表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変化した自分に出来る事(仮題)  作者: 奈良づくし
41/46

39

松田先生視点。

今日のHRも無事に終わり、東先生と共に職員室へと向かう。


「東先生、松田先生、さよなら~。」

「はい、さよなら~。明日からの小テスト、頑張れよ~。」

「さようなら。また明日ね。」


すれ違う生徒たちと挨拶を交わす。

東先生は明るくハキハキと、対称的に私は物静かにしか挨拶できない。

すこしだけ、羨ましく感じる。


「実センセー、松田センセー。また明日~。」

「はいよ~。勉強しなさいよ~。」

「また明日ね。」


まただ。

自分にも、もう少し踏み出すだけ勇気が欲しい……。

去年は大平先生に迷惑を掛けっぱなしだった。

明るく振舞えるようになりたいから……教頭へ頼み込んだのに……。


「松っちゃんやい。なにか悩み事でもあるの?」


生徒でなく、不意に東先生から話しかけられる。


「あ、その……。」

「言ってみなさいな。抱え込むのは悪い癖だよ。」

「……はい。その……。」


なんと言えば良いのだろうかと、少し言葉を選んだ……。


「あら?東先生、松田先生。そこで何をしているのですか?」


背後から誰かに声を掛けられ、振り向く。

そこには魚崎先生と後藤先生が立っていた。

私の隣から「げっ。」と変な声が聞こえたけど、いつものことだ。


「何かお困り事ですか?」

「あ、はい。困り事と言いますか……、ちょっとした……相談事です。」

「そうそう。ただのお悩み相談だからね。こっちで解決するよ。」

「あら、私も何か力になれるかもしれないし。お聞きしますよ?」

「いやいや。詩乃が聞かなくても問題無いわよ。」

「私は松田先生に尋ねているの。みのりの許可を求めてないのだけど?」

「私が相談されたんだから、詩乃には関係無いんだって。」

「関係はあるわよ。同じ教員で、同じ職場で働く仲間。それに、後輩を見てあげるのも、先輩の役目でしょう?」

「担任・副担任の関係である私が聞いてあげるから。詩乃には関係ありませ~ん。」


始まってしまった……。

東先生と魚崎先生の言い争い。

職員室前の廊下でされるのは少しだけ困るのですが……。

生徒たちに見られたらどうしよう……。


「あの……東先生、魚崎先生。職員室で話しませんか?」


後藤先生、ナイスです。

ですが、もう少し大きい声でお願いします。


「言ってるでしょ?関係ないって。」

「それをみのりが決める事ではないでしょ?」

「相談されたのは私なの?詩乃ちゃん、理解できまちゅか?」

「(イラッ)松田先生が深刻そうに話していたからでしょ?みのりと松田先生は性格が違い過ぎるのよ。まともに解決できるとは思えないのよ。」

「はぁ!?性格なんて誰でも違うでしょうが!!」

「あんたが雑過ぎるって言ってるのよ。理解できないの?あ、出来るわけないわよね。だって、みのりですもの。」

「しとるわ!!だからこそ、私の方が適任なのよ。というか、詩乃の方が出来ないでしょうが!!」

「出来るわよ。あんたとは違うのよ。」

「はぁ~!?あんたみたいなヒス女に出来るわけ無いでしょ。」

「なっ!?だ、誰がヒス女よ!!セクハラ上等女のくせに!!」

「だ、誰にもしてないわよ!!いらない噂が立つでしょうが、馬鹿!!」


少ししか時間が経ってないのにヒートアップしている。

いつの間にか後藤先生の姿が見当たらない。

職員室に避難したのだろうか……。

私も避難しよう。

このまま続いたら、巻き込まれてしまう……。


「何を騒いでいるのですか?」

「「……。」」


只の一声で、白熱していた東先生と魚崎先生が静かになる。

二人の指導役、もとい教頭先生が現れた。

東先生と魚崎先生の仲が悪いのは周知の事実で、諫めるのはいつも教頭先生。

そして諫めた後は必ず説教。近くにいた教員も含めて……つまり、今回は私もだ。


「東先生、魚崎先生。新学期が始まって、まだ日も浅い。それなのに、何故言い合いとなってしまったのか説明しなさい。」

「し、詩乃が言いがかりをつけてきたんです。」

「ち、違います。教頭先生。私は、松田先生の相談事に力を貸したかったのです。それを、みのりが妨害してきたんです。」

「それこそ違います。私が松っちゃんから相談されたのを、横から割って入ってきたんです。」

「深刻そうな表情をしていたんですよ?尋ねない事の方が無理ですよ。」

「だから、私が聞こうとしてたんでしょうが!!」

みのりに繊細な話は無理難題でしょうが!!」

「できらぁ!!」

「出来ないわよ!!」


教頭先生の介入で落ち着いたと思ったら……。

教頭先生の様子を窺うと、頭を押さえている。


「喧嘩するほど仲が良い。そういう諺を生徒には教えたくないものだ……。」


教頭先生……その発言はせめて、聞こえないように言ってください。


「まず二人とも、落ち着きなさい。魚崎先生、貴女の言い分は理解できます。同僚を案じる心遣いは評価に値します。」

「はい。当然の事です。」

「ですが、今回の件では些か横槍を入れる行いとなります。それは、東先生でなく、松田先生の迷惑になることを視野に入れなさい。」

「は、はい……。申し訳ありません。」


東先生が絡まなかったら素直に謝れるのが、魚崎先生で……。


「ざまぁ。」

「東先生。貴女も言動に注意しなさい。いらぬ諍いを生んでいるのはその言動だと、教えたのはつい最近の出来事だと記憶していますが?」

「…………。」

「理解できていないのであるなら、もう一度事細かに説明しましょうか?それとも、理解できるように提出物として課した方が良いですか?」

「だ、大丈夫です。覚えています、はい。」

「であれば結構。今後とも、良き同僚として仲良くしなさい。出来なくても、少しは努力と誠意を、私に見せてください。良いですね?」

「「ええっ?こいつ(これ)と?」」

「……良いですね?」

「「……はい。」」


優しい人ほど、笑顔は恐れを含むものだと思います。

目で威圧し、言葉で釘さし、笑顔で納得させる。

説く側として、私には出来ない芸当だと理解できます。


「さて。松田先生は東先生を頼って相談してくれたのでしょう。東先生は真摯な対応でお願いします。」

「は、はい。」

「松田先生。」

「はい。」

「東先生で解決、あるいは納得できないのであるならば、魚崎先生を頼って下さい、宜しいですか?」

「はい。魚崎先生、その時はご指導のほどよろしくお願いします。」

「え、ええ。分かりました。どうか悩まずに、私を頼って下さいね。」

「では、これでこの話は終わりです。貴女たちは教職者である事を十分に理解してください。先程の言動が生徒に教えられるものであるのかを、深く考え、反省しなさい。良いですね?」

「「はい。」」


教頭先生は踵を返し、職員室へ入っていく。

大人であり、教師という職に就く人が説教されている光景は、やっぱり慣れないですね。

いや、慣れる以前に見る方が可笑しいとは思いますが……。


「くっそ……。詩乃のせいじゃない。」

みのりのせいでしょ。」

「あんたが口を挟まなかったら、教頭のお小言も無かったでしょうが。」

「あんたじゃ、話にもならないからでしょうが。」


また、言い争いが始まろうとしていた。

早く職員室に先に避難しよう。

そう思って、職員室の方に目を向けると、教頭先生が頭だけを出してこちらを見ていた。

その目にはさっきよりも細められていて……。


後の、教頭先生の説教で……私は相談できなかった。

反省文を、この年になって書くなんて……思いもしなかった。

何故、私まで巻き込まれたのだろうか……。


後藤先生が帰り際に、同情の言葉と共に缶コーヒーをそっと手渡してくれた。

同情よりも、何故あの時に私を連れて逃げてくれなかったのだろうか……。


職員室で再び言い争う二人を尻目に、反省文を手書きで書く。

最後の文章には、こう書こう。

「誰かに頼る前に、自分で行動してみます。」っと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ