表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変化した自分に出来る事(仮題)  作者: 奈良づくし
5/46

上履きに履き替え校内を歩いていく。

綺麗に磨かれている床。

入学式用に飾り付けられた校内。

僕達1年生のクラスは2階にあるみたいだ。案内板が階段の傍に立てかけられている。


「高校か~。あんまり実感が湧かないな。」


「幸たんは澄ましてるね~。さっすがイケメン。」


「そうね。幸は気取ることが好きだしね。」


「ねぇ、俺って嫌われてる?」


「別に~?」


「嫌ってないわよ?」


「本当に?」


「「ホントよ~。」」


「嘘臭いな……。えぇ?俺何かしたっけ?」


「僕のせいだと思うよ?」


「え?何で?」


心当たりはある。昨日の出来事を、幸だけその場で許したからだろうね。

気付こうよ。幸……。


「さっきの会話で幸だけ許したでしょ?」


「……あぁ。成程、納得した。」


「僕に当たれないからさ、幸に八つ当たりしてるんだよ。」


「そこまで解説しなくていい。余計にやっかみを買うだろ!?」


「そうよ。何で幸だけ……。」


「幸たんだけズルい。」


「えぇ……。」


なんて他愛無い会話をしながら目的地に到着。

教室の引き戸は空いており、中は同級生が会話をしている。

同じ中学校から来た人もいるんだろう。

違う中学校から来て、友達を増やしているんだろう。

コミュニケーションは大事だね。良く思い知らされるよ……。


「おはよう。」


幸が教室内の皆に聞こえる様に、澄んだ声で挨拶をする。

何人かは返してくれているみたい。すごいな対人能力が……。


「おっはろ~。」


「おはよう。」


奈々も真由美も気後れせずに挨拶して教室内に入っていく。

男子は何人か固まってるよ?女子もね。

僕はどうしても気後れしてしまう。仕方の無い事なんだよね……。


「おはよう。」


僕の声は小さかった。第一印象は薄い感じだろうね……。

いやいや。美男美女の後に来る人は絶対印象は薄くなるよ。なるよ。

教室内に入ると机の上に座る人のネームプレートが置いてある。

これは自己紹介がなくても覚えれる。そんな気配りがみえる。凄いね。

っと、僕は後ろから二番目で、僕の後ろは奈々だ。

中学校と一緒だね……。少しだけ笑ってしまう。


「あ、要たん要たん。席近だよ!!セキチカ!!」


「あ、うん。そうだね。造語は止めようね?」


「え?」


「私は前の方ね。分かっていたけど……。」


「俺もだ。って一番前じゃん。」


「「どんまい(だね)。」」


それぞれ席に着こうとしたときに、予鈴のチャイムが鳴り響く。

それぞれ談笑していた同級生も皆、各々の席に戻りだす。

「妹尾要」のネームプレートの席へ座り、鞄を机の横へぶら下げる。

後ろの席にいる奈々から、背中をツンツン突かれる。

振り向くと嬉しそうに笑った表情の奈々がいる。


「どうしたの?」


「ん~。何でも無いよ~。」


「そう?用事があったら教えてね?」


そう言って前を向くと、また背中を突かれる。


「二回目だよ?」


「んふふ~。何でも無いよ~。」


「中学校でも同じことをしてるよね?」


「そうだっけ?」


「うん。よく覚えてるよ。」


「あたしは~、覚えてませ~ん。」


「そっ?ま、今年もよろしくね。」


「うん。よろしく~。」


一年に一回のやり取り。

四年連続でするとは思わなかったけどね。


「おはよう新入生諸君。」


「お早う御座います。」


「「「おはようございまーす。」」」


スーツに身を包んだ女性教師2人が入室してきた。


「うんうん。元気があっていいねぇ。受験勉強でガッチガチになってる3年生よりもずっといいね!!」


笑顔でドス黒い事を言う女性教師。怖いね……。


「東先生!!それは言ってはいけないですよ!?」


「な~に。時期に否が応でも見てしまうさ。さて、新入生諸君。っと。」


東先生が何かを言おうとして止めた時、開始のチャイムが鳴り響く。

時間管理のしっかりできた先生みたいだ。

チャイムが鳴り終わり笑顔の先生が口を開く。


「改めておはよう。そして入学おめでとう。本日よりこの1-A組、担任を預かるひがし みのりだ。気軽にみのりちゃんと呼んでも良いぞ。んでもって、ほい。」


「あ、はい。副担任を預かることになりました松田です。今年から初めてクラスを持ちますので至らないところは多いと思いますが、宜しくお願いいたします。」


「硬いよ!?気張りすぎだよ松っちゃん。もう少し気楽に行こうよ。」


「いえ、そういう訳にもいきません。何事も始めが肝心ですので。むしろ東先生の……。」


「ハイ止め!!では出席番号の1番から簡単に自己紹介していこうか~。出身中学と~趣味と~好きな女優とか言っちゃう?」


「えぇ!?」


「冗談だよ~。はい、ではどうぞ!!」


「え、えっと……。あ、立った方が良いっすか?」


「そうだね。顔を覚えてもらう方が、実りあるでしょ?私だけに。」


「ははっ……。」


「なんだその苦笑い。笑いなさいよ。ほれっ。」


「東先生……。」


乾いた笑いと隠すような笑いが、教室内に入り混じる。

因みに後ろの奈々さんはツボに入ったらしい。声の出ない笑い方になってる。


「えっと、矢井田中学出身の合場です。えっと、趣味は読書で運動は苦手です。よろしくお願いします。」


「はい拍手~。」


ぱちぱちと皆で手を叩き、合場くんの入学を祝福する。


「どんどん行こ~。次!!」


「飯田です。同じく矢井田中学出身です。趣味特技はありませ~ん。以上です。」


「はい拍手~。飯田くん在学中に趣味とか見つけようね~。大人んなってから結構大事だよ~。はい次~。」


と、順番に自己紹介をしていく。


「春西中学出身の大間です。趣味はTVゲームとテニスでテニス部に入部予定です。どうぞよろしくお願いします。」


「はい拍手~。テニス部よろしくね~。松っちゃんはテニス部の顧問だから入部したいなら松っちゃんまでよろしく。次行ってみよ~。」


ノリの軽い先生だね。うん。

と、直ぐに僕の番までやってくる。何を言おうかな……。


「ほい次~。」


「えっと、初めまして。妹尾要です。はい、えっと、よろしくお願いします……。」


「要ちゃ~ん。ご趣味は~?」


「東先生って……フランクですね。えっと、趣味……趣味……、料理……かな。」


「他には~?」


「え?えと、掃除?」


「それだけ~?」


「洗濯?」


「それって趣味?」


「なのかな?あ、後は走る事……かな?」


「ほほう。どれくらい走るの?」


「えっと日によってまちまちだけど、1時間から3時間くらいだね。」


「要ちゃんも存外フランクだよ~。はい拍手~。」


「あ、すみません……。」


教師相手に普段の喋り方になってしまった……。

少し恥ずかしくなってしまって、顔が赤くなるのがわかる……。

反省しよう……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ