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変化した自分に出来る事(仮題)  作者: 奈良づくし
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「おぉ、凄いね裕也。手先器用だね。」


「まぁ…………。ふぅ、兄貴、ボンドもうちょい出してくんね?」


「はいはい。これくらい?」


「おう、サンキュー。」


裕也は今、爪楊枝を使って家を作ってる。

モデルは我が家。上手に特徴をとらえてる。特にベランダ。

何でも、夏休みの自由研究に提出予定らしい。用意早すぎだよ……。4月だよ?

それで、僕は裕也の手伝いをしている。

均等の長さで爪楊枝を切ったり、とか。


裕也は元々不器用な方だった。

けれど、色々頑張って器用になっていた。いや、器用すぎるんだけど……。


「くっそ、ここやりづれぇ……。」


「持とうか?」


「頼む。」


今はベランダの物干し竿の土台を作ってる。細かすぎないかな?

Y字の部分が出来なくて手伝ってる。2本作れば良いから後1本だ。

慎重に裕也がくっつけようとしていると扉が大きく開かれる。

そのちょっとした風圧で、今作っている物干し竿が大きく変形してしまった。

ボンドが乾いてなかったので、こう……グニャって。


「うぉわぁ!?」


「あぁ!?」


「きゃっ!?って、何してるの?」


「おい!!糞女!!扉くれぇそっと開けれねぇのか!?」


「べ、別にいいでしょ!?いつもの事なんだし!!」


「良かねぇえんだよ!!いつもいつも!!勝手に開けやがって!!」


「い、良いじゃない!!わざわざ、来てあげてるのよ!?」


「誰が来いっつった!?むしろ来んな!!」


「な、なによ!!それに!!今日は要に用があったのよ!!部屋にいないし……。」


「だからって、俺の部屋を勝手にバカバカ開けて良い理由にならねぇんだよ!!馬鹿か!?」


「ば……馬鹿ですって!?あんたより何倍も頭良いわよ!!」


「そう言う意味じゃねぇんだよ!!常識だ常識!!頭のねじでも飛んでんのか!?」


「そんなわけないでしょ!!それは裕也の方でしょ!?」


本日3回目の口喧嘩。喧嘩するほど仲が良いって言うけど、し過ぎじゃない?

ま、これ以上は近所迷惑になるし。お父さんにも悪いし。

僕に用事とは……まぁ、想像は付くんだけどね。

さて、どう止めようかな?

今回は真由美が悪いし、真由美から退散させようかな。


立ち上がって真由美の傍に寄る。

というか、真由美を連れて僕の部屋に行く。

真由美も裕也も黙っちゃったけど、好都合。

ささ、とりあえずお説教からかな?


「さて、真由美。先ず正座から。」


「え?」


「正座。今すぐ。」


「はい。」


素直でよろしい。

僕も真由美に向かって正座で答える。

こういうのは目を見てしっかりと言ってあげよう。


「まず、真由美。悪いのは誰か、分かってるよね?」


「……はい。」


「何故、素直に謝れなかったの?」


「その……。」


「答えて。」


「あの、ごめんなさい。」


「謝って欲しいんじゃないんだ。謝れなかった理由を聞いてるの。なんでかな?」


「えと、意固地になったから……です。」


「なんで?」


「えっと。その……」


「早く答えようか。」


「はい。えっと、今日の出来事で……その…………」


「なに?はっきり言って欲しいな。」


「裕也が……くれなかったし……。」


「それは裕也のせいじゃないよね?違う?」


「…………」


「黙っているのは小さな子供でもできるよ?」


「えっと。」


「真由美は子供?小学生くらい?」


「ち、違う……ます。」


「じゃあ、答えれるよね?」


「わ、わた、し、……こじで、すな……いえな……。」


「泣かないで欲しいな。泣くような事、言ってもらってないよ?」


「す、すいませ……。」


「謝ってって言ったっけ?」


「ち、が……。」


「じゃあ、答えて?何故、裕也に素直に謝れなかった?意固地になったから?それはパフェをくれなかったのが原因?なんでくれなかったのかな?考えて。10秒あげる。」


「え?え?」


「10、9、8、……」


「そ、あ、え」


「5、4、……」


「ご、ごべ……」


「1、0。答えようか。」


「う、うぇ…………」


「泣かないでって、言ったよね?」


「ごべ、ごべん、ゆる、ひっ……」


「答えようか?出来るよね?子供じゃないんだから。裕也よりお姉さんでしょ?」


「うぅぅ…………。」


「もうやめてあげよう。要。許してあげよう、な?」


ゆっくりと、戸を開けて幸が入ってきた。

多分、さっきの裕也と真由美の言い争いを聞いて来たんだろうね。

優しい幸なら、そう言うしかないよね。けれどね。


「幸、今は優しさは必要無いよ。出て行ってくれる?」


「要、それ以上は……。」


「幸?僕は幸には叱りたくないかな?」


「あ、うん。ごめん。でも、お手柔らかに、ね。」


幸はゆっくりと戸を閉めて退散してくれる。

残ったのは完全に泣いてしまった真由美と、叱っている僕。

別に、声を大きくしたりとかしていない、

ゆっくり、静かに喋ってるだけなんだけどね。泣くほど怖いかな?


「さて、幸は優しいからね。ダメだと自覚したら素直に謝れるんだ。真由美はどう?出来る?」


「で、でき、ない、で、す……。」


「そうだね。出来ていないよね。今日だけでも、証明になってるよね?」


「はい…………、そ、です。」


「じゃあ、さっきの答え。聞かせてくれないかな?」


「さ、っき?」


「そう。なんで?」


「ど、え?」


「教えてあげるのは簡単。でもね、気付くことが重要。出来るようになることが大事。」


「う、あ。」


「後は野となれ山となれって訳にはいかないよ。正直は最善の策って言うでしょ?」


「えぅ、う。」


「なぜかな?答えれるよね?」


「ず、ずなおに、ほじい、で、いえなが、の。」


「うん、そうだね。よく言えたね。偉いよ。」


軽く頭を撫でてあげると、真由美が胸に飛び込んできて大泣きしちゃった。

ちょっと言い過ぎたかな……。でも、ねぇ……。悪いとこは悪いって、言わないとね。

とりあえず泣き止んでもらわないとね。よしよ~し。

頭撫でて背中も擦ってあげる。はいはい、良い子良い子。


「ぐず、ぐず……。」


泣き止んだは、泣き止んだんだけど……。

ああ、もう。涙のあとが……。


「ほら、もう泣かないの。可愛い顔が台無しになっちゃう。」


「……ぐず、……うん。」


「ね。分かったじゃないか。今日の用事だって、本当は気付いていたんでしょ?」


「…………うん。」


「ただ、言い表せなかったのか、言えなかったのかは、僕には分からない。」


「……うん。」


「今日はこんな感じになっちゃったけど、分かったでしょ?」


「うん。」


「じゃ、出来るよね?」


無言で首を振らないでよ……。そこは出来るって言わなきゃ……。


「ね?出来そう?」


「むり……。」


「どうして?」


「言いたいけど、勇気、出ない……。」


「う~ん。そこは頑張って欲しいな~。」


「むりぃ、たすけて……。」


「うん。僕で良ければ手伝うからさ。だから、頑張ろ?ね?」


「うん。かなめぇ、おねがいぃ。」


「うん。分かった。真由美も、勇気を出せるように。いっぱい悩んで、いっぱい失敗して、それでだめって思う所を正していってさ。歩こっか。大丈夫。真由美なら出来る。僕が保証するよ。」


「ありがとぉ……。」


真由美の泣き虫さんは中々直らない。

もうしばらくだけなら、このままにしてあげよう。

でも、服は着替えないとね……。多分これ、鼻水まで付いちゃってるよ……。

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