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「洗濯までして貰っちゃって、ありがとうございます。」
「良いのよ。要ちゃんにはいつもお世話になってるんだから。」
奈々のお義母さんで、奈子ちゃんのお母さん。良子さんにお礼を言う。
ずぶ濡れになった僕の服を洗ってくれたみたい。
いつでも取りに来てね、って言ってくれたのでお言葉に甘えることにした。
お風呂から上がって奈々の着替えを借りた。
ブラは丁度良かったんだ……ただ……。
「パンツが少し緩い。」、それを言っちゃって奈々からお仕置きされた。
そうして紐のパンツをお借りした。奈々、こんなの持ってたんだ……。
「要たん、もう少しお肉付けよ~?」
暗い笑顔で僕の後ろから抱き着いてくる奈々。
さっきから執拗に服の上から、わき腹を触られたり軽く抓まれたりもする。
「これでも食べてる方だよ。」
「嘘、良くない。奈々、知ってる。」
「お母さん。要お姉ちゃん、お姉ちゃんよりも腰細いの。でも、おっぱいも大きいの。」
「あはは。奈子ちゃん、それ以上は言っちゃ駄目だよ?」
「なんで?」
少し前かがみになって奈子ちゃんの頭を撫でる。
ドライヤーでしっかり乾かしたからサラサラになっている。
「ほら、奈々を見てあげて?」
「?」
奈子ちゃんが僕と奈々を見上げる。
さっきから抱きしめる力が弱まっている。
がっちりからゆったりを超えてゆるゆるだ。
相当ショックだったんだろうか?
「お姉ちゃん。ぐったりしてる。」
「ふひひ、あた、あたし……。」
「奈々、奈々も良いプロポーションしてるんだから。」
「うるちゃい、こうしてやるぅ。」
今度は執拗にお腹の肉を抓もうとしてくる。
しかし、少し間があいて急にしおらしくなる。
「つ、つまめない……。」
「えい。」
今度は奈子ちゃんも僕のお腹を抓もうとしてくる。
姉妹揃って……。
「要お姉ちゃん、抓めないよ?お姉ちゃんは?」
そうして可愛い死神は動き出す、奈々の絶叫を添えて。
「すごい。お姉ちゃんのはすっごい抓める。」
「やめてぇ!!」
お姉ちゃん大絶叫。奈子ちゃんの無邪気な笑顔は、今の奈々には酷だね。
だけど、奈子ちゃんのおかげで奈々が僕から離れてくれた。
「酷いよ~、奈子ちゃん。」
「でも、感触良かったよ?」
「駄目なの~。私は乙女なんだから~。」
「駄目なの?」
「うっ……その表情は……。」
「流石に、奈子ちゃんには勝てないね。」
「くそぅ。奈子ちゃん最強か……。」
「最強って……何言ってるの?」
腕でお腹をガードするように守る奈々。
物欲しそうな表情で奈々に近寄る奈子ちゃん。
僕はその様子を少し離れて眺めている。
時間を確認、まだ15時半くらいだし、少し遅れても良いかな?
「お父さんに送っておこう。少し遅れる。っと。」
「え?要たんどうしたの?」
「ん?さっきの仕返しを奈々にしようかなって思ってね。奈子ちゃんと一緒にね。」
「仕返し!!要お姉ちゃん、何するの?」
「そうだね~。僕が奈々を抑えるから、奈子ちゃんが奈々をくすぐってみる?」
「!?」
「うん。私もお姉ちゃんに仕返しだ~。」
「ま、待つのだ!!」
僕は奈子ちゃんと歩調を合わせて奈々に近づく。
奈々はその場で座り込んだまま動かない。
ただ、表情だけが笑ってない。少し怯えた表情だ。
「ま、待って。話し合いましょ?」
「ん?では、お願いしようかな。奈子ちゃん、ちょっと奈々の話を聞こうか。」
「分かった。お姉ちゃん、お話ってなに?」
束の間の休戦を受け入れて貰えて安堵したのか、少しだけ表情が明るくなる。
でも、腕はお腹をガードしたままだ。
「ま、まずね。仕返しって良くないと思うの。争いは憎しみしか生まないって言うでしょ?」
「でも、最初にし始めたのって奈々だよね?自業自得とも言うんだよ?」
「あ、それ知ってる。ちょっと前に習ったよ。」
「奈子ちゃん、意味は知ってるかな?」
「えっとね、悪いことしたら自分に返ってくるよ、って先生が言ってた。」
「偉いね~。」
頭を撫でて褒めてあげると嬉しそうにしている。
「えっと、えっと。ほら、人の振り見て我が振り直せ、って言うでしょ?」
「?」
「良い所は見習って、悪い所はしちゃ駄目だよって諺なんだ。」
「へ~。でも、それってお姉ちゃんが言っちゃったら駄目なんじゃないの?」
「うぐっ!?」
「お~、奈子ちゃんは偉いね。その通りだよ。」
「んふふ。だって、お姉ちゃんが悪い事?したんだもん。」
「……奈子ちゃんが賢くってお姉ちゃん泣いちゃいそうだよ。」
「奈々、他に何か言っておきたい事はある?」
一歩だけ足を前に踏み出してみる。
奈子ちゃんも、僕の真似をして一歩足を踏み出す。
その動作だけで奈々にとっては恐怖だったらしい、少し後ずさっている。
「え、ええとぉ。ほら、私は反面教師なの。嫌な事して、奈子ちゃんには真似して欲しくないか~って思っちゃったりしてね?」
「う~ん。奈子ちゃん、奈々はそんな事言ったのかな?」
「ん~ん。言ってないよ。」
「奈々、言わないと意味が無いよ?これは悪いことだから真似しちゃ駄目ってさ。」
「うぉぉ。奈子ちゃんが……味方してくれない。」
「奈々ちゃんは毎日奈子を可愛がってくれてるから。お義母さんも嬉しいわ。」
お義母さん参戦。奈々は少し退路を塞がれる。
「ほうほう。良子さん、例えばどんな可愛がり方をするの?」
「そうね~。組み付いてくすぐったり。寝ている奈子を撫でまわして起こしたり。抱き着いてチュウしたりしているわね。」
「……。」
「奈子ちゃんは嫌な事されてない?」
「う~ん。くすぐられすぎるのはちょっとだけ嫌かな?」
「他には?」
「チュウも……ちょっと恥ずかしいから。」
「そんな!?」
うんうん。奈々は少し嫌がられることをしているみたい。
愛情のやり過ぎは禁物なんだね。
聞いちゃった以上、少し奈子ちゃんの味方をしようかな。
奈々に向かって歩き出す。奈々は奈子ちゃんの発言に気を取られていた。
後ろから羽交い絞めにする感じで奈々に組み付く。
「え!?ちょ、要たん!?」
「奈子ちゃん。奈々に仕返ししたい事が有ったら、今、しちゃおうか。」
「え?いいの?」
「良くないよ~。奈子ちゃん、奈子ちゃん。奈子ちゃんは優しいからさ、しないよね?ね?」
「う~ん。でも、せっかくだし……。」
奈子ちゃんが奈々の前でちょこんと座る。
手はくすぐりを示唆するように、ワキワキと動いている。
「あらあら、楽しそうね。」
「お母さんもする?お姉ちゃんに仕返しするの。」
「仕返し?それなら、私はされていないから出来ないわ。」
「お義母さん、お助けをぉ!!」
「え~。どうしましょうか?」
良子さんはこの状況が凄く楽しいみたい。
頬に手を当てて困ったように眺めている。だけど嬉しそう。
「か、要たん。話し合おうよ!?」
「ん~。今の僕は奈子ちゃんの味方だからね。奈子ちゃんを説得してみて?」
「奈子ちゃん、止めて!?」
奈々は必死そうに奈子ちゃんに懇願する。
いやいやと首を左右に振っている。髪の毛が当たってくすぐったいんだけど。
「今日だけしま~す。お姉ちゃん覚悟。」
奈子ちゃんのくすぐりとお腹を抓む攻撃が始まる。
奈子ちゃんは嬉しそうに手を動かし、奈々は笑いが止まらない感じで喜んでいる。
園部家の姉妹は、仲良く楽しそうでなによりだ。
この光景を眺めている奈々のお父さんも、少しほっこりしていた。
良子さんに止められるまで、奈子ちゃんの攻撃が続いた。
事後、僕はゾンビのような奈々に10分程しがみつかれてしまう。
「お疲れ様。」って背中を撫でるとビクンと跳ねた。ここも弱いのか……。




