっ白衣忘れた!」「うわドンマイw」

僕も早く準備しないとな。えーと教科書はどこだっけ...あったあった。

「最後の人、電気消しといてねー」 「あ、はーい」

さてと、そろそろ急がないと。



ふぅ...

危うく漏らすところだったぜ。危ない危ない。

ってかトイレ行ってる場合じゃない!生物遅刻だ!

教科書たちを拾い上げ、小走りで生物室に向かう。

このスピードならギリギリセ「ちょっと待って」 !?


「はいぃ!すいません!でも遅刻するので!...って結城ゆうきさん?」


(友達と先に行ったんじゃないのか?)

彼女は口を開く。


「ねえ、ユウトくんっていつも一人だよね」


い、いきなりの名前呼び!しかもちょっと失礼!


「これから話すこと、聞いてくれない?」


その真剣な表情に、少し戸惑いながら、

― キンコーンカーンコーン、キンコーンカーンコーン ―

それでも、首を縦に振る。

彼女は微笑んだ。




木南きなん、遅いぞー」


「いてっ。すいませんお腹が痛くって」


「しょうがないから、さっさと席につけ」


ふと目をやると...あれっ!?結城さんもう席ついてんじゃん!

さっきも様子がおかしかったし、なんか不思議な感じだな。

やば、目が合った。みてたのバレた!?慌てて目をそらす。


「ここわかる人ー、じゃあ結城」


お、先生ナイス。


「それは......


(結城レイ。あえて一言で表すならば“才色兼備”だろうか。

この学校に入った者なら、一度はその名前を聞いたことがある。

佇まいは凛として、一輪の花のような印象を与える少女だ。

だから、色んな男子から狙われるし、それで実害を被ったこともあるそうだ。

さっきの話...そんな人が、どうして僕なんかを気にかけていたんだ?)


いやいや、勉強に集中しなければ。頭を振り、意識を黒板へ移す。

その時僕は、彼女がこちらを見ているのに気付かなかった。




「あれ、落とし物かな?」


床に落ちていたそれを拾い上げると、『結城レイ』と書かれた白いハンカチ。

はあ...見つけてしまったからには渡さないといけないな...

だけど丁度いいかもしれない。届けるついでにさっきのことを問いただそう。



…と、思っていたが、一番重要な問題を忘れていた。

そう、話しかけるタイミングがないのである。

ただでさえ女子に話しかけるのは緊張するというのに、相手は結城レイだ。

しかも、休み時間は友達といることが多い...なんて強固な守りなんだ。

どうしたものかと思案していると、急に後ろから


「お前も結城のこと狙ってんの?」「わっ!?」


声をかけられた。

日高陽太ひだかようた。こいつは、クラスの陽キャグループに位置する奴だ。


「もしそうなら、やめといたほうがいいぞ」


「え?」


「ほら、見えるだろ。隣にいるやつ」


友崎ともざきさんのこと?」


「ああ、あいつは結城に近づく男を片っ端からやっつけていく。まさに姫を守る騎士ナイトだ。かく言う俺も、ボコボコにされちまった一人だが...やべっ噂をすればだ。逃げるぞっ」


こっちに近づいてくる!あいつ逃げやがって!

逃げ遅れた僕は、その騎士に捕まってしまった。


「ちょっと!あんたさっきからレイのことジロジロ見てるけど、もしかしてストーカー!?」


「スト、ち、違うよ!」


「じゃあ何なのよ」


「お、落とし物...」


おもむろにハンカチを手に取り、差し出す。

結城レイも近寄ってきた。


「あ!これ大事なものなんだ!ありがと木南くん!」


そう言って顔をほころばせる彼女は、やはり先ほどとは違う雰囲気だ。

聞くなら今しかないな。


「さっきのことなんだけど ――」


「さっき?」


あれ?なんか思ってた反応と違う。演技には見えないし...

本当に覚えていないのか? そういえば呼び方――


「ねえ、疑いは晴れたんだし、何か言うことあるんじゃない?」


はっ、確かに。僕はあらぬ疑いをかけられていたのだ。

そもそも人をすぐにストーカーだと決めつけるなんて失礼にも程がある。

そんな視線に気が付いたのか、


「あー...疑ってごめんね?」


疑問形かよ。

一応の謝罪を受け入れ、僕は自分の席へ戻る。

もう少しで何か思いついた気がするけど、まあいいか。




それからというもの、僕は結城レイが気にかかるようになった。


「ユウトって最近いつも結城のこと見てるよな」


「み、見てないし」


おい、ニヤニヤするんじゃない。

そうそう、日高とも仲良くなったんだった。

(同じ女を好きなもの同士、仲良くやろうぜとのことらしい。誤解だ。)

ただ、今ではネットで銃撃戦ゲームをする仲だし、もう半ば諦めている。

せっかく友達ができたし、誤解は解けなくてもいいかもしれない。


「なあ、文化祭の伝説、知ってるか?」


「あー、あれでしょ?幽霊が出るとか、永遠に結ばれるとか、胡散臭いやつ」


「それだよそれ!だから、その、結城を誘ってやろうと...」


結城さんがチラチラこっち見てる!もしかしてこいつらって両想いなんじゃ...

いや、日高は気づいていないらしい。実は奥手みたいだ。


「なんだよそのムカつく顔は」


「な、なんのことかな~。それより、どうして僕に?」


「まあ、一応ライバル?だからな」


面倒になってきた...




その後、また彼女に出会った。


「ユウトくん」


やはり、僕が知る結城さんとは違う。

初めてあった時、彼女は何て言っていたっけ。


――「これから話すこと、聞いてくれない?」


「文化祭の伝説って知ってるかな?」――


そうだ、あのとき聞いていたんだっけ。

そして呼び方も


「君は、結城さんじゃないよね」


「はあ...気づかれちゃったか」


「私、幽霊なの」




「幽霊って...僕は二重人格とか、そういうものを想像してたよ」


「信じられない?じゃあほら」


「わあ!って透けてる...?」


触れ合うはずの手が、空を切る。

確固たる証拠を見せつけられては、信じるほかはない。


「...意味わかんないこと聞くけど、死んでるの?結城さんなの?」


「私もよくわからない、けど、()()()()は生きていて、私はもうすぐ消えてしまうことだけはわかる」


「消えるって...」


「そういうものなんだよ」


そう答える彼女の顔は、陰っているように見えた。

せっかく知り合えたのに、消えてしまうなんて少し寂しい。

何か、何かないか...考えろ...あっそうだ!


「文化祭、一緒に回らないか?」


「ふえっ!?」




「びっくりしたよ~。まさか幽霊の私を誘うなんて」


「まあ自分でもびっくりだよ、女子を、しかも結城さんを」


「...」


?なんか不機嫌だけどどうしたんだろう?


「どうしたの結城さん?」


「私と()()()()は違う。だから別の名前で呼んでほしい」


「じゃあレイでいっか」


「...!?」


「行こう、レイ」


「...ばか」


「え?なんて言ったの?」


「何でもない!射的いこ!射的!」


「あ、ちょっと待って」


レイに連れられて射的の教室へ向かう。


「店員さん射的二回くださーい」


銃を受け取ったと思ったら、僕の方へ向かってきた。


「ユウトくんのかっこいいとこ見たいなー」ニヤニヤ


「日頃AP○Xで鍛えた腕を見せてやるよ!」


集中しろ...

背筋は伸ばさず、やや前傾気味。

銃は肩付けをし、安定性を確保する。

腰を少し落とし、膝を曲げ、反動を軽減。


「「おぉ...」」


僕の様になった構えに歓声が聞こえる。

脇を締め、引き金に手をかける。

ガキンッ!!




「あっははは!私の勝ちー!」


「賞品は何になさいますか?」


「じゃあキーホルダーで」


「くそっ、なんで一発も当たらないんだよ!」


「あんなかっこいい撃ち方してたのにww」


「ゲームと現実は違うということか...ってか上手くない!?」


「まあねー。あ!隠れて」


「?」


だんだん足音が近づいてくる...


「はあー、レイどこ行ったんだろ」


「俺も誘おうと思ってたんだけどなー」


日高と友崎さんだ。あの二人結構仲いいな。


「お、射的か!一緒にやろうぜ」


「まあいいけど...」


やば!こっちくるぞ!ばれたらどうする...?


二人が結城さんを探しているのには理由がある。

普通にいるとレイは体が透けてしまう、だから...


――「憑依?」


「そう。こっちの体を借りるの。その間あっちの私は眠ることになるけど、まあいいでしょ」――


「ユウトじゃーん、結城見なかった?」


「み、みてないよ?」


「そっちの女の子は?」


「お、幼馴染の、ユウコといいます...」


「じゃあぼくらはもういくねふたりでたのしんでね!」


「あっ待てよ」


レイの手を取って、急いで教室を飛び出す。


「はあ...ここまでくればもう大丈夫か」


「そう...だね」


全力で走ったから、二人とも息が荒い。

それが面白くって、二人で笑った。


占いの館やお化け屋敷にも入った。

いろいろなところを回っていたら、すっかり日も暮れてしまった。


「もう会えないのか?」


「そろそろ時間だからね。しょうがないよ。」


なんでそんなにあっさりしてられるんだよ!

...いや、よく見ると震えているじゃないか。

怖いんだ...消えてしまうのが。


「幽霊なのにお化けが怖いのか、とかっ!消えちゃうから占いも当たんないね、とか!誤魔化して茶化してたけど、やっぱり...寂しいよ...」


「私もそう。でも、君は言ってくれたよね?二重人格とかを想像してたって。だから、()()()()()()――結城レイ――の一部分として残り続けてくれたらいいなって」


その一言に、僕は救われた気がした。


「助けてくれてありがとう、ユウトくん。」


だから、さよならは言わずに


「「またね」」


きらきらと、光の残滓が空へ登っていく。

ただ、綺麗だった。




「あれ?私こんなところで何してたんだっけ」


これでいいんだ


「結城さん、さっき友崎さんが一緒に花火見ようって」


どうして僕なのか


「遅いぞユウトー、急がねえと始まっちまう」


何故幽霊になったのか


「ちょっとレイ、一緒に回ろうって約束したじゃん」


その答えは知らなくても


「ごめんごめん、眠っちゃってたみたい。でも ――


花火が、上がった


―― 夢の中で、とても大切なことをした気がするんだ。」


......!


「ちょ、おい、ユウト、何泣いてんだよ」


「いや...何でも、ない。」


くそっ、何で涙が溢れてくるんだ、たった数日間の関係だろう!?

でも、どうしようもない置き土産を貰ったらしい。


「ただ、みんなと花火みて、感極まっただけだよ!」


「でたな、ツンデレが」


「ツンデレじゃないし!」




そのやり取りが余程おかしかったのか


「ユウトくんって、変なの」


そう言って、いたずらっぽく、彼女は笑った。

読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ