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「はいじ~。」
「クララ~。って違うっしょ!!」
「ノリの良い子は好きだよ~。」
「ありがと~。じゃなくて、春西出身の園部で~す。趣味はオシャレで~、特技は親友の弟君弄りで~す。ぷぷッ!!」
「ちょぉ!?」
「「ぶふっ!!」」
思わず声を挙げてしまう僕。
自分で言って自分で笑うな!!
そして幼馴染のお二人さんは噴き出してる。
後、何人かも笑ってる。
「ほっほ~う。中々良い趣味してるね~。因みにここ最近の出来事は?」
タイムリー過ぎる!!奈々、言わないで!!
「ぷっふッ。えっとね~、部屋を家宅捜索ごっこで~「止めてぇ!!」……。」
「おっとぉ。親友のストップが入ったね~。止めてあげようか~。後で聞かせてね~。はい拍手~。」
ぱちぱちと拍手が鳴り響く中、今の僕の心中は羞恥心しかありません。
後で覚えてろ……。
「ハイ次~、ってどうしたんだね。ツボに入った?」
「す……ません……。」
「まぁまぁ。もしかして親友の御一行かね?」
「ええ。まぁ、そんなところです。すいません。春西中学出身の高瀬です。趣味は運動全般です。良く聞かれるのですが、イギリスとのハーフで見た目がこんな感じですが英語は喋れません。よろしくお願いします。」
「お、宜しく~。拍手~。英語喋ろうぜ~。因みに私の専攻が英語なんでよろしく~。はい次~。」
っと、着々と自己紹介を終えていく。
僕の後ろで思い出し笑いを拗らせている親友には、後でお仕置きします。
「っと、最後の渡部くんも終わったし~、時間もまだ余ってるね。気軽に質問してみようか~。誰がいい?何を聞きたい~?」
先生の参画で、何人かは手を挙げる。
東先生はん~と唸りつつ、指名し始める。
「んじゃ、小清水くん。」
「はい、ありきたりっすけど。先生は彼氏いますか!?」
どっと、男子生徒は笑いだす。女子の目線は怖いぞ~。
「私は既婚者だよ~。」
「「えっ!?」」
男子諸君、先生いじりは出来ないね。
って、松田先生が驚くのは何故?
「え!?って何だね?旦那さんはいるよ。ってか松っちゃんは何で驚いてるの?」
「え?ご結婚なされていたのですか……?」
「応よ。今年で3年目だ。アツアツのラブラブだかんね。松っちゃんは?」
「え?あ、その……。」
「はい。この話終わり~。他、聞きたいことある~?」
うん、東先生のフットワークの軽さは良いね。ベテランの先生みたい。
この後からは、松田先生はいじられるんだろうな~。
「次は~、木村ちゃん。」
「は~い。この学校って染髪は有りって聞いたんですけど~、何色まで有りですか~?」
「お、良い質問だね。答えを言うと何色でも構いません。」
「「おぉ~。」」
感嘆の声が生徒一同から上がる。が……。
「ただし、成績によってっという枕詞が付きます。最低でも学年の半分以下は認められません。それどころかペナルティが課せられます。」
「「えぇ!?」」
「宿題・課題がてんこ盛りだから気を付けてね~。私は容赦しないよ~。はい次~。っは、峰田くん。」
「はいっす。男女交際とかはどうなんすか?」
何人かの生徒はガタッと動く。重要なんだろうね……。
後ろの奈々さん。机が僕の椅子に当たったよ?
「う~ん。そうだね~。基本は生徒の自主性を尊重します。只さ~、あんまり公でイチャイチャしないでね~。それが周りに大きな被害をもたらすからさ~。分かる人は分かると思うけど、分からん人は後日にでも私の所に聞きに来なさい。次は~小野田ちゃん行こうか~。」
「はい。私は園部さんに質問がありまーす。」
「おぉ?あれか?あれか!?」
「なになに~?」
すっごい嫌な予感がする……。
「私も弟がいるんですけど~。」
はいキター。止めてね!?止めてよ!?
既に笑い声が聞こえるんだよね……。
後ろだけじゃなくてさ、親友からさ……。幼馴染からさ……。
「効果的な弄り方って何ですか?後、さっきの話の続き聞きたいで~す。」
「よし来た!!言ったれ、園部ちゃん!!」
「へい、親友。口が滑っちゃうぜ!!」
んん!?口調可笑しくないかな!?
って、両肩に手を置かないでよ!?
「ちょっと、奈々!!止めてよ!?」
「まぁまぁ。ここは一つ親友に任せなよ~。」
「そうだぞ親友。笑いの提供は有難いぞ~。」
「先生まで!?ねぇ、出禁は止めるから、ね?」
「ん~。足りないな~。」
「へいへい。焦らさず一気に言っちゃいなよ~。」
「は~い。先ずは効果的な方からね~。」
「ちょっと!!んむぅ!?」
僕の前に座る清水さんに口を塞がれる。
何でぇ!?可笑しいでしょ!?
「まぁまぁ。妹尾さん。私も聞きたいんですよ~。」
「ナイス!!清水ちゃん!!」
これはマズい……。裕也のなけなしの尊厳がゼロになってしまう……。
お願い、真由美!!っは駄目だ。滅茶苦茶笑ってる……。
幸!!幸!!助けてよ~。見えないからどうなってるか分かんない!!
「えっとね~。弱みを握ることが当たり前で~、家宅捜索は最終手段なんだ~。先ず抉っていくのは~好きな相手を見抜いてくの~。」
「それが分からないのよ~。弟は小4だからさ。生意気になってきちゃってね~。」
「弟さんの友達に聞いたりした~?」
「それはしてないわね。やろっと。」
小野田さんの弟君。どんまい。頑張るんだよ。負けないでね……。
「まぁ、親友の弟君はシスコンだからさ~、そこ突いて行くんだよね~。」
「んっふぅ!!」
「真由美んはそこをひたすら抉ってるんだよね~。」
「ほほぉ。どんな具合に?」
東先生がノリノリだ。これはマズそうだ……。
「真由美ん!!言ってあげな!!」
「了解!!ぷふッ。……ごめん。えっとね。先ずはジャブで~。偶に見かける一コマでね、裕……弟君が親友の肩を揉んであげてるんだよね。優しいよね。その時にぼそって一言言ってあげるの。」
「何て何て?」
東先生ノリノリだ!!子供じゃないんだからさぁ!!
あ、裕也の肩揉みは気持ち良いよ。肩がすっごい楽になる。
「谷間を覗き過ぎじゃない?っとか、手を滑らせてみたら?触らないの?っとか。そしたらあらかさまに狼狽するんだよね。顔真っ赤にして。」
親友真由美さん。良い笑顔になってるね。身内ネタだよ?
「今度写真撮ってきまーす。」
止めたげてよぉ……。本当に……。
滅茶苦茶笑われてるよ~……。
「ジャブ2。裕……弟君が洗濯物を取り込んでる時に~親友の下着を持つことが有って~……。」
「んん!!んん!!」
これは流石にマズい!!阻止しないと!!
「あれ?これはマズいかな?奈々パース。」
「おいおい。続き続き~。」
「これは可哀想かな~って思う訳ですよ。」
そこまで言ってたら後は何するかって話ですよね?畳むだけだよね?
……男子諸君は顔を逸らしてるね~。後ろめたい事でもあるのかな~?
「まあ、時間も少ないし。とっておき言っちゃえ!!」
「は~い。弟君の家宅捜索を我々親友一同で執り行いました~。昨日。」
「昨日かい!!」
「そうでーす。因みに弟君は最後辺りは~、殺せ~俺を殺せ~って喚いてました~。」
「何が出て来たのか、先生気になりまーす。」
「えっちぃ本で~す。これだとあんまりインパクト無いけど~。内容なんだよね~。」
「思春期へのインパクトは壮絶だけどね。ふむ、弟君はシスコン。因って、姉萌え本かね?」
「先生おしぃ!!」
「何ぃ!?流れは完璧だったろう!?」
止めてぇ~!!可哀想すぎるよ!!
いや、あれには僕も吃驚したけどさ……。
「清水さんは何だと思う~?」
「へ?何だろ?コスプレ?」
「ぶぶ~残念。小野田さんは何だと思う~?」
「え?え~っと……、…………言えない。」
「どうしたどうした~?弄るためには恥じらいを捨てなければならんぞ~?」
「えぇ!?そうなの?」
「そだよ~。こっちが恥ずかしがったら~反撃を食らうよ~。因みに私は弟君に一回負けた。」
「私は三回くらい。おかげである程度の放送禁止用語を言えるわ。」
「あの……大間さん……それって誇るところ?」
「…………。」
親友自爆してるよ……。何とも言えないね……。
「ぷぷー。真由美ん自爆してる~。」
「あ、分かった!!」
東先生の声を聞き、親友の奈々は東先生の傍に寄っていく。
何やらぼそぼそと喋っているけど……。
これって倫理的にアウトだよね?
「残念!!」
「嘘ぉ!?」
間違えたみたい。何これ?クイズみたいになってる……。
清水さんの手をぺちぺちと叩いて離してもらう。
もうここまできたら僕の口を塞がなくても良いと判断してくれた。
裕也にどう詫びようか考えている時に正解が出た。
回答者は松田先生。んん!?
「松っちゃん先生正解!!」
「やった!!」
「何で喜んでるの!?」
僕の大声は終業のチャイムにかき消される。
どっと疲れる自己紹介だった……。
親友の満面の笑みと、松田先生の紅潮がやけに印象深かった……。